Ryzen PRO初の16コアX3D、PassMarkに姿現す

Ryzen PRO初の16コアX3D、PassMarkに姿現す
AMD

AMDのビジネス向けCPUに、これまで存在しなかった「16コア+3D V-Cache」の組み合わせが現れた。Ryzen 9 PRO 9965X3D、PassMarkの初サンプルがX86 is dead&backの観測で表に出た。


ビジネス向けに、ゲーマー御用達のキャッシュが乗る

AMDの「PRO」シリーズは、これまで12コアが上限だった。

セキュリティ機能と長期安定供給を売りにする業務向けCPUであり、Zen 5世代のラインナップは6コアの Ryzen 5 PRO 9645 、8コアのRyzen 7 PRO 9745、12コアのRyzen 9 PRO 9945という構成で、いずれもTDPは65Wに統制されていた。X3D、つまり3D V-Cacheを積層した「ゲーミング向け」のスペシャル仕様は、この系統には一度も投入されたことがない。

そこに、Ryzen 9 PRO 9965X3Dという未発表モデルがPassMarkに姿を現した。

リーカーのX86 is dead&back(@x86deadandback)がPassMarkデータベースを観測し、最初のサンプルを共有した。型番に「X3D」を冠した、PROシリーズ初の16コア/32スレッドCPUである。

Ryzen PRO 9000シリーズ ラインナップ
項目 Ryzen 5
PRO 9645
Ryzen 7
PRO 9745
Ryzen 9
PRO 9945
Ryzen 9
PRO 9965X3D
コア/
スレッド
6/12 8/16 12/24 16/32
ベース
クロック
3.9 GHz 3.8 GHz 3.4 GHz 未公開
ブースト
クロック
5.4 GHz 5.4 GHz 5.4 GHz 未公開
L3
キャッシュ
32 MB 32 MB 64 MB 128 MB
(推定)
3D
V-Cache
搭載
TDP 65 W 65 W 65 W 65W/
170W未確定
状態 発売済 発売済 発売済 未発表
※ Ryzen 9 PRO 9965X3DはPassMarkリスティングおよび出荷マニフェストからの情報。L3キャッシュ128MBは9950X3Dと同等構成という前提での推定値。TDPは出荷マニフェストでは170W、PROシリーズの伝統では65Wで現時点では未確定。
16コアと3D V-Cacheが、ビジネス向けの型番にぶら下がる。X3Dは長くゲーミングPCの専売特許だった。その境界がいま、ゆっくりと溶けはじめている。

PassMarkスコアが示す、9950X3Dとの距離

提出された3サンプル分のPassMarkデータは、コンシューマー向けフラッグシップであるRyzen 9 9950X3Dとの比較で、おおよその位置を物語っている。

CPU Markは65111、9950X3Dの70201に対しておよそ 7.3%低い 。シングルスレッドは4614で、9950X3Dの4743から2.7%下回る。

Ryzen 9 PRO 9965X3D vs Ryzen 9 9950X3D
項目 PRO 9965X3D 9950X3D
セグメント 業務向け
(PRO)
消費者向け
アーキ
テクチャ
Zen 5 Zen 5
コア/
スレッド
16/32 16/32
L3キャッシュ
(ベンチ表示)
32 MB 128 MB
CPU Mark 65,111 70,201
シングル
スレッド
4,614 4,743
マルチ
性能差
−7.3 % 基準
シングル
性能差
−2.7 % 基準
TDP 未確定
(65W/170W)
170 W
状態 PassMark
サンプル登場
発売済
※ PassMarkリスティング時点のスクリーンショット値。L3 32MB表示は3D V-Cacheの積層分をベンチマークが認識できていない可能性が高い。出典:PassMark CPU Benchmarks。

注意したい点が一つある。記載されたL3キャッシュは32MBであり、9950X3Dが持つ128MBの4分の1という値だ。PassMarkのリスティングはこの段階では仕様が確定しておらず、ベンチマーク側がV-Cacheの積層分を読み取れていない可能性が高い。

過去のリークでは、ある程度の輪郭が見えていた。今年1月、@Olrak29_がNBD(出荷マニフェスト)で同じ型番を観測しており、そこには 170WのTDP と、product ID 100-000001999が記載されていた。

つまり、現時点で見えているのは「16コア/32スレッド/Zen 5/3D V-Cache搭載/TDPは65Wか170Wか未確定」という骨格である。

ベンチマークの数字より、PROブランドにX3Dを乗せるという判断そのものが情報量を持つ。AMDはこのチップで、業務向けの「最速」を再定義しようとしている。

なぜ今、業務用にV-Cacheなのか

3D V-Cacheの効能は、長らくゲーミングと結びつけて語られてきた。フレームレートを左右するレイテンシ削減という文脈で、Ryzen 7 7800X3DやRyzen 7 9800X3Dが「ゲーミング最強」の座を獲得してきた経緯がそうさせている。

しかし、キャッシュ容量で性能が伸びる領域はゲームに限らない。

科学技術計算、メモリアクセス頻度の高いシミュレーション、コード解析、CFDのような流体計算、AI推論ワークロードの一部。これらは「データを近くに置けるかどうか」で実行時間が大きく変わる性質を持っている。AMD自身、4月22日に発売した両CCD搭載X3DのRyzen 9 9950X3D2 Dual Editionを、ゲーミング向けではなく「クリエイター・開発者向け」と位置づけ直して市場投入した。

PROシリーズへのX3D拡張は、この流れと地続きの動きと読める。X3D=ゲーミングという等式の解体は、Dual Editionの登場で先に始まっていたわけだ。

ビジネス向けに16コアが用意されるのも初である。Threadripper PROがWX系として上位を担ってきた一方、Ryzen PROは長く「業務向けの中核帯」に位置していた。そこに16コアが入ってくれば、ワークステーション市場の価格帯に新しい選択肢が増える。中堅エンジニアリングチームや小規模スタジオにとって、Threadripperほどの予算を割かずにX3Dの恩恵を受ける道筋が開く構図である。


TDPは65Wか170Wか、未確定の宙吊り

今回のリークが完全には解けていない疑問がある。それがTDPだ。

1月の出荷マニフェストでは170W、つまり9950X3Dと同じ高TDP帯が記載されていた。だが、PROシリーズの伝統的な設計思想は 65Wの低消費電力 であり、ビジネス向けの安定動作を最優先する。Ryzen 9 PRO 9945(12コア)も65Wに収まっており、9950X3D相当の170Wを引き継ぐなら、PROブランドの設計哲学からはやや外れる。

もし65Wに据え置かれるならば、手動オーバークロックを行わない多くのプロフェッショナルにとって極めて効率的な選択になる。一方で170WならゲーミングPCのフラッグシップに肉薄する電力枠で動かせるため、性能の引き上げ幅が大きくなる。

65Wの設計枠で16コアにV-Cacheを積めば、効率はおそらく現行PROシリーズの中で最も高い水準に達する。問題は、その効率がエンタープライズ顧客にどれだけ刺さるかという市場側の問いだ。

最終的にどちらに着地するかは、AMDの正式発表を待つしかない。


9950X3D2と並ぶ、AM5の次のフェーズ

AMDのAM5ソケット戦略は、2026年に入ってから明らかに「上の方」に向かっている。

4月発売のRyzen 9 9950X3D2 Dual Editionは $899(約14万1000円) でAM5最高価格を更新し、両CCDに3D V-Cacheを積む世界初の設計でクリエイター市場に踏み込んだ。一方でRyzen 7 9850X3DはCES 2026で発表され、シングルCCD系のX3Dを世代更新している。

そこに今回、PROブランドの16コアX3Dが加わる。ハッサン氏は「Ryzen Pro Desktop系統で初の16コアCPUの登場を期待している」と結んでおり、市場投入のタイミングは数週間から数ヶ月先と見られている。

Zen 5世代 X3Dファミリーマップ
項目 9800X3D 9850X3D 9950X3D 9950X3D2 PRO
9965X3D
コア/
スレッド
8/16 8/16 16/32 16/32 16/32
V-Cache
配置
単一
CCD
単一
CCD
片側
CCD
両CCD 未確認
L3
合計
96 MB 96 MB 128 MB 192 MB 未確認
TDP 120 W 120 W 170 W 200 W 未確定
米国
MSRP
$479 未公開 $699 $899 未公開
主な
ターゲット
ゲーマー ゲーマー ゲーム+
制作
クリエイター・
開発者
業務・
ワーク
ステーション
状態 発売済 発売済 発売済 発売済
(4月22日)
未発表
※ Zen 5世代でX3Dを冠する全モデルを並列で配置。9950X3D2は2026年4月22日発売、PRO 9965X3DはPassMarkに最初のサンプルが登場した段階で正式発表前。

PROシリーズは基本的にOEM経由で企業向けPCに搭載されて出荷される性格を持つため、DIY市場で個別購入できる時期や価格は読みにくい。それでも、9965X3Dという型番が実際の流通レーンに乗ってきたという事実は、AM5プラットフォームのライフサイクルがまだ伸びることを示している。

X3Dという技術が、ゲーマーの手から、エンジニアの手へ届きはじめる。今回のPassMarkリスティングは、その途上にある一つの目印だ。

参照元

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