RTX 5070 12GBモジュール、価格1.7倍の衝撃
VRAMが4GB増えただけで価格は約7万9700円上がった。Frameworkの新GPUモジュールが、メモリ供給制約の重みを消費者に直撃させている。
VRAMが4GB増えただけで価格は約7万9700円上がった。Frameworkの新GPUモジュールが、メモリ供給制約の重みを消費者に直撃させている。
4GBのVRAMに、500ドル
Frameworkが2026年4月28日(米国時間)、Framework Laptop 16向けの新グラフィックスモジュールを発表した。NVIDIA GeForce RTX 5070 Laptop GPUの12GB版を搭載した3代目のモジュールで、6月出荷予定だ。
問題は価格だ。従来の8GB版が699ドル(約11万1500円)だったのに対し、12GB版は1199ドル(約19万1100円)。
VRAMが50%増えたのに、価格は72%増。差額500ドル、日本円換算で約7万9700円。VRAM 4GBあたり約2万円という計算になる。
GPUコアは同じBlackwellアーキテクチャの「GB206」、CUDAコア4608基、メモリバス128bit、帯域幅384GB/s。AI TOPS、クロック、TGPもすべて据え置き。違いはGDDR7メモリの容量だけ、それ以外は完全に同じだ。
スペック据え置きで、VRAMだけが4GB増えて、価格は1.7倍。この差額をどう受け止めるかは、率直に言えばユーザー次第だ。
メモリ価格高騰のしわ寄せ
Framework公式アカウントは今回の価格について、X上で次のように説明している(運営は創業者のニラフ・パテル本人だ)。
残念ながら、これは我々が決めたことではない。シリコンサプライヤーから提示されている価格そのままだ。8GB構成のコストも、現在の在庫が尽きれば値上がりする可能性が高い。
つまり、Frameworkが利益を上乗せして高くしているのではなく、上流のメモリサプライヤー(Samsung、Micron、SK hynixなど)からの調達価格が、そのまま跳ね上がっているということだ。
NVIDIAは今回の12GB版投入の理由を、こう公式説明している。
GeForce RTXに対する需要は依然として強く、メモリ供給は逼迫している。メモリの供給量を最大化するため、24Gb GDDR7メモリを採用したGeForce RTX 5070 Laptop GPU 12GB構成を投入する。
24Gb(3GB)モジュールは、現在主流の16Gb(2GB)モジュールとは別の生産ラインから供給される。NVIDIAとしては、AI需要で奪い合いになっている16Gb GDDR7の在庫を、ゲーミング用途以外に温存したい。だから、別チャネルの3GBモジュールを使った別構成を新設した。苦肉の策の50%増量だ。
8GBと12GB、何が違うか
3GB GDDR7モジュールを4枚使うことで、128bitバスのまま12GBを実現した。バス幅も帯域幅も8GB版と同じ。スペック表を並べると、違いがVRAMだけだとわかる。
| 項目 | RTX 5070 Laptop 8GB | RTX 5070 Laptop 12GB |
|---|---|---|
| 発売年 | 2025年 | 2026年 |
| AI TOPS | 最大798 | 最大798 |
| ベースクロック | 2.0GHz | 2.0GHz |
| ブーストクロック | 最大2.4GHz | 最大2.4GHz |
| TGP | 最大100W | 最大100W |
| CUDAコア | 4608 | 4608 |
| メモリ | 8GB GDDR7 / 128bit / 384GB/s | 12GB GDDR7 / 128bit / 384GB/s |
| アーキテクチャ | 4th-Gen RT / 5th-Gen Tensor / DLSS 4 | 4th-Gen RT / 5th-Gen Tensor / DLSS 4 |
8GB版が出たのは2025年。Framework Laptop 16の初代RTX 5070モジュールが699ドルで登場した時、すでにそれなりの価格だと話題になった。それから1年で、同じチップに4GB積み増しただけのモデルが、500ドル上乗せで売られている。
「VRAMが足りなくて困る人」にとって、12GB化は明確な前進ではある。8GB版でForza MotorsportやAssassin's Creed Shadowsを動かすと、VRAM不足でフレームレートが落ちることが報告されてきた。VRAMは多いほうがいい。それは事実だ。
ただし、この価格差を払う価値があるかどうかは、別の問題だ。RTX 5070 Tiラップトップ版が同じく12GBで、CUDAコア数や帯域幅は5070 Tiのほうが上。性能で劣る5070 12GB搭載機が、5070 Ti搭載機の価格圏に近づく構図になりかねない。
アップグレード可能性の代償
ここで一つ、立ち止まって考えるべき論点がある。
Framework Laptop 16の存在意義は、GPUを後から交換できることにある。普通のゲーミングノートでは絶対に不可能な、デスクトップ的なアップグレード体験をラップトップに持ち込む。それがFrameworkが約束していた未来だ。
実際、3代目のグラフィックスモジュールが出たことで、約束は果たされている。Radeon RX 7700S → RTX 5070 8GB → RTX 5070 12GBと、同じ筐体で世代を跨いでGPUを乗り換えられるラップトップは、ほかに存在しない。
しかし、その「アップグレードできる権利」が、本体ごと買い替えるのに近い金額になってきている。1199ドルは、それなりのスペックの新品ゲーミングノートが買える金額だ。アップグレードがアップグレードとして成立するには、本体価格との差分が無視できる範囲に収まる必要がある。今回はその境界線を踏み越えそうな水準だ。
もう一つ、この値付けには「少量生産」というFrameworkの構造的ハンデも乗っている。TechPowerUpはこう指摘している。
大幅な値上げの理由は明示されていないが、Frameworkが対応しなければならない少ロット生産が一因と考えられ、PCハードウェア市場を襲っているDRAM危機も影響しているだろう。
大量に出荷するDellやLenovoなら、サプライヤーから良い条件を引き出せる。しかしFrameworkはそうはいかない。少量生産のコストが、メモリ高騰局面で容赦なく顕在化している。
ユーザー側の現実的な選択
8GB版モジュールも引き続き販売される(699ドル、約11万1500円)。NVIDIAも8GBを置き換えるつもりはないと明言している。つまり、選択肢は以下のようになる。
8GB版でFramework Laptop 16を組む。VRAMを必要としないゲームや作業なら問題ない。AAA最新タイトルを最高設定で回したい人には不足する場面がある。
12GB版を選ぶ。500ドル余分に払って4GB追加。VRAMバウンドな作業(高解像度ゲーム、ローカルLLM、画像生成AI)では効いてくる。ただし、性能上限はGPUコアと帯域幅で決まるので、5070 Tiクラスを期待してはいけない。
そもそもFramework Laptop 16以外を検討する。同じ予算でより高性能なゲーミングノートが買える。ただし、その瞬間「将来のGPU交換」という選択肢を捨てることになる。
Framework公式が「8GB版も値上がりする可能性が高い」と書いていることは重要だ。今が一番安いかもしれない、という含意がある。メモリ価格が落ち着く保証はない。AIブームが続く限り、GDDR7需要は強いままだ。
ただし、日本のユーザーにとっては別の壁がある。Frameworkは2026年4月時点でも日本への公式発送を行っておらず、購入には輸入代行サービスが必要になる。手数料・関税・保証外リスクを上乗せすると、表示価格よりさらに踏み込んだ判断が要る。
数字の先にある構造
500ドルという数字は、単に「VRAM 4GBの値段」ではない。AI需要によるメモリ逼迫、少量生産メーカーが負うサプライチェーンのハンデ、ユーザーが「修理できる権利」のために払うプレミアム。これらが束になって、消費者の財布に降りてきている。
Framework Laptop 16のアップグレード可能性は、メモリ価格の人質になりつつある。1199ドルという値札は、その現実を我々の前に置いている。
参照元
- Framework Laptop 16 Graphics Module (NVIDIA GeForce RTX 5070) - 公式製品ページ
- Framework公式 X投稿(@FrameworkPuter)
他参照