GeForce NOW、Linuxネイティブアプリが正式版に。ベータから7か月

NVIDIAのクラウドゲーミングが、Linuxの「正式な住人」になった。

GeForce NOW、Linuxネイティブアプリが正式版に。ベータから7か月

NVIDIAのクラウドゲーミングが、Linuxの「正式な住人」になった。


ベータを卒業したLinuxアプリ

NVIDIAのクラウドゲーミングサービスGeForce NOWが、Linuxネイティブアプリの正式版を公開した。今年1月のCES 2026で発表され、現地時間1月29日にベータ版として配布が始まってから約7か月。コミュニティからのフィードバックを反映し、パフォーマンスと安定性を磨いてきた成果だという。

対応OSはUbuntu 24.04以降。配布形式はFlatpakで、今回のリリースに合わせてNVIDIA公式のFlatpakリポジトリも新設された。ベータ期間中はNVIDIAのサイトから.binインストーラーをダウンロードする手順が主流だったが、リポジトリの追加により、今後のアップデートがコマンド一発で降ってくるようになる。

Flatpakはディストリビューションを問わず動作するパッケージ形式。公式サポートはUbuntuに限定されているが、実際にはArch LinuxやFedoraなど他のディストロでも動作が報告されている。

ここが地味だが大きい。Linuxユーザーにとって「公式にサポートされている」と「動くけど自己責任」の間には深い溝がある。NVIDIAがその溝を、少なくともUbuntuについては正式に埋めた。

「ブラウザで十分」の時代は終わった

GeForce NOWは以前からブラウザ経由でLinuxからアクセスできた。Steam Deckのような携帯機向けにもアプリが存在していた。では、デスクトップLinux向けのネイティブアプリに何の意味があるのか。

答えは解像度とフレームレートにある。ブラウザ版ではブラウザ自体の制約に縛られ、画質やレイテンシに限界があった。ネイティブアプリは最大5K/120fps、あるいは1080p/360fpsのストリーミングに対応する。NVIDIAのReflex技術による低遅延も利用でき、ブラウザ版とは体験の質が根本的に異なる。

クラウドでのレンダリングはGeForce RTX 5080相当のGPUが担当する。ローカルのマシンに求められるのは、H.264またはH.265のVulkan Videoデコード能力のみ。

5年前の中古ノートPCでもUbuntuを入れてGeForce NOWを起動すれば、最新のRTXグラフィックスでゲームがプレイできる。ハードウェアの呪縛から解放される、というのがNVIDIAの提案だ。

クラウドにもアップデートが入った

Linuxアプリの正式化と同時に、GeForce NOWのクラウドインフラにもアップデートが入っている。

DLSSのフレームジェネレーションがクラウド環境向けに最適化された。レイテンシが削減され、1440pや4Kで60fpsまたは120fpsのストリーミング時に、マウスの動きやカメラ操作がより即時的に反映されるようになるという。クラウドゲーミングで最も気になる「操作の遅れ」に直接手を入れたかたちだ。

加えて、Performanceメンバー(月額1,790円)向けには、CPU負荷の高いゲームでのフレームレート向上を目的としたサーバーのソフトウェア最適化も実施された。ユーザーが何かする必要はなく、追加料金もかからない。

これらの改善はLinux固有のものじゃなく、全プラットフォームに適用される。だが、Linuxアプリの正式化と同じタイミングで投入されたことで、Linux版の初期体験が不利にならないよう配慮されている。


Linuxゲーミングの追い風

GeForce NOW Linuxアプリの正式化は、Linuxゲーミングの成長と無関係じゃない。

Steamのハードウェアサーベイによると、2026年7月時点でLinuxのシェアは4.01%に達している。3月には過去最高の5.33%を記録した。数年前は1〜2%台をさまよっていたことを思えば、地殻変動と呼べる水準だ。Steam Deckの普及、Windows 10のサポート終了、Proton互換レイヤーの進化が重なり、Linuxは「好きだから使う」選択肢から、実用的なゲーミングプラットフォームへと変わりつつある。

NVIDIAはこの流れを無視できなかった。GeForce NOWのライブラリには4,500本以上のタイトルが登録されており、ネイティブアプリの正式化は、拡大するLinuxゲーマーとの接点を確保する意味がある。

対応タイトル数は4,500本以上だが、無料プランで即時プレイ可能なのは約2,000本。残りはPerformanceまたはUltimateプランが必要なInstall-to-Playタイトルになる。

今週新たに追加された9タイトルには、Hell Let Loose: VietnamやMonster Hunter Wilds Prologue Demoなどが含まれる。

GeForce NOW プラン比較
FreePerformanceUltimate
月額料金無料1,790円3,580円
GPU性能基本RTX相当RTX 5080相当
解像度上限1080p1440p5K
最大fps6060120
月間プレイ時間制限あり100時間100時間
セッション制限1時間/回なしなし
広告ありなしなし
追加時間料金15時間
約480円
15時間
約800円
※月間プレイ時間は有料プラン共通で100時間。超過分は15時間単位で追加購入が必要。Freeプランの対応タイトルは約2,000本(有料プランは4,500本以上)

手放しでは喜べない理由

良いニュースであることは間違いない。だが、いくつかの留保はつけておきたい。

まず、クラウドゲーミングの根本的な制約としてネットワーク依存がある。NVIDIAは1080p/60fpsで25Mbps以上、4K/120fpsで45Mbps以上の回線速度を推奨している。日本の都市部であればクリアできる数字だが、回線品質が不安定な環境ではネイティブアプリの高画質が裏目に出る。

次に、公式サポートがUbuntuに限定されている点。Flatpakの特性上、他のディストロでも動くことが多いが、NVIDIAが責任を持つ範囲はUbuntu 24.04以降に限られる。LinuxはディストロのバリエーションがOSとしてのアイデンティティでもあり、公式サポートの狭さは今後の課題になる。

そして、2026年1月から導入された月間100時間のプレイ時間制限。有料プランでも適用され、超過分は追加料金が発生する。Performanceプランでは15時間あたり2.99ドル(約480円)の追加コストがかかる。ゲーミングPC不要の手軽さと引き換えに、プレイ時間を意識しながら遊ぶ生活が求められる。


Linuxは「ゲームが遊べない」場所じゃなくなった

CES 2026で発表されてから7か月。NVIDIAはLinuxをクラウドゲーミングの正式な対応プラットフォームに据えた。

Protonで動くSteamタイトルは10万本以上に達し、クラウドゲーミングが4,500本以上のライブラリを持ち込み、Steam Deckが入り口を広げている。Linuxゲーミングを取り巻く景色は、5年前とまったく違う。

GeForce NOWが解決するのは「GPUがないから遊べない」という問題だ。逆に言えば、ネットワークの品質と月額課金のランニングコストは、ユーザーが自分で引き受けるしかない。

それでも、押し入れで眠っている古いノートPCにUbuntuを入れて、最新のRTXグラフィックスでゲームを起動できる。その事実が、何かの境界線を越えている。

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