Bazzite 44公開、ハンドヘルドは後回しの異例進行
ゲーミングLinuxとして広く知られるBazziteが年次大型更新「Bazzite 44」のデスクトップ版を公開した。しかし主戦場であるSteam Deck向けは「数週間後」に持ち越され、看板と実態の順序が入れ替わっている。
ゲーミングLinuxとして広く知られるBazziteが年次大型更新「Bazzite 44」のデスクトップ版を公開した。しかし主戦場であるSteam Deck向けは「数週間後」に持ち越され、看板と実態の順序が入れ替わっている。
デスクトップが先、ハンドヘルドは後ろに回された
Bazziteの創設者であるカイル・ゴスポドネティック(Kyle Gospodnetich)氏は、4月29日(JST)にUniversal Blueの公式フォーラムでBazzite 44のリリースを発表した。Fedora 44ベースの大型更新で、KDE Plasma 6.6、GNOME 50、OGC Kernel(Open Gaming Collective Kernel)6.19.x、Mesa 26.0.5を搭載する。同氏が「これは本命の更新だ」と書いた通り、変更点は広範囲に及んだ。
ところが、リリース対象は当面デスクトップ版のみだ。Steam Deckなどのハンドヘルド向けイメージは「近いうちにテストを開始する」段階に留まり、安定版の提供時期は明示されていない。
我々はこのアップデートを、変更内容の性質と量を踏まえてゆっくりと展開している。既存ユーザーの大多数が良い体験を得られるようにするためだ。
ゴスポドネティック氏は、ハンドヘルドの続報が「数週間以内」に出るとも書いた。歯切れが良いとは言えない。Bazziteといえば、Steam Deck代替OSとして名を上げてきた経緯があるのだから、なおさらだ。
看板の順序が逆転した意味
「ゲーミングLinux」という看板を見て、多くの読者がまず思い浮かべるのはSteam DeckやROG Allyのような携帯機の体験だろう。Bazziteはまさにそこを起点に評価を積み上げてきた。
その主力が後ろに回り、デスクトップ版が先に出る。順序の入れ替えに見えて、開発上の優先順位が一時的に反転している。実機の数だけ検証コストが膨らむハンドヘルドは、変更が大きい更新ほど慎重を要するからだ。
実際、フォーラムには既存ユーザーからの不具合報告が早くも寄せられている。Bluetoothスピーカーが認識されない、KeePassXC-BrowserとBraveの連携が壊れた、NVIDIA環境で解像度が1024×768に固定された。個別の症状はバラバラだが、いずれも「アップデート直後に起きた」という共通点を持つ。Bazzite 44のフレームワーク変更が広範に及んでいる証左でもある。
何が変わったのか
Bazzite 44の変更点は、技術スタックの世代交代と運用面の整理に分かれる。
カーネルとグラフィックスは、OGC Kernel 6.19.x系に乗り、Mesa 26.0.5を採用した。次のカーネル7.0では、Linuxゲーミング界隈でここ最近話題になっていたValveのVRAM管理パッチセットを取り込む予定だという。AMDのGPUでVRAMが少なめの構成では、フォアグラウンドのゲームが背景プロセスに食われずに動くようになり、フレームペーシングの安定が期待できる。
イメージそのものも軽くなった。QEMUとROCmが本体から外され、必要な人向けの派生イメージ「Bazzite-DX」に移された結果、ベースイメージが約1GB縮小している。仮想化や機械学習用途を使わない大多数のゲーマーにとっては、ダウンロードと展開の負荷が下がる。逆にDX側へ移る選択を迫られるユーザーもいるが、これは「全部入り」をやめてユースケース別に切り分ける方針の表れだ。
KDEイメージからPtyxisを外し、コンテナ対応の新しいKonsoleターミナルへ切り替えた。
ターミナル回りの刷新と並行して、配信基盤の整備も進んだ。Bazaarアプリストアは0.7.15に更新され、ISOイメージにはOpenSSFのセキュリティスキャンと署名、SBOM(Software Bill of Materials、ソフトウェア部品表)生成、Build Attestation(ビルド証明)が組み込まれた。ゲーミングディストロでサプライチェーンの透明性をここまで打ち出す例はまだ少ない。
そしてElgatoの4Kキャプチャカードが標準対応に加わった。配信者の多くは、これまで野良ドライバとOBSプラグインの組み合わせに苦労していたはずで、その手間が消える。
Sunshineの扱いが変わった
地味だが影響範囲の広い変更が一つある。ゲームストリーミングホストのSunshineが、標準同梱から外れた。今後はujust経由でbrewパッケージとして導入する形になり、アップデートはSunshine開発元から直接届く。
ゴスポドネティック氏はフォーラムで、既存ユーザーの設定はそのまま使えると説明した。一度ujustを通せば、それ以降は独立した更新経路に乗るという。「Bazziteで保守する」のではなく「上流に任せて使う」方向への舵切りだ。Sunshine自体は今も使えるが、保守の責任は外に渡された。
同梱を外す判断には、メンテナンス負荷の現実がにじむ。
「Steam Deck代替」のアイデンティティが試される
ハンドヘルドの遅延を、開発体力の限界と見るか、品質を優先した判断と見るか。立場で評価は分かれる。
慎重派から見れば、これは正しい選択だ。Steam Deckだけでなく、Lenovo Legion Go、ASUS ROG Ally、最近の新型機まで含めると、Bazziteが対応する携帯機の組み合わせは膨大になる。Fedora 44世代への移行で入力周りや電源管理に手が入った今、急いで全機種に展開すれば不具合が次々と噴き出してしまう。
一方、Bazziteを「Steam DeckにSteamOS以外の選択肢を与える存在」として評価してきたユーザーから見ると、本流が止まっている時間は気になる。フォーラムには既に「Bazzite 43に戻した」という声も出ている。
私と友人5人はBazzite 43に戻した。このアップデートだとBluetoothが完全に使い物にならない。
ニッチに見えるBluetooth問題ひとつで、6人がロールバックを選ぶ。ハンドヘルド版の遅延以上に、安定版で踏む地雷のほうが、ゲーマーには直接痛い。
数週間が長く感じる読者へ
Bazzite 44のデスクトップ版は、技術的にはきちんと前進している。OGCカーネル、軽量化、サプライチェーン対策、Elgato対応、Sunshineの整理。どれもデスクトップゲーマーの環境を地味に底上げする変更だ。
ただし、Bazziteを支持してきた人の多くは、その手元にハンドヘルドを持っている。デスクトップ版で先に出た新機能を眺めながら、自分の携帯機で動く日を待つことになる。「数週間以内」という言葉が長く感じられるかどうかは、その人の機材次第だ。
ゴスポドネティック氏は、デッキ版の進捗を「数週間で更新する」と書いた。慎重に進める姿勢は理解できるが、待たされる時間は、Steam Deckの電源を入れるたびに少しずつ重くなる。
参照元
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