JDに禁止品RTX 5090とPRO 6000陳列

中国最大級の通販サイトJD(京东)に、本来販売できないはずのRTX 5090とRTX PRO 6000 Blackwellの購入ページが現れた。価格まで提示された状態で短時間表示され、すぐに姿を消した。

JDに禁止品RTX 5090とPRO 6000陳列

中国最大級の通販サイトJD(京东)に、本来販売できないはずのRTX 5090とRTX PRO 6000 Blackwellの購入ページが現れた。価格まで提示された状態で短時間表示され、すぐに姿を消した。


「AI硬件京东自営専区」に並んだ禁制品

JDの新設ストアフロント「AI硬件京东自営専区」に、米国の対中半導体輸出規制で正規販売が禁じられているNVIDIAのフラッグシップ製品が一時的に並んでいた。中国のXユーザーが商品ページのスクリーンショットを公開したことで発覚し、現在も中国国内のAI関連コミュニティで話題が広がり続けている。

掲載されていたのは3製品。RTX 5090 32GB Blowerが35,999元(約83万7,000円)、RTX PRO 6000 96GB Serverが91,999元(約213万9,000円)、RTX PRO 6000 96GB Desktopが76,999元(約179万円)で、価格、購入ボタン、配送予定日まで設定されていた。配送地は海外、韓国BUSANと記載されていた点も目を引く。

RTX 5090とRTX PRO 6000 Blackwellは、いずれもBlackwellアーキテクチャを採用した現行の最上位GPUだ。前者はゲーマー向けに32GB GDDR7と21,760基のCUDAコアを搭載し、後者は24,064基のCUDAコアと96GBのGDDR7メモリを積む業務向けの怪物で、日本国内の正規流通価格は155万円前後に達する。

RTX PRO 6000 Blackwellは、2025年3月のGTCで発表されたBlackwell世代の最上位プロGPU。96GBのGDDR7 ECC VRAMはプロGPU史上最大容量で、大規模LLMの単一GPU運用を可能にする設計だ。AI推論・学習の中核機材として現在もっとも需要が高い製品群の一つに位置づけられる。

中国市場ではこの世代の正規モデルとして、メモリ帯域幅を1.34TB/sに抑えたRTX 5090D v2(VRAM 24GB)しか購入できないことになっている。32GBのRTX 5090が中国の店頭で買えること自体が、規制の枠外で動いている証拠といえる。


京東自営ではなく「第三者ストアフロント」

問題のページがJD直営ではなく、第三者ストアによる出品だった点を多くの観察者が指摘している。NVIDIAが直接関与した販売ではなく、何らかの非正規ルートで中国に持ち込まれた個体である可能性が極めて高い。

リスト掲載は短時間で取り下げられた。スクリーンショットを撮ったユーザーが価格情報まで保存できたのは、削除の直前に滑り込んだ偶然による。今回の登録について、JDもNVIDIAも公式コメントを出していない。

京仓直发」「正品保障」「対公転帳」といった文言がページに踊っていた点も興味深い。本来であれば法的に成立しないはずの取引に、JDが提供する自社物流網と正規領収書の発行を組み合わせる構図が示唆されていた。

中国国内のレビュー欄や掲示板では、出品の真偽より「密輸品」「個人輸入の代行業者がJDの店舗権限を取って並べたのでは」といった推測が中心を占めている。スクリーンショットを撮影したユーザー自身も、価格情報を保存できた直後にすべてのリンクが切られたと記録している。


トランプ訪中とフアンの同行、その同じ日に

タイミングが偶然とは思いにくい。同じ週、ドナルド・トランプ大統領は北京での首脳会談のため中国を訪問しており、ジェンスン・フアンNVIDIA CEOも当初の予定にはなかったAir Force Oneに途中合流する形で同行した。トランプ大統領の電話による直接の呼びかけが発端だったと米メディアは伝えている。会談に合わせ、ロイターは米商務省がNVIDIAのH200 AI GPUについて中国企業10社への販売を承認したと報じている。

H200はHopper世代のAI GPUで、最新のBlackwell世代ではなく、データセンター向けのH100をベースにメモリを拡張した派生品にあたる。それでも昨年末から「販売認可」と「実出荷ゼロ」の状態が続いていた経緯がある。今回の認可が訪中と合わせて公表された形だ。

ところが、RTX 5090やRTX PRO 6000 Blackwellは話が別だ。H200のような事前審査済みの一括承認ルートは存在せず、現時点でも禁止対象のままになっている。それが小売サイトに価格付きで並んだ意味は重い。

規制側から見れば、中国の正規通販で禁止製品の価格と購入動線が成立していたという事実そのものが警告音になる。サプライチェーン経由でブラックウェル世代の最上位GPUがすでに国境を越えていること、そしてその個体が組織的にJDのような大手プラットフォームに流れ込みうることを示している。

実物の流通量がどれほどあるかは不明だ。1点か2点が転売目的で並んだだけかもしれないし、もっと組織的な持ち込みの一部かもしれない。価格情報が削除されてしまった以上、外から確認できる手がかりは、スクリーンショットに残った数字だけだ。


抜け穴の存在は公然の秘密

GPUを含む規制対象のAI半導体が中国に流れ込んでいるという指摘は、過去数年にわたり繰り返されてきた。シンガポール経由、香港経由、第三国の組み立て工場経由――ルートはさまざまだが、規制発動の都度、市場には何らかの形で物が現れる構造が続いている。

今回のJDの一件は、その流通が大手ECの直販エリアにまで顔を出した点で性質が違う。個人輸入の闇市ではなく、企業向けの請求書発行を伴う形での提供が試みられた可能性が高い。中国国内のAIスタートアップや研究機関の旺盛な需要が、こうしたグレーな経路の収益性を支えている。

RTX 5090とRTX PRO 6000 Blackwellは現時点で米国の輸出規制の対象であり、中国向けの正規販売は認められていない。中国で正規購入できるのはメモリ帯域幅と容量を絞ったRTX 5090D v2のみで、32GB版のRTX 5090やフルスペックのPRO 6000が流通している場合、密輸または並行輸入とみなされる。

NVIDIAにとっては、表向き米国の規制に従う姿勢を示しながら、最終的に自社の半導体が中国で稼働するという矛盾した結果になっている。トランプ大統領との北京同行で同社が得たいのはH200の正式販売路だが、その横で、最上位品のRTX 5090とRTX PRO 6000 Blackwellが裏ルートで流通している状況は、規制論議の前提を揺さぶる材料になりそうだ。

価格が消えたページの跡には、表に出ない流通の輪郭だけが残った。


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