Microsoft、全ブラウザの検索をBingに書き換える専用アプリを開発。22MBの実行ファイル

Microsoftが、PCにインストールされた全ブラウザのデフォルト検索エンジンをBingに切り替えるためだけの専用アプリを開発していたことが判明した。Windows SearchからBingを外せるようにする動きと逆方向を向いている。

Microsoft、全ブラウザの検索をBingに書き換える専用アプリを開発。22MBの実行ファイル

Microsoftが、PCにインストールされた全ブラウザのデフォルト検索エンジンをBingに切り替えるためだけの専用アプリを開発していたことが判明した。Windows SearchからBingを外せるようにする動きと逆方向を向いている。


MicrosoftSettings.exeの正体

Windowsテスターのゼノ・パンサー(Xeno Panther)氏が発見したアプリの名前は「Microsoft Recommended Search Settings」(Microsoftが推奨する検索設定)。実行ファイル名はMicrosoftSettings.exeで、容量は22.2MB

このアプリがやることは一つ。Edge、Chrome、Firefox、Braveなど、PCにインストールされている全ブラウザに対してChrome拡張機能「Microsoft Bing Homepage & Search for Chrome」の追加を促し、デフォルトの検索エンジンとホームページをBingに切り替える。セットアップが終わると、Microsoft Rewardsのページが自動で開く。Bingに乗り換えればポイントを付与するという仕組みとセットになっている。

XenoPanther

技術的には、WinUI(Microsoftのモダンなユーザーインターフェイス基盤)にWebView2(Edgeベースのブラウザ表示エンジン)を組み合わせたシェルで、やっていることはブラウザ拡張機能をインストールするだけ。そのためだけに22MBの実行ファイルを作り、WinUIシェルを組んでいる。

Windows Update経由での配信やMicrosoft Storeへの掲載はされていない。Microsoftの公式ダウンロードサーバー上にホスティングされたスタンドアロンの実行ファイルとして存在している。

注意すべき点がもう一つある。インストール画面でBingへの切り替えを確認するトグルは、最初から「Yes」になっている。小さい文字で「この変更はMicrosoft Edge、Mozilla Firefox、Google Chromeに適用されます」と書かれているが、初期状態が「Yes」である以上、読まずに進めればそのまま切り替わる。

ChromeとMicrosoftがブラウザの中で争う

Chrome拡張機能「Microsoft Bing Homepage & Search for Chrome」はChromeウェブストアに公開されている。提供元はMicrosoft Corporation。評価3.8、レビュー110件、ユーザー数500万人。拡張機能が要求する権限には「すべてのウェブサイト上のすべてのデータの読み取りと変更」「通知の表示」「ホームページ、検索設定、スタートページのbing.comへの変更」が含まれる。

拡張機能のインストールを許可すると、Chromeが即座に検知し「Google検索に戻しますか?」というプロンプトを表示する。Chromeの「Change it back」(戻す)ボタンの直下に、Microsoftの拡張機能が「Wait, don't change it back!」(待って、戻さないで!)というボックスを被せてくる。Bing拡張をオフにするとBing検索と壁紙へのアクセスを失うと警告し、「Keep it」(そのままにする)ボタンに誘導する。

巨大企業2社がユーザーのブラウザ画面の中で、上下に積み重ねたプロンプトで検索エンジンの設定権を奪い合っている。この光景は2024年3月にも報じられており、Microsoftが二層プロンプトでGoogleへの復帰を思いとどまらせようとする手法が確認されていた。2年経ってもこの手法を使い続けている。

Bingに切り替えたChromeの新しいタブページは、MSNフィードに置き換わる。ニュースとトレンドが並ぶ画面で、ユーザーが自分で設定したChromeの新規タブとは別物になる。

2026年、MicrosoftのBing施策の矛盾
4月
ナデラCEO、品質重視を宣言
決算発表で「ファンを取り戻す基盤整備に取り組む」と発言
5月
Bing利用者に100万ドル懸賞
検索エンジンの切り替えにポイントと懸賞金を提供
6月
Windows SearchのBingオフ設定を開発
Insiderビルドで確認。3クリックでBingを一括停止可能に
7月
MSNタイル・広告をWindows Searchから撤去
Widgetsの広告もデフォルトオフに
7月
BingのGoogleアカウント対応
Appleアカウントでもサインイン可能に
7月
HP製PCでBingポップアップ
HP Support AssistantがBingへの切り替えを表示
8月
全ブラウザのBing書き換え専用アプリ発見
MicrosoftSettings.exe。22MBのWinUIシェル
※Bing推進施策とBing撤退施策が並行して進行している

片方でBingを外し、片方でBingを押し込む

このアプリが発見された2026年8月という時期が問題の核心にある。

Microsoftは2026年前半、Windows SearchからBingを切り離す方向に大きく動いていた。6月にはInsiderビルドで「ウェブ検索結果」をオフにするトグルが確認され、デザイン部門のパートナーディレクターであるマーチ・ロジャーズ(March Rogers)氏が変更を認めた。設定 > プライバシーとセキュリティ > 検索から、3クリック以内でBingの検索結果、MSNフィード、Microsoft Rewards、Copilot広告をすべて消せる。Windows 11の26H2で一般提供される見込みで、EUではデジタル市場法(DMA)対応として類似の制御が先行している。

7月にはWindows SearchからMSNタイル・広告が撤去され、WidgetsのMSNフィード・広告もデフォルトでオフになった。サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEO自身が2026年4月の決算発表で「ファンを取り戻すための基盤整備に取り組んでいる」「基本に集中し、品質を優先する」と述べている。

その一方で、まったく逆の動きも同時に走っている。5月にはBing利用者向けに100万ドル(執筆時点のレートで約1億6000万円)の懸賞を実施。7月にはBingにGoogleアカウントやAppleアカウントでサインインできるようにした。7月下旬にはHPのプリインストールアプリ「HP Support Assistant」がWindows 11上でBingへの切り替えポップアップを表示していることも報じられた。そして8月、MicrosoftSettings.exeが発見された。

Windows Searchではユーザーに選択肢を返す方向に動いている。ブラウザ側ではユーザーから選択肢を奪う方向に動いている。一つの企業の中で、正反対のベクトルが走っている。

Bing、月間10億ユーザーの内実

Microsoftには、こうした手法に頼る合理的な理由がない。2026年4月の決算発表でナデラCEOはBingの月間アクティブユーザー数が初めて10億を突破したと明かした。検索広告収入は前年同期比12%増。Edgeのシェアは20四半期連続で拡大している。

10億という数字は印象的に見える。だがウェブ解析サービスStatCounterの2026年3月のデータでは、Bingの世界検索シェアは約5%にとどまっている。10億MAU(月間アクティブユーザー)と5%シェアの間に大きなギャップがある。

このギャップが意味するところは明快で、10億の「ユーザー」の多くは、Bingを選んだ人ではない。Windows SearchやEdgeのデフォルト設定を通じてBingに触れ、月に1回カウントされただけの受動的な接触を含んでいる可能性が高い。Search Engine Journalは「多くのユーザーは低頻度か、デフォルト設定による接触」と分析している。

MicrosoftSettings.exeは、この構造の延長線上にある。Chrome、Firefox、Braveの検索設定を書き換えれば、Edge以外のブラウザからも受動的な「ユーザー」を積み上げられる。品質で検索を選んでもらうのではなく、デフォルト設定の書き換えで接触数を増やす。やっていることの本質は、Edgeのデフォルト設定がBingであることとまったく変わらない。それをEdge以外のブラウザにまで拡張するアプリを、22MBのWinUIシェルで作った。

2020年1月、MicrosoftはOffice 365 ProPlusのアップデートに「Microsoft Search in Bing」拡張機能を同梱し、ChromeのデフォルトをBingに変更する計画を発表して大きな批判を浴びた。この機能は2025年3月に終了している。今回のMicrosoftSettings.exeは、その系譜の最新版といえる。

GoogleもGoogleで、Chrome側にBing拡張を検知して巻き戻すプロンプトを仕込んでおり、自社の検索シェアを守るために防衛策を講じている。この対立構造自体は、どちらも自社サービスへの誘導という点では似ている。

ただ、OSに特権的な立場を持つベンダーが、ユーザーが自分で選んだブラウザの設定を外部から書き換えにいくアプリを作ることと、ブラウザが自身の設定変更を検知して元に戻すかを確認することは、対等には比べられない。前者は選択肢を奪う行為で、後者は選択肢を守る行為になる。

Microsoft自身がWindows Searchでやろうとしていること、つまりユーザーにBingのオン・オフを選ばせるという方針は正しい。その方針が、ブラウザの検索設定に対しても一貫していれば、MicrosoftSettings.exeは存在しない。

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