ロンドン警視庁、ストーカーに被害者の新住所を渡す。英当局が是正命令
ストーカーから逃れるために住所と電話番号を変えた女性の情報が、当のストーカーに警察経由で渡されていた。
ストーカーから逃れるために住所と電話番号を変えた女性の情報が、当のストーカーに警察経由で渡されていた。
墨消しされなかった書類
ロンドン警視庁(MPS)が2024年1月、ある男に対するストーキング保護命令(SPO)の暫定申請を承認した。男は前年にハラスメントと悪意通信の容疑で逮捕され、被害者や友人・家族への接触を禁じる保釈条件が課されていた。
被害者はこの男から逃れるために電話番号と住所を変えていた。
SPOの手続きでは、被告に書類の写しを渡す際、すべての個人情報を墨消しするよう警告されていた。だが実際に被告の手に渡った書類には、未墨消しの証人陳述書が含まれている。被害者の新しい住所と電話番号、友人・家族の連絡先が、そのまま載っていた。
数日後、男は保釈条件に違反して英国から逃亡する。被害者は警察に、男が新しい電話番号に連絡してきたと通報した。男自身が「MPSから受け取った書類に連絡先が載っていた」と被害者に告げたという。
正式なSPOは2024年5月に発行され、男は同年7月に英国に再入国した際に逮捕された。ストーキング罪で起訴され、有罪答弁の後に収監されている。
英国の情報コミッショナー事務局(ICO)の調査で、書類を送達した警察官がSPOの専門研修を受けていなかったことが判明した。書類の準備と確認の手順も不十分だったとICOは認定している。
ハニートラップ捜査のメール誤送信
2件目は、英国議会に関連する人物を標的にした「ハニートラップ事案」の捜査中に起きた。
この事案では2023年10月から2024年4月にかけて、WhatsAppで「チャーリー」「アビ」を名乗る人物が議員やスタッフ、記者に性的なメッセージを送りつけ、裸の写真を要求していた。
元労働党地方議員のオリバー・ステッドマン(Oliver Steadman)氏が恐喝罪と通信犯罪5件で起訴された。ステッドマン氏は2026年4月に無罪を答弁しており、公判は2027年10月に予定されている。
この捜査の過程で、MPSの警察官が標的にされた18名全員にメールを一斉送信した。保釈応答の期日変更を通知するメールで、宛先欄に全員のアドレスを入れたため、受信者同士のメールアドレスと名前が全員に表示された。メールの文脈から、受信者全員がハニートラップ捜査の関係者だと推測できる状態だった。
ICOの調査によれば、メールを送った警察官はデータ保護研修を4年以上受けていなかった。上司も約4年間未受講だった。
孤立した失敗ではない
ICOは現地時間8月5日、MPSに対して是正命令と警告を発出した。根拠は2018年データ保護法第40条違反、すなわち個人情報を保護するための適切な技術的・組織的措置の欠如だ。
2023年 ストーカーがハラスメント容疑で逮捕 保釈条件で被害者への接触を禁止 2024年1月 SPO暫定申請を承認。被告に未墨消しの書類 住所と電話番号が証人陳述書ごと露出 2024年 被告が新番号に連絡。英国から逃亡 被告自身が書類に載っていたと告げる 2024年5月 正式SPO発行 2024年7月 被告が再入国時に逮捕、後に収監 ストーキング罪で起訴、有罪答弁 2024年 ハニートラップ捜査で18名のメールが露出 宛先欄に全員のアドレス。研修4年以上未受講 2026年8月 ICOが是正命令と警告を公表 研修受講率100%達成を12か月以内に義務づけ |
是正命令は、7月27日付で署名されていた。
ICOはこれら2件を「孤立した過ちではない」と明確に位置づけた。データ保護研修の受講率が組織全体で低く、研修の履行を確認する管理体制も整っていない。この2つが、2件の侵害を生んだ構造的な弱点だとICOは結論づけた。
人々は警察に対し、最も機密性の高い個人情報を委ねている。多くの場合、脆弱な状態にあるときや危険にさらされているときに。その情報が安全に取り扱われることを期待する権利がある。
ICO民事・サイバー調査グループマネージャーのジョー・ストーンズ(Jo Stones)氏はそう述べた。
MPSに課された要件は明確だ。12か月以内にデータ保護研修の受講率100%を達成し、期限を過ぎた職員には個別に対応する。
3か月ごとに複数の宛先に対するメール送信方法を見直し、より安全な代替手段を検討する。進捗はICOに報告しなければならない。
MPSは事後にSPO申請の確認手順を強化し、外部の複数宛先にメールを送る際に警告を表示するツールを導入したと説明している。ICOはこれらの措置を認めつつも、研修受講率が依然として低く、改善策の一部がまだ完全に実装・検証されていないと判断した。
ICOがMPSに是正命令を出すのは今回が初めてではない。2026年3月には情報公開法に関する別件で同じ措置を受けている。その前の2024年5月にも同法で是正を求められたが、MPSはそちらには期限前に対応した。
逃げた男は捕まり、収監された。しかし被害者の新しい住所と電話番号は、もう「新しい」情報ではなくなった。警察が守るべき人の安全を、警察自身が壊した。制度は事後に修正できる。失われた安全は、修正できない。