Plasma Bigscreen、6.7ベータで好調復帰
KDEのテレビ向けシェル「Plasma Bigscreen」が、Plasma 6.7ベータでまた前に進んだ。長らく動きの止まっていたこのプロジェクトに、ようやく実用の手応えが戻ってきている。
KDEのテレビ向けシェル「Plasma Bigscreen」が、Plasma 6.7ベータでまた前に進んだ。長らく動きの止まっていたこのプロジェクトに、ようやく実用の手応えが戻ってきている。
一度は埋もれかけたTV向けシェルが、もう一度動き出している
リビングのテレビでLinuxを使う、という発想は決して新しくない。それでも実用的な選択肢はずっと細いままだった。Plasma Bigscreenは2020年3月にKDEから登場したTV向けのPlasmaシェルで、リモコンやコントローラーで操作する大画面向けのUIを提供してきた。だが当初パートナーだったMycroft(オープンソースの音声アシスタント)が活動を停止し、Plasma 6への移行にも乗り遅れた結果、ディストリビューションの標準パッケージからも次々と外されていった。
「死にかけている」と言われても仕方ない状況だった。
Plasma Bigscreenは2020年に登場したテレビ向けのPlasmaシェルで、当初はMycroftをベースにした音声操作と、TVリモコン向けのアプリランチャーを売りにしていた。Mycroftの活動停止と、Plasma 6移行の遅延が重なり、2024年以降は事実上のメンテナンス停止状態に陥っていた。
転機は2025年の夏に訪れる。Plasma Mobileの開発者として知られるespidev(デヴィン・リン)が、放置されていたコードベースを約1週間で整理し直し、ホーム画面・設定アプリ・アプリ起動演出までを大幅に作り直した。ここから少しずつ貢献者が戻り、Plasma 6.7のリリーススケジュールへの復帰が現実的な目標として浮上する。
そして、Plasma 6.7ベータが届いた今、Bigscreenはそのスケジュールに正式に乗っている。
ベータで触ってみて、引っかかりがほとんどない
Plasma 6.7ベータのBigscreenを実機で試した報告では「驚くほど滑らかな体験」と評価されている。AMD Ryzen AI 300シリーズ(コードネームStrix Point)を搭載するノートPCでテストしたところ、レンダリングの引っかかりも目立った不具合もなかったという。アプリはフルスクリーンで起動し、移動はまっすぐで、迷わない。
設定画面も大画面向けに作り直されている。サイドバーに項目が並び、フォーカスが現在地を示し、リモコンの方向キーで動かすことを前提とした作りに変わった。これまでのBigscreenはどこかPlasma Desktopを縮小して並べ替えただけの印象もあったが、今回は「テレビで使うものは最初からテレビ向けに作る」という方針が画面の隅々まで通っている。
テスト時に使われたのはKDE Neon Unstable版。インストール直後、Welcome Centerに触れた瞬間にデスクトップごと落ちる症状があったという。仮想ターミナルに切り替えてパッケージを一通り更新し、再起動したところ問題は消え、以降はトラブルなく動き続けた。
ベータの段階でこの状態なら、6月の安定版で完成度がさらに上がる余地は十分にある。Plasma 6.7の安定版は2026年6月16日に予定されている。
BigscreenとSteam Machine、重なるようで重ならない
Plasma Bigscreenの再起動が注目を集める理由はもう一つある。Valveが2026年中の発売を目指すSteam Machineの存在だ。リビングでテレビにつないで使うPC型ゲーム機で、SteamOSはKDE Plasmaをデスクトップ環境として採用している。
両者は近い場所にいるが、同じものではない。Steam Machineが起動時に表示するのはBig Picture Modeであって、Plasma Bigscreenではない。Plasma BigscreenはあくまでKDEが開発するテレビ向けのPlasmaシェルであり、Steamの一機能ではない。
ただし、両者は競合ではなくむしろ補完関係に近い。SteamOSの「デスクトップに切り替える」ボタンを押した先で動いているのはPlasma Desktopだ。テレビの前で文字を読み、設定を変え、Steam以外のアプリを使う場面ではマウスとキーボード前提のPlasma Desktopが操作的につらい、という指摘は以前からあった。そこにテレビ向けのシェルが正式リリースされていれば、SteamOSやArchベースの自作リビングPCでBig Picture以外の時間を快適に過ごせる選択肢が増える。
espidev自身も、Steam Machineの登場時期にBigscreenを実用品質まで仕上げたいと過去の投稿で語っている。Plasma 6.7のスケジュールに乗ったことは、その目標に対する具体的な前進だ。
試したいなら、KDE Neon Unstableかpostmarketos
現時点で気軽に触れるのはKDE Neonの開発版イメージ。x86-64のPCで起動できる。postmarketOSを使えばRaspberry Piやスマートフォンといった小型機器でも動かせるが、こちらはまだ「Plasma開発を追いかけるnightlyリポジトリ」前提なので、初めて触る人にはNeonのほうがハードルが低い。
公式の配布ページplasma-bigscreen.org/getからNeonのISOが入手できる。Plasma 6.7安定版が6月にリリースされた後は、主要ディストリビューションのパッケージリポジトリにも順次戻ってくる見込みだ。
ベータ品質である点には注意が必要だ。Steam Machineに同梱されるOSではないし、Bigscreenだけで完結したテレビOSが配布されるわけでもない。あくまで「自分でテレビ用のPCを組みたい人のためのシェル」という立ち位置にある。
数年間ほぼ止まっていたプロジェクトが、ベータでここまで素直に動くところまで戻ってきた事実そのものに、コミュニティ駆動の開発がまだ機能していることが現れている。
リビングのテレビで動くLinuxの選択肢が、ようやく「噂」から「実際に触れるもの」に変わりはじめた。
参照元
- Plasma Big Screen Working Out Quite Well With Plasma 6.7 Beta - Phoronix
- Get Plasma Bigscreen - plasma-bigscreen.org
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