Firefox 150配信、分割ビューとPDF編集が本格化

Mozillaが Firefox 150 の配信を始めた。リンクの右クリックから分割ビューを呼び出せるようになり、内蔵PDFビューアーでページの並び替えや削除ができる。地味だが効く改良が並んだリリースだ。

Firefox 150配信、分割ビューとPDF編集が本格化

MozillaFirefox 150 の配信を始めた。リンクの右クリックから分割ビューを呼び出せるようになり、内蔵PDFビューアーでページの並び替えや削除ができる。地味だが効く改良が並んだリリースだ。


分割ビューは「右クリックで呼べる」ステージに入った

Firefox 149で実装された分割ビューは、使い始めると便利だが呼び出しが面倒だった。タブを右クリックしてから有効化するか、Shift+クリックで2つ選んでからメニューを開く必要があった。リンクを見て「これは横並びで見たい」と思った瞬間に動けない。

150では、ページ内のリンクを右クリックして Open Link in Split View を選ぶだけで、現在のタブの隣に新しいペインが開く。マップを見ながらレストラン一覧を眺める、仕様書を開きながらコードを書く、といった動きが 1ステップで済む

加えて、分割ビュー作成時には開いているタブを検索できるようになった。タブコンテキストメニューには、左右のペインを入れ替える Reverse Tabs も追加されている。149の分割ビューが「試験的に動く機能」だったとすれば、150は日常的に使える段階にようやく到達したと言える。

分割ビュー機能の対応状況(Firefox 149→150)
操作・機能 Firefox 149 Firefox 150
タブを右クリックして有効化
2タブ選択+右クリック
リンク右クリックから開く
開いているタブの検索
左右ペインの入れ替え
ペイン幅のドラッグ調整
● は対応、─ は非対応。150で追加された3機能(リンク右クリック・タブ検索・ペイン入れ替え)が日常運用の摩擦を下げている。出典:Mozilla Support「Split View in Firefox」、Firefox 150.0beta Release Notes
Split Viewはもともと、Edge、Vivaldi、Zenといった競合ブラウザーが先に実装していた機能だ。Mozillaは後発で導入し、150でようやく磨きの段階に入った。
Firefox 150 の主要変更点(カテゴリ別)
カテゴリ 変更点
タブ操作 リンク右クリックから Open Link in Split View で分割ビュー呼び出し/タブ複数選択からの Share X links でタイトル+URL一括共有/ Reverse Tabs で左右ペイン入れ替え
PDF編集 内蔵PDFエディターでページの 並び替え・コピー・貼り付け・削除・書き出し が可能に。Manageメニュー経由で複数ページの一括操作をサポート
セキュリティ ローカルネットワークアクセス制限が 全ユーザーへ段階展開。Webサイトがルーター・プリンター・ローカルサービスへ接続する際、許可プロンプトを表示
プロファイル 新プロファイル管理システムが Windows 10含む全ユーザー に提供。バックアップ機能も対象OS拡大
Linux GTK絵文字ピッカー対応( Ctrl+. でシステム標準ショートカット利用可)。Red Hat / Fedora / openSUSE 向けに公式 .rpm パッケージを提供開始
Windows Microsoft Store経由インストール版でも Firefox Web Apps 利用可能に。設定からタブのドラッグ&ドロップによるグループ作成をオフに切り替え可能
出典:Firefox 150.0beta Release Notes(Mozilla)/Mozilla Support「Control personal device and local network permissions in Firefox」

タブ共有と内蔵PDFエディターの拡張

複数タブをまとめて共有する経路も整理された。タブを複数選択して右クリック、Share X links を選ぶと、ページタイトルとURLをセットで他アプリに貼り付けられる。URLだけコピーしてタイトルを別途入力する手間がなくなる。

PDF周りの変更はさらに実用的だ。Firefox内蔵のPDFエディターでページの並び替え、コピー、貼り付け、削除、書き出しができるようになった。Manageメニューから複数ページを選び、Cut→Paste で任意の位置に挿入する流れだ。Export selectedを使えば、選んだページだけで 新しいPDFを作れる 。これまでAdobe AcrobatやオンラインのPDFツールに頼っていた作業の大半が、ブラウザー内で完結する。

PDFをブラウザーで開いてそのまま編集する、という動線は、Chromeや Edgeにもない領域だ。Mozillaは数年前から内蔵PDFビューアーを強化してきたが、150でようやく「編集機能」と呼べる水準に達した。

ローカルネットワークアクセス制限が全ユーザーに

セキュリティ面で最大の変更は、ローカルネットワークアクセス制限の展開範囲拡大だ。これまではトラッキング防止を「 厳格 」に設定したユーザーだけが対象だったが、150からは全ユーザーに段階的に展開される。

具体的には、Webサイトがローカルネットワーク上のデバイス(ルーター、プリンター、スマート家電など)や、端末上で動作するアプリ・サービスに接続しようとすると、Firefoxが許可を求めるプロンプトを表示する。悪意あるサイトがローカルネットワークを走査して脆弱な機器を探す、といった攻撃経路を塞ぐ狙いだ。

この挙動は一部の自宅サーバーやNASの管理画面、社内ツールにも影響する可能性がある。影響が出た場合は設定のプライバシーとセキュリティ、許可設定から個別サイトにアクセス権を付与すればいい。


Linux向けの地味な改善とプロファイル管理の拡張

Linuxユーザーには、 GTK絵文字ピッカー への対応が追加された。Ctrl+.(Ctrl+ピリオド)というシステム標準のショートカットで絵文字を挿入できる。これまではFirefoxだけ独自の挙動だった部分が、デスクトップ環境と揃った。また、Red HatFedora、openSUSEなどRPM系ディストリビューション向けに、Mozilla公式の.rpmパッケージが提供開始された。

Windows 10を含む全ユーザーに、新しいプロファイル管理システムが提供される。プロファイルをファイルにバックアップする機能も、Windows 10と11の両方で使えるようになった。Windows 10は2025年10月14日にMicrosoftの標準サポートが終了したが、Mozillaはその後もFirefoxのWindows 10対応を「当面の間」継続する方針を表明している。取り残された10ユーザーにとって、この拡張は地味だが意味が大きい。

その他、Microsoft Store経由でFirefoxをインストールした場合にもFirefox Web Appsが使えるようになり、設定からタブのドラッグ&ドロップによるグループ作成をオフにできるようになった。タブをうっかり別の位置にドロップしてグループができてしまう、という事故を防げる。

何を狙っているのか

分割ビューの磨き込み、PDFエディター、ローカルネットワーク制限。どれも派手ではない。ChromeGeminiを、EdgeCopilotを前面に押し出す中、Firefoxが150でやったのは「ブラウザーの基本動作を使いやすくする」ことだった。AIウィンドウ機能はNightlyで実験中だが、安定版の目玉ではない。

この方針は、Mozillaが2025年12月にCEOを交代し収益構造の見直しを進める中で、ある種の 賭け でもある。派手な機能で話題を取りに行くのではなく、毎日使う人が「そう、これが欲しかった」と感じる改良を積み重ねる。Firefoxの全プラットフォーム合算シェアが数%まで落ち込んだ状況では、新規獲得よりも既存ユーザーの離脱を防ぐほうが合理的だ。分割ビューで右クリック1発、PDFはブラウザー内で完結、といった体験は、乗り換える理由にならなくても、離れない理由にはなる。

Firefox 150.0のビルドはMozillaの配信サーバーに既に用意されており、既存ユーザーには順次自動更新が届く。公式リリースノートは記事執筆時点で未公開のため、詳細情報は追って反映される見込みだ。

手触りで語るブラウザーが、この先の市場でどこまで居場所を守れるか。答えは積み重ねの中にある。


参照元

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