Windows 11の「内蔵」速度テスト、実態はBingだった

KB5083769の目玉機能として紹介される「速度テスト」がWindows 11 25H2/24H2の全ユーザーに展開されている。右クリックで使える手軽さが話題だが、中身はBingを経由してOoklaのSpeedtestを開くだけの仕組みだ。「内蔵」と呼ぶには距離がある。

Windows 11の「内蔵」速度テスト、実態はBingだった

KB5083769の目玉機能として紹介される「速度テスト」がWindows 11 25H2/24H2の全ユーザーに展開されている。右クリックで使える手軽さが話題だが、中身はBingを経由してOoklaのSpeedtestを開くだけの仕組みだ。「内蔵」と呼ぶには距離がある。


タスクバーに現れた「Perform speed test」

2026年4月14日にリリースされたWindows 11 25H2/24H2向けの累積更新プログラムKB5083769(ビルド26200.8246および26100.8246)で、タスクバーネットワークアイコンから呼び出せる速度テスト機能が正式に全ユーザーへ展開され始めた。右クリックメニュー、またはWi-Fi・セルラーのクイック設定から「Perform speed test」(速度テストを実行)を選ぶと、即座に回線速度を計測できる、というのが説明の要点だ。

機能そのものの道筋は長い。 2025年9月にWindows Insider で最初に姿を見せ、2026年2月の任意更新KB5077241で一部ユーザーに降りてきた。3月のKB5079473で段階的に拡大し、4月のKB5083769で対象がさらに広がった。Ookla公式も今月、Microsoftとのパートナーシップ拡大を発表し、対象となる全Windowsデバイスに展開中だとアナウンスしている。

タスクバーから1クリックで速度計測できるという触れ込みは、ネットワーク調整を頻繁に行うユーザーにとって 歓迎すべき変更 に見える。ただ、実際に押してみると、期待との落差に戸惑うことになる。

右クリックメニューに新項目が増える、という程度の小さな変更に見えるが、Insiderでの初登場から半年以上かけて段階的に広げた機能でもある。Microsoftがタスクバーという最も目に入る場所に何を置くかは、OSの性格を少しずつ変えていく。

押してみるとBingが開く

「Perform speed test」をクリックすると、既定のブラウザが起動し、Bingの検索結果ページに遷移する。そこに埋め込まれているのが、OoklaのSpeedtestウィジェットだ。メーターが中央にあり、Ping・ダウンロード・アップロードの3指標が並ぶ、見慣れた画面が表示される。

つまりこれは、OSに組み込まれた計測エンジンではない。タスクバー上に置かれた Bingの特定ページへのショートカット である。Tom's HardwareやPC Guideなど複数メディアが実装を検証した結果としても、ネイティブ機能ではないことが指摘されている。Microsoftが自前のAzureベース速度テストをOoklaに置き換えたのは2023年のBing統合時で、今回のWindowsへの展開は、そのBing版を呼び出すランチャーを増やしたにすぎない。

確認できる事実:クリックの行き先はbing.com上のSpeedtestウィジェット。計測は各ユーザーのブラウザで実行され、Ooklaのインフラに接続する。Windows側が持っているのは「ボタン」だけだ。

既定ブラウザを尊重する点は救いと言える。ChromeでもFirefoxでも、ユーザーが設定した既定のブラウザで開く。Edgeを強制的に起動する挙動ではない。


「内蔵」と呼ぶには物足りない

ここで思い出しておきたい事実がある。Windows 8時代のMicrosoftには、XAMLで書かれたネイティブの「Network Speed Test」アプリが存在した。接続の詳細情報を表示し、過去の計測結果を履歴として保持する機能を備えていた。時間軸での回線品質の変化を追いたいユーザーにとって、それは本当に役立つツールだった。

今回の実装は、その系譜を継いでいない。ブラウザを経由するため、JavaScriptの実行環境やブラウザ拡張セキュリティフィルタが結果に影響する。企業ネットワークでプロキシが挟まっていれば、測定値はそのぶん歪む。 履歴も残らない 。OSレベルで見れば、ユーザーが手動で「speed test」とググる手間を1〜2ステップ省いただけ、と見ることもできる。

便利かどうかで言えば、便利な面はある。ゲーム中にパケットロスを感じた瞬間、Alt+Tabでブラウザに切り替えて検索する代わりに、ネットワークアイコンから直接飛べる。計測結果そのものはOoklaのインフラに基づくため精度は担保される。ただし、それは「ショートカット」の価値であって、OSに計測機能が統合された価値ではない。

Ookla、Accenture傘下になったあとのMicrosoft連携

背景として無視できない動きがもう一つある。Ooklaの所有権の変化だ。Ziff Davis傘下だったOoklaは、2026年3月にAccentureへ約12億ドル(約1900億円)で売却されることが正式発表された。SpeedtestだけでなくDowndetector、Ekahau、RootMetricsを含む接続事業部門ごとコンサルティング大手へ移った格好になる。

今回のMicrosoftとOoklaの「拡大パートナーシップ」発表は、このAccenture傘下移行後に出たものだ。Ooklaの発表文では、Speedtestを「BingとWindowsを横断する統合ネットワーク性能テストプラットフォーム」と位置付けている。一般ユーザーから見れば単なる計測ツールだが、Accentureにとっては 月間2億5000万件以上 の測定データが絡むデータ基盤であり、企業向けAI・5G最適化ビジネスの素材でもある。

速度テストのボタン1つが、個人のネットワーク調整の便利機能と、企業向けネットワーク分析事業の入口を同時に兼ねている。消費者から見える部分と、その裏でやり取りされる事業価値のスケールには、ずいぶん開きがある。

この構造自体に問題があるわけではない。ただ、ユーザーが気軽にクリックする先が、単なる老舗速度計測サイトではなく、コンサルティング大手が抱える大規模ネットワーク・インテリジェンス基盤の入口になっていることは、頭の片隅に置いておく価値がある。


モックアップ画像がmacOSに見えた件

余談として、今回のパートナーシップ発表では小さな混乱もあった。Ooklaがプレスリリースで公開したイメージ画像が、どう見てもWindowsではなくmacOS風の意匠だった、という指摘がWindows Dev MVPアラムニのラファエル・リベラ(Rafael Rivera)からX上に投稿された。「Did Ookla just leak Windows vNext UI?」(OoklaがWindows次期UIをリークしたのか?)というジョーク含みの一言で、コミュニティ内で反響を呼んだ。

もちろんこれはWindowsの新UIではなく、単にOokla側のプレス素材作成時のミスとみられる。ただ、Windows向けの目玉機能を紹介する場面で、パートナー企業が macOSらしき画像 を使ってしまうあたりに、「本当にWindowsの深い部分に入り込んでいるのか?」という疑問を残す。ブラウザで動く速度テストである以上、OSを問わず同じ体験になるのは事実ではある。

小さな便利さに、気づきにくい距離がある

結論はシンプルだ。KB5083769で展開されている速度テストは、便利ではある。だが、ネイティブの計測アプリではなく、BingとOoklaのショートカットだ。この実装の軽さは、Microsoftにとって開発・運用の負担が小さい。同時に、Windowsに第三者のWebサービスを素早く差し込む手法のテンプレートとしても働く。

OSに「新機能」が追加されたと聞いたとき、その機能が本当にOSの内側で動いているのか、それとも単に表示場所が増えただけなのか。今回のタスクバー速度テストは、その違いを意識する練習問題のような存在だ。


参照元

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