Microsoftの軽量AI OS「Project Aion」動画が流出
2024年に記録された内部デモ動画で、CopilotをOSの中核に据えた実験的Windowsの全容が明らかになった。
スタートボタンが消えたWindows
Microsoftが社内で試作していたOSの動画が流出した。コードネーム「Project Aion」。約3分間のデモ映像が現地時間7月2日、Windowsのベータビルドを記録・保存するコミュニティBetaWikiのDiscordサーバーに投稿された。
画面に広がるのは、見慣れたWindows 11に似たデスクトップだ。タスクバーが画面下部に並ぶところまでは同じだが、スタートボタンがあるべき位置にはCopilotのアイコンが収まっている。クリックすると開くのはスタートメニューではなく、Copilotを中心に据えたダッシュボードだ。ファイルを探すのも、アプリを開くのも、Webを検索するのも、すべてCopilotの入力ボックスから始まる。
動画内のナレーションはProject Aionを「Copilotをシェルの中核にネイティブで組み込んだ、Webベースのエージェント型OS」と説明している。
Edge上に築かれたOS
Project Aionの技術基盤は2つある。1つはMicrosoft Edge。もう1つはWin3と呼ばれる軽量なWindowsコードベースだ。
Win3はWin32のレガシーアプリを切り捨てる代わりに、高速なアップデート、長いバッテリー駆動時間、強固なセキュリティを追求する設計とされる。Project Aionが動かせるのはWebアプリとWebサイトのみで、従来のWindowsアプリが必要な場合はWindows 365経由でクラウドPCに接続し、リモートで使う構想になっている。
UIには「Spaces」(スペース)と呼ばれる機能がある。使用中のアプリやサイトを自動的にグループ化し、タスクバー上に1つのまとまりとして保存する。後から1クリックで関連するアプリとサイトをまとめて復元できる。従来のタスク切り替えとは異なり、「作業の文脈ごと保存・復元する」という発想だ。
| Windows 11 | Project Aion | |
|---|---|---|
| OSコア | NT カーネル (Win32フル) | Win3 (軽量コードベース) |
| シェル | スタートメニュー +タスクバー | Copilotランチャー +Spaces |
| ブラウザ | Edge(アプリ) | Edge(OS基盤) |
| アプリ 実行方式 | Win32 / UWP / Web | Webのみ (Win32はクラウド経由) |
| 入力起点 | マウス / KB / 検索 | Copilot入力ボックス |
| 対象基盤 | x86 / ARM | Win3 / Win11 / AOSP |
動画では、Copilotの入力ボックスにレストランの質問を打ち込むと、UIそのものが変形してチャットウィンドウに切り替わる様子も確認できる。2つ目のタスクを開始すると、タスクバーにはCopilotのアイコンが2つ並ぶのではなく、タスクの内容に応じて動的に生成されたアイコンが表示される。
2024年の実験、2026年の文脈
この動画は2024年に記録されたものだと報じられている。Windows Centralの上級編集者ザック・ボウデン(Zac Bowden)氏は、自身の情報源が動画の真正性を確認したと述べた。ハッカソンのプロジェクトだった可能性もあり、Microsoftが製品として出荷する意図があったかは不明としている。Microsoft側はコメントを拒否した。
Copilotを中心に据えたOS構想は、今回が初めてではない。2022年にはEdgeベースの「EdgeOS」なるOSのスクリーンショットが出回ったが、偽造だった。2023年10月、サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOはSnapdragon SummitでCopilotを「スタートボタンのようなもの」と形容し、翌2024年1月のCES 2024ではキーボードに専用のCopilotキーを新設した。Project Aionは、この流れの中でMicrosoftが社内で実際に手を動かしていた証拠ということになる。
2022年 「EdgeOS」のスクリーンショット出回る Edgeベースの軽量OSとされたが、のちに偽造と判明 2023年10月 ナデラCEO、Copilotを「スタートボタン」に例える Snapdragon Summitの対談で発言 2024年1月 CES 2024でCopilotキー発表 キーボードに専用物理キーを新設 2024年 Project Aion試作(動画記録時期) Win3ベースのCopilot中心OS。ハッカソンの可能性あり 2026年6月 Build 2026でProject Solara発表 AndroidベースのAIエージェント専用デバイス基盤 2026年7月 Project Aion動画がDiscordに流出 BetaWikiのサーバーに投稿。複数の情報源が真正性を確認 |
ボウデン氏は、Project Aionがそのままの形で出荷されるとは考えにくいとしつつも、この実験から得られた知見はすでに現在のWindows 11に影響を与えているとの見方を示した。
Solaraとの接続
Project Aionには、Win3上で動くバージョンに加え、Windows 11上で動くバージョンも存在するとされる。後者であればネイティブのWindowsアプリが動作する。また、AionがAOSP(Androidオープンソースプロジェクト)上でも動作することを示唆する映像も含まれている。
この構造は、Microsoftが2026年6月のBuild 2026で発表したProject Solaraに近い。SolaraはAndroidベースのMDEP上で動作するエージェントファーストのデバイスプラットフォームで、WindowsとAOSPの両方に対応する。Project AionがSolaraへと発展した可能性は十分にある。
Build 2026で発表されたAion 1.0 InstructとAion 1.0 PlanはWindows向けオンデバイスSLM(小規模言語モデル)であり、今回リークされたOS探索プロジェクトとは名前が同じでも中身は異なる。「Aion」の名がMicrosoft社内のAI関連プロジェクトに繰り返し登場している点は、覚えておいてよい。
ユーザーが受け取るべき情報
Project Aionが製品になる見込みは、現時点では低い。実験で終わったか、Solaraに吸収されたか、いずれにしてもこの形でPCに搭載される可能性は薄い。
読み取るべきは別のところにある。Microsoftは2024年の時点で、スタートボタンをCopilotに置き換え、Win32アプリを切り捨て、すべてをWebとクラウドに移行するOSを、コンセプトではなく動くコードとして試作していた。CES 2024でCopilotキーを発表し、Windows 11にCopilotを次々と統合してきた一連の動きは、Project Aionのような構想が背景にあったと考えれば筋が通る。
同時に、Copilotへの反発がこの1、2年で急速に広がった事実もある。ボウデン氏自身が指摘するように、Microsoftはすでにこの方向性の見直しを進めている可能性がある。
Project Aionが見せたのは、Microsoftが試作した「AIがOSそのものになる未来」の原型だ。Copilotキーのリマップ要求が絶えない現状と、このOSが並んだとき、何が見えるか。
参照元:Leaked video reveals Microsoft has explored building an AI-powered Copilot OS powered by Edge
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