Mesa「Amber2」議論、R600は切り離されるか

ValveのMike Blumenkrantz(マイク・ブルメンクランツ)が、Mesaの古いGPUドライバを別ブランチへ切り離す「Amber2」を提案した。対象はR300、R600、Lima、NV30など。だが、議論は割れている。

Mesa「Amber2」議論、R600は切り離されるか

ValveのMike Blumenkrantz(マイク・ブルメンクランツ)が、Mesaの古いGPUドライバを別ブランチへ切り離す「Amber2」を提案した。対象はR300、R600、Lima、NV30など。だが、議論は割れている。


「もうメインに留めておく理由がない」とBlumenkrantz

Blumenkrantzが2026年5月1日、Mesaの作業アイテム#15365として公開した提案は、彼自身が認めるとおり、目新しい話ではない。2024年6月にmesa-devメーリングリストで同種の議論を投げかけており、今回はそれをGitLabのIssueに持ち込んだ形だ。

提案の骨子は単純だ。virgl、svga、i915g、lima、r300、r600、nv30、nv50を「mesa」本体から切り離し、新しい「plateau」(仮称)リポジトリへ移す。「mesa」側からはこれらのドライバを削除し、「plateau」側からはそれ以外のドライバを削除する。両者は別パッケージとして共存可能にする。「mesa」側からはこれらのドライバを削除し、「plateau」側からはそれ以外のドライバを削除する。両者は別パッケージとして共存可能にする。

Anyone who wants to continue development on those drivers then has a clear path to do so without worrying about regressions from the faster-moving drivers, and anyone working on vulkan/newer drivers can do so with the confidence that they won't be hit by some future regression ticket from a driver they didn't directly touch.(あのドライバの開発を続けたい人は、足の速いドライバから来るリグレッションを気にせず作業できる。Vulkanや新しいドライバを触る側も、自分が直接触れていないドライバからリグレッション報告が飛んでくる心配がなくなる)

Blumenkrantzが挙げる理由は、CIだ。メンテナンスが薄いドライバが、最近やたらとCIで落ちる。それが、本来関係ないはずの開発者の足を止めている。Mesaは10年前と違い、モダンなVulkanドライバが中心の世界になった。古いOpenGL系ドライバの面倒を、全員で見続ける構造はもう持たない、という主張だ。

「Amberは失敗だった」とErik Faye-Lund

ところが、Collaboraのエリック・フェイ=ルンド(Erik Faye-Lund、@kusma)が真正面から反論した。Mesa 21.3で実施された前回のAmber分岐そのものを、彼は「失敗」と切り捨てる。

理由は3点。第一に、AmberはLTSとしてまるで機能しなかった。最後のコミットは2023年1月。21.3がamber-onlyになった時点から数えて、サポート期間は実質10ヶ月程度しかない。第二に、amber-only化以降にカットされたリリースは2本だけ、最後は2022年10月。それ以降tarballもgitタグも公開されていない。第三に、ユーザーへ届いていない。Debianのmesa-amberパッケージは事実上停滞しており、ユーザーの手元にAmberが届いている形跡がほとんどない。

So, I don't think we should do that again. If drivers are truly unused, we should just delete them.(だから、同じことを繰り返すべきではない。本当に誰も使っていないドライバなら、ただ消せばいい)

Faye-Lundの結論は、「Amber的なものを作るくらいなら、不要なドライバはそのまま削除すべき」というものだ。これは現役のMesa開発者から出ている発言として、かなり重い。

「失敗とは言えない」とMatt Turner

ところが、Mesaオーナーの一人であるIntelのMatt Turner(@mattst88)が、Faye-Lundの「失敗」評価そのものに異議を唱えた。Turnerの言い分はこうだ。

最初のAmberが対象とした古いハードウェアの利用者は、彼が把握する範囲では「ほとんどいなかった」。Gentooxf86-video-neomagicを消したときと、mesa-amberが壊れたときに来たユーザーからの苦情の数が、ほぼ同程度だった。Turnerの記憶が正しければ、mesa-amberは1年以上壊れていたが、xf86-video-neomagicを使っている人がそれより前に気づいただけだ、と。

つまりTurnerが言いたいのは、Amberは届かなかったのではなく、最初から利用者が少なかった、ということだ。だから現状でも、ドライバを単純に削除して構わないし、続けたい人はその時点の安定ブランチに修正を投げ込めばいい。Faye-Lundの「失敗だった」という前提には立たない、という反論である。


R600とNouveauが論点を複雑にする

純粋な「もう誰も使っていない」議論に収まらないのが、R600とNouveau周りだ。

R600はAMDRadeon HD 2000〜HD 6000シリーズをカバーする。VLIW世代のRadeonであり、ノートPC内蔵GPUとして今も動いている個体は決して少なくない。Antoine Viallon(@aviallon)はGitLab Issue上で、「古いR600と一部の古いIntelについてなら、自分のところでCIサポートを提供できる」と申し出ている。Mupuf(Martin Roukala)も「いいね」と即応した。R600は黙って消える話ではないことが、ここで露呈する。

NouveauのKarol Herbst(@karolherbst)は、別の角度から積極支持を打ち出している。

moving r600 also allows for deeper cleanups for OpenCL support, because it's the only gen that actually requires the design around set_global_binding and if I won't have to care about GPUs without an MMU, I can do a lot better and clean up/delete a bunch of code nobody really likes.(r600を切り離せば、OpenCLサポート周りで深いクリーンアップができる。set_global_bindingまわりの設計を実際に必要としているのはr600だけだし、MMUを持たないGPUの面倒を見なくて済むなら、誰も気に入っていないコードをかなりきれいにできる)

つまりHerbstの動機は、コードの掃除そのものだ。彼はこのIssueの最初のコメントで、提案リストにないnvc0Fermi世代以降のGeForce向けNouveauドライバ)も含めるべきだと主張している。「NVK+Zinkで古いgenを動かす作業はこれから本格化する。nvc0が対応するGPUの大半は、そちらでカバーできる」。

ただしFaith Ekstrand(@gfxstrand、Mesaオーナー)はこれに対して釘を刺している。「もしやるなら、Turing以前のNVK+Zinkに対するきちんとした計画が要る。Zinkのバグはまだ野生で戦っている人がいる」。

「Amber2」と前回の決定的な違い

ここまで読むと、議論は2024年6月のリプレイのように見える。だが、決定的に違う点がある。

前回のAmber(Mesa 21.3)対象は、Gallium3Dへ移行できなかった「クラシック」DRIドライバだった。i965やi915、R200などだ。これらはMesaのコード設計から見て"異物"であり、切り離すことでGallium3D共通インフラに集中できるという、明確な技術的利点があった。

今回のAmber2が対象とするのは、Gallium3D内部の古いドライバだ。クラシックドライバではない。技術的な「異物」感は薄い。だからこそ、Faye-Lundの「Amberほどの大規模な掃除は今回できない、やる意味があるのか」という疑問が出てくる。Blumenkrantzが理由として挙げるのは、抽象的な「コードの掃除」ではなく、具体的なCIの痛みだ。

ドライバを「メイン」に置くということは、CIに乗せ続けるということだ。リファクタの度に、誰かが直すか、誰かが踏まれる。Blumenkrantzが訴えているのは、その「誰か」が今は実質的に決まっていない、という運用の歪みである。Amber2はそれを、リポジトリの境界線で解決しようとする提案だ。

議論はまだ始まったばかり

GitLabのIssueには、提案から1日でMike Blumenkrantz本人を含む40人以上の参加者が集まった。👍が5、👎が5、絵文字反応も拮抗している。リーナス・トーバルズが好みそうな、率直な議論がそのまま走っている。

R600のCIを引き受ける開発者がいる。r600が消えることでOpenCL側のコードがきれいになると喜ぶ開発者がいる。Amberを「失敗」と断じる開発者がいる。同じ事実を「失敗ではなかった」と読む開発者がいる。

決定はまだ出ていない。出るとしても、すぐではないだろう。だが、Mesaが「全部のドライバを面倒見る」モデルから、「続けたい人が続ける場所を分ける」モデルへ移ろうとしているのは確かだ。古いGPUを動かしている読者にとって、これは将来のディストリビューションがどんなパッケージを配るかに、直接効いてくる。

「Amber2」になるのか、それとも別の名前になるのか。あるいは、結局そのままドライバが削除されるのか。選択肢のどれもが、現状維持ではない。


参照元

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