ReactOS、ハーフライフ2も動作。30日で続編を制覇
開発30年目を迎えたオープンソースのWindows互換OS「ReactOS」が、前月のハーフライフに続きハーフライフ2の動作を達成した。7月第1週にはVista互換に向けたNT6初のシステムコールも実装され、2026年の進展が加速している。
GoldSrcの次はSourceエンジン
ReactOSが7月最初の週末、ハーフライフ2(2004年)の動作を報告した。6月にGeForce 8400GSでハーフライフ(1998年)を動かしてから30日足らずで、エンジン世代がひとつ上がった。
Half-Life 2 also runs great on #ReactOS, tested with real hardware!!
— ReactOS (@reactos) July 4, 2026
Courtesy of @AotoriHibiki.https://t.co/U89tYFEo1N
テスト環境はGeForce GTX 960にNVIDIAの368.61レガシーWindowsドライバを組み合わせ、Creative Sound Blaster Audigyのドライバも載せた構成だ。ハーフライフがGoldSrcエンジンのOpenGLパイプラインを通したのに対し、ハーフライフ2はValveが自社開発したSourceエンジンで動く。描画負荷もAPIの呼び出し経路も異なるタイトルが、ReactOS独自のカーネルとドライバスタックの上で走った。
ReactOSのナイトリービルドを使い、ゲームはインゲームで正常に動いたと報じられている。プレイの様子はYouTubeで確認できる。
ここで整理しておきたいのは、ReactOSとWineの違いだ。WineはLinuxやmacOS上でWindows APIの呼び出しを変換する互換レイヤーであり、ホストOSのカーネルとドライバに依存する。ReactOSはNTカーネルそのものを独自に再実装したOSで、Windowsアプリケーションは変換なしにReactOSのカーネル、ドライバスタック、Win32ライブラリに対して直接実行される。
ハーフライフ2がWineで動くことは珍しくない。ReactOSで動くことは、NTカーネルのクリーンルーム再実装がSourceエンジンのGPU負荷に耐えたことを意味する。
NT6初のシステムコールも7月に
7月1日、ReactOSのカーネルにNtGetCurrentProcessorNumberExがマージされた。呼び出し元スレッドが動作している論理プロセッサの番号を返す関数で、NT6世代(Windows Vista以降)で導入されたAPIだ。
ReactOSは長年NT5.2(Windows XP/Server 2003)の互換性を目標にしてきた。NT6はVista、7、8、8.1が共有するカーネル体系であり、ここへの対応は互換性の射程が一世代広がることを意味する。
この関数自体に現時点で実用的な効果はないが、Vista以降のソフトウェアを走らせるための最初の足場にはなる。ReactOS公式はこれを「Vista+互換性への注目すべき瞬間」と表現している。
Along with some NT6 processor functions of NTDLL, the first NT6 call inside #ReactOS kernel is now implemented! A milestone for ongoing Vista+ effort!!
— ReactOS (@reactos) July 2, 2026
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2026年のReactOS
時系列で振り返ると、2026年のReactOSは異例の密度で前進している。
1月1日にMSVCRTライブラリをWine 10.0と同期し、APIテストの失敗件数を約30%削減。1月18日には10年越しの課題だった非同期TCP接続のサポートがマージされた。
5月にARM64での実験的な起動が確認され、6月にハーフライフの実機動作へ到達。7月第1週にハーフライフ2の動作とNT6初システムコールが立て続けに加わった。
2026年1月1日 MSVCRT同期 Wine 10.0とライブラリを同期、APIテスト失敗を約30%削減 2026年1月18日 非同期TCP対応 10年越しの課題だった非同期TCP接続のサポートがマージ 2026年5月 ARM64起動 ARM64での実験的な起動を確認 2026年6月 ハーフライフ動作 GeForce 8400GSでハーフライフの実機動作を達成 2026年7月1日 NT6初システムコール Vista互換に向けた最初のシステムコールを実装 2026年7月5日 ハーフライフ2動作 GeForce GTX 960でハーフライフ2のインゲーム動作を報告 |
プロジェクト開始から30年、いまだアルファ版を名乗るReactOSが、2026年前半だけで複数のマイルストーンを刻んでいる。
ゲームの動作確認は技術的な検証として機能する。リアルタイム3Dアプリケーションはタイミング、メモリ管理、GPU描画、入力処理、ファイルアクセスを同時に要求し、OSの互換性が十分でなければゲームプレイに到達できない。
「ロシアのプロジェクト」という誤解
ハーフライフ2の動作が報じられた直後、報道のコメント欄で技術とは無関係の議論が起きた。DistroWatch(Linux/BSDディストリビューションの情報サイト)がReactOSの起源を「Russia」と分類していることを根拠に、ロシアに関連するソフトウェアは避けるべきだと主張する投稿が現れ、賛否が割れた。
事実関係を確認する。ReactOSのプロジェクト自体は1996年にFreeWin95として始まり、1998年にReactOSへ改名された。かつてロシアのサランスクにReactOS Foundationが登録されていたが、2015年に解散している。
現在のプロジェクトの法人格はReactOS Deutschland e.V.で、2009年にドイツのオスナブリュックでReactOS開発者7名によって設立されたドイツ法に基づく非営利団体だ。寄付はPayPalとSEPA(欧州統一送金)経由でドイツの銀行口座に入り、年次報告書も公開されている。
コントリビューターにロシア出身の開発者が含まれることは事実であり、過去にはロシア政府の輸入代替ソフトの候補に挙がったこともある。一方でGitHubのコミット履歴が示すように開発者は多国籍であり、コードはGPLv2で公開されている。DistroWatchの「Origin」ラベルは初期の組織登録に基づく地理的分類であって、プロジェクトの現在のガバナンスや資金の流れを反映しているわけではない。
オープンソースプロジェクトのコードを、開発者の国籍やプラットフォームの分類ラベルで判断すべきか。反論が多数の支持を集めた。