フアン氏、トランプ氏に呼ばれ訪中団に合流
月曜のホワイトハウス公表リストに、NVIDIAのジェンスン・フアン氏の名前はなかった。報道が広がる中、トランプ大統領が直接電話を入れる。フアン氏はアラスカまで飛び、給油中の大統領専用機に乗り込んだ。
月曜のホワイトハウス公表リストに、NVIDIAのジェンスン・フアン氏の名前はなかった。報道が広がる中、トランプ大統領が直接電話を入れる。フアン氏はアラスカまで飛び、給油中の大統領専用機に乗り込んだ。
アラスカで滑り込みの搭乗
火曜夜のアンカレッジ国際空港。給油のために立ち寄ったエアフォースワン(AF1)に、リュックを片肩にかけたジェンスン・フアン氏が乗り込む様子を、随行記者団のカメラがとらえた。NVIDIAのCEOは、ワシントンを発った時点ではこの機体にいない。
ホワイトハウスを発った段階で同乗していたのは、イーロン・マスク氏(Tesla・SpaceX)、ティム・クック氏(Apple)など、月曜に公表されたCEOリストの面々だった。フアン氏はそこに含まれていない。北京に向かう途上の給油地でようやく、世界最大のAIチップメーカーのCEOが大統領機の乗客に加わった形になる。
「ジェンスン氏は、トランプ大統領の招待を受け、米国と政権の目標を支援するため首脳会談に出席する」
NVIDIAの広報担当者は短い声明を残したのみで、なぜアラスカで合流する形になったかについては触れていない。
月曜のリストには競合だけが招かれていた
今回の訪中団に同行するCEOは合計17人。前回トランプ氏が訪中した2017年の27人と比べれば、規模は縮小した。
月曜のリストには、NVIDIAの 競合各社 が含まれていた。MicronとQualcomm、それにNVIDIAと提携関係にあるCoherentとIlluminaが招かれている。AIチップ最大手のCEOだけがリストから外されている、奇妙な構成だった。
フアン氏自身は先週、ジム・クレイマー氏のインタビューに対し、訪中団入りについて含みを持たせる回答を残していた。
「大統領が何を発表するかは、大統領に任せるべきだ。招待されれば、それは光栄なことだし、米国を代表する大きな名誉となる」
月曜の段階で、その「招待」は届いていなかった。
「Awkward conversations」を避けた当初の判断
なぜNVIDIAだけがリストから外れたのか。
Semaforの取材によれば、フアン氏自身がトランプ氏と「世界最大のチップメーカーCEOの北京での存在が、訪中そのものに望まない注目を集める可能性」について事前に話し合っていた。同行を見送れば、対中チップ販売を巡る「awkward conversations」( 気まずい会話 )を避けられる、というのが一方の判断だった。フアン氏自身もその論理を共有していた格好になる。
共和党内の警戒感は深い。下院外交委員会の ブライアン・マスト 委員長は今年2月、中国向け先端チップの販売を議会が30日間レビューできる法案を進めた。NVIDIAのロビー活動への直接の反応として動いたものだ。
「これは冗談みたいなものだ。ジェンスン氏は中国共産党を信用しろと議会に求めている。これを見ている人なら、誰でも笑う」
マスト氏がCNBCに語った言葉は、党内タカ派の温度をそのまま映している。NVIDIAを連れていけば、訪中の他の議題が「Jensen問題」に飲み込まれかねない。月曜の判断には、それなりの計算があった。
報道が動かした電話
ところが、火曜の朝、状況が反転する。フアン氏不在を伝える報道が広がると、トランプ氏が本人に直接電話をかけた。「今朝、ジェンスン氏が訪中団に加わらないという報道を見た後、大統領は電話で同行してほしいと伝えた。ジェンスン氏はアラスカまで飛んでAF1に合流した」。関係者が明かした経緯だ。
動いたのは政策ではなかった。報道だった。「招かれなかった」と書かれたことが、招待そのものを呼び寄せる格好になる。数か月分の米中チップ輸出を巡る駆け引きが、一本の電話と一つのアラスカ給油停止に集約された瞬間だった。
「FAKE NEWS」というTruth Social投稿
火曜の夜11時09分(米東部時間)、トランプ氏はTruth Socialに長文を投稿する。
CNBCは、NVIDIAの偉大なるジェンスン・フアン氏が、中国に向かう世界最高のビジネスマン・ビジネスウーマンたちの素晴らしい集まりに招待されていなかったと、誤って報じた。実際にはジェンスン氏は今、エアフォースワンに搭乗している。彼に降りるよう頼まない限り——その可能性は極めて低いが——CNBCの報道は誤りであり、政治の世界の言葉で言えばFAKE NEWSだ
月曜にホワイトハウスが公表したCEOリストにフアン氏の名前がなかった事実は、この投稿では触れられていない。
トランプ氏は続けて、習近平氏に対する「 最初の依頼 」を宣言した。「私はシー主席に、中国を『開放』するよう頼むつもりだ。この素晴らしい人々が魔法を振るい、中華人民共和国をさらに高い水準へ引き上げる手助けができるように」。NVIDIAをはじめとする米テック企業の中国市場参入が、首脳会談の第一議題になると公言した形だ。
500億ドルとゼロ、二つの数字
フアン氏は中国のAIチップ市場規模を 500億ドル と評価してきた。NVIDIAにとって、捨てるには大きすぎる数字だ。
しかし現実の中国市場でのNVIDIAのシェアは、4月の自身の発言によれば ほぼゼロ に落ちている。「中国向けデータセンター計算市場から事実上閉め出された」「競合各社がより大きな開発者・顧客エコシステムを世界規模で構築する助けになった」——直近の10-K提出書類でNVIDIA自身が語った認識だ。
中国はNVIDIAに依存しないAIモデルの構築を急ぎ、DeepSeekがその象徴になった。NVIDIAは2月、米政府が承認した中国向けチップのバージョンが、まだ実際の出荷に至っていないと明かしている。承認と輸出のあいだには、まだ越えるべき壁がある。
500億ドルと評する市場で、実際のシェアはゼロ。フアン氏がトランプ氏に同行して中東・英国を回り、北京の席にもこだわってきた背景には、この落差がある。
招待のかたちが映すもの
リストから外れ、報道で不在が広がり、電話一本で呼び戻され、給油先で機体に乗り込む。そして大統領自身が「招かれなかった」報道を「FAKE NEWS」と否定する。一連の流れは、NVIDIAの中国ビジネスが米国政治のなかでどれほど扱いにくい存在になっているかを、図らずも露わにした。
「最初の依頼」が口にされる首脳会談まで、あと数時間。求めていた席に、フアン氏は思わぬ形で着くことになった。
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