Microsoft、Copilotを1つのアプリに統合。機能廃止は8月18日から
3つに分かれていたCopilotが、ひとつの入口に集約される。ただし、その扉をくぐる前に、いくつかの部屋は取り壊される。8月18日、無料ユーザーが使っていた機能が消える。
3つに分かれていたCopilotが、ひとつの入口に集約される。ただし、その扉をくぐる前に、いくつかの部屋は取り壊される。8月18日、無料ユーザーが使っていた機能が消える。
統合が始まった
Microsoftが、コンシューマー向けCopilotとMicrosoft 365 Copilotを1つのアプリに統合する作業を開始している。Microsoftがサポートページで詳細を公開した。
これまでCopilotは3つの別々の製品として存在していた。一般消費者向けのMicrosoft Copilot、企業・教育機関向けのMicrosoft 365 Copilot、そして開発者向けのGitHub Copilot。それぞれ別のアプリ、別のアイコン、別のWebアドレスを持ち、Windowsのタスクバーに2つのCopilotアイコンが並ぶ状態さえ起きていた。
統合後のアプリは「Microsoft Copilot」の名称に一本化され、アイコンも刷新される。個人アカウント、職場アカウント、学校アカウントのいずれでもサインインでき、アプリ内のアカウント切り替え機能で行き来する仕組みだ。
仕事用と個人用のデータは設計上分離されたまま維持される。組織のセキュリティ、プライバシー、コンプライアンス管理は引き続き適用される。
Web版とモバイル版から段階的に展開が始まっており、デスクトップ版(WindowsとmacOS)は9月中旬に予定されている。Web版の既存ユーザーは自動的にリダイレクトされるが、モバイル版はアプリの更新が必要になる。
8月18日に消えるもの
統合の前に、コンシューマー向けCopilotの複数の機能が8月18日をもって廃止される。
グループチャット
グループチャットのスレッド、メッセージ、生成画像はすべて移行されない。保存したい内容がある場合、それまでに手動でコピーまたはダウンロードする必要がある。猶予は4日間だ。
Deep Research
コンシューマー向けのDeep Researchも8月18日で終了する。競合のChatGPTやGeminiは同等機能を一般ユーザーにも提供し続けているが、Microsoftは有料のMicrosoft 365 Premiumサブスクライバー向けに「Researcher」エージェントという代替手段を用意している。既存のDeep Researchレポートは削除されず、チャット履歴からアクセスしてWordに保存できる。
ポッドキャスト
AIが2人の話者を演じて音声コンテンツを生成するポッドキャスト機能も廃止される。こちらはDeep Researchより扱いが厳しい。過去に生成したポッドキャストは8月18日以降完全にアクセス不能になり、共有リンクも無効化される。エクスポート機能は提供されておらず、ポッドキャストライブラリから個別にダウンロードするしか手段がない。
つまり、無料ユーザーにとっては「使えていた機能が減り、有料版でしか代替が効かない」状態になる。統合とは聞こえがいいが、実質的にはコンシューマー体験の縮小だ。
「スーパーアプリ」という構想
このアプリ統合は、より大きな計画の第一段階にすぎない。
サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOは現地時間7月29日の2026年度第4四半期決算説明会で、Copilotの将来像を語っている。
Copilotはチャットからコワークへ、コワークからオートパイロットへと急速に進化している。今四半期中に、コードを含むこれらのCopilot体験をひとつのスーパーアプリにまとめる。
チャット、コーディング支援、Cowork(マルチステップの調査・作業ツール)、そしてAutopilots(自律型エージェント)を1つのアプリに収める構想だ。OpenAIが7月にChatGPT、Work、Codexを1つのデスクトップアプリに統合したのと同じ方向を追っている。
この統合を率いるのは、3月にCopilot担当EVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)に就任したジェイコブ・アンドレオウ(Jacob Andreou)氏。Snapで8年間にわたりDAUを8000万から3億6300万に成長させた実績を持ち、ナデラ氏に直接レポートする立場にある。Microsoftが組織変更を発表した3月の時点で、コンシューマーとコマーシャルのCopilotチームは1つに統合されている。
数字が語る矛盾
ナデラ氏は同じ決算説明会で、Microsoft 365 Copilotの有料シート数が3000万を超えたと発表した。前四半期の2000万から大幅に伸びた数字だ。ユーザー満足度スコアは3四半期で倍増し、1ユーザーあたりの会話数は前年比でほぼ倍になったという。
だが、この数字には別の見方がある。Microsoft 365の商用顧客は約4億5000万シート。3000万シートは全体の約6.7%にすぎない。5月時点の報道では、有料Copilotの浸透率は4.5%以下とされており、そのうち週次でアクティブに使っているのは20〜30%にとどまるとの調査もあった。
シート数が伸びたのは事実だが、残り93%以上の顧客はまだ財布を開いていない。Microsoftがスーパーアプリへ急ぐのは、製品の乱立が採用を妨げてきたと社内でも認識されているからだ。
Microsoftの内部調査でも、複数の別々のCopilot製品を行き来することへの顧客の不満と、断片的な体験から明確な価値を見出せないという声が確認されている。
8月中旬 モバイル・Web版の展開開始 コンシューマー向けCopilotの統合がモバイルとWebから段階的に始まる 8月18日 3機能の廃止 Deep Research・ポッドキャスト・グループチャットが廃止 8月下旬 WebのURL転送開始 既存のcopilot.microsoft.comが新URLへ転送される 9月中旬 デスクトップ版の展開開始 WindowsとmacOSの統合Copilotアプリが配信開始 |
無料で使い続けられるのか
統合後のCopilotアプリでも、チャット、画像生成、ファイルアップロードといった基本機能は無料で利用できる。ただし「利用可能な容量と制限に従う」という条件がつく。
制限に達した場合、有料プランへのアップグレードか、時間をおいてからの再利用を選ぶことになる。高い利用上限、エージェント機能、複雑なマルチステップタスクへの対応にはMicrosoft 365サブスクリプションが必要だ。
これは、OpenAIがChatGPTで採用しているモデルとほぼ同じ構造になる。無料で入口を広く取り、使い込むほど有料へ誘導する。Copilotがこれまで苦戦してきた「使ってもらえない」問題を、アプリの入口を1つに絞ることで解消しようとしている。
整理と引き算
Microsoftは今回の統合で、明確に引き算をしている。
ポッドキャスト、グループチャット、コンシューマー向けDeep Research、実験的機能を提供していたCopilot Labs、そしてボイスモードに登場していたアニメーションキャラクター「Mico」。いずれも「定着しなかった」と判断された機能が退場する。
ChatGPT、Gemini、Claudeとの競争で後れを取っていることが、この整理を加速させている。GitHub Copilotも5月時点で有料サブスクライバー470万人を抱えるが、CursorやClaude Codeの追い上げを受けている。
3つのCopilotを1つにまとめ、開発者も企業ユーザーもコンシューマーも同じ入口から入る。機能が減った代わりに迷わなくなる、というのがMicrosoftの賭けだ。その賭けが正しいかどうかは、残り93%の顧客が答えを出す。
関連記事
- Microsoft、売上900億ドルで株価が一日16%超反転
- Microsoft、AI投資1900億ドルの代償。決算前夜の三正面
- AI定額制の崩壊が加速、各社が「使った分だけ」に舵を切る
- 400の地方紙がOpenAIとMicrosoftを提訴。記事を無断でAI学習に利用
- AI投資の重さを隠した。MicrosoftがAzure失速で株主訴訟
- SpaceX前にMicrosoftもCursor買収を検討
- Edgeが他社AIを遮断しCopilotへ誘導する新機能
- Microsoft、3つ目のCopilot系エージェント開発
- Microsoft、AIが見つけたバグの修正に追われる。7月は過去最多の600件超
- ChatGPT、著者のスタイル模倣を拒否し始める。存命作家に限定