シリコンバレー

AIがシリコンバレーから奪っているのは雇用ではなく睡眠だった

AI

AIがシリコンバレーから奪っているのは雇用ではなく睡眠だった

AIの不安はもう開発者だけの話ではない。起業家、CEO、非技術職、投資家。シリコンバレーの全層が、仕事から離れられなくなっている。 出力100倍、労働時間も倍 マット・バン・ホーン(Matt Van Horn)氏は、もうノートPCの電源を切らない。4人の子を持つ連続起業家で、Lyftの前身Zimrideを共同創業し、スマートオーブンのJuneを設立・売却した経歴を持つ。現在はClaude Codeで常時6つ以上のAIエージェントを稼働させ、新たな会社を立ち上げている。出力はAI導入前の100倍になったと本人は語るが、同時にこうも認めている。かつてないほど働いている。 エージェントが仕事を代行してくれるはずだった。だが現実には、AIの出力を監視し、判断し、指示し直す作業が途切れなく発生する。人の手が離れた瞬間にエージェントは止まる。止まっている間に競合は進む。だからノートPCを閉じられない。 バン・ホーン氏だけの話ではない。音声AI企業Wispr AIのCEO、タナイ・コタリ(Tanay Kothari)氏は毎日16時間以上働き、5月には3週間連続でオフィスに泊まり込んだ。スタ

トランプ政権のAI規制を業界が懸念 政策変更と献金の関係を検証

AI

トランプ政権のAI規制を業界が懸念 政策変更と献金の関係を検証

シリコンバレーの億万長者たちは、バイデン政権のAI安全政策が米国のイノベーションを潰すと警告し、トランプ陣営に巨額を献金した。AIを自由に伸ばす、規制はしない。就任直後のトランプ大統領はその期待通りに動き、州レベルのAI規制を封じることに注力した。 2026年6月、その約束は跡形もない。 「バイデン式の規制が恋しい」 6月に入り、ホワイトハウスはAnthropicとOpenAIに対して立て続けに介入した。Anthropicの最上位モデルMythos 5とFable 5には輸出管理指令が出た。外国籍者へのアクセスを禁じる内容で、Anthropicは国籍の即時判別ができないため全ユーザーを遮断した。OpenAIにはGPT-5.6のリリースを政府が承認した約20社に限定するよう要請した。いずれもサイバーセキュリティ上の懸念が理由とされるが、具体的な基準は示されていない。 6月26日、ラトニック(Howard Lutnick)商務長官がAnthropicに書簡を送り、Mythos 5については100社超への再配布を許可した。ただしFable 5の制限解除には触れていない。同じ日にOp

ナデラ氏「自分もやめられない」。AI使い放題の時代が終わる

AI

ナデラ氏「自分もやめられない」。AI使い放題の時代が終わる

Microsoftのサティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOが、AIの過剰利用を戒めた。「自分もトークンマキシングの中毒だ」と認めたうえで、従業員に対して高価なフロンティアモデルの安易な使用をやめるよう呼びかけている。AIを売り込む側のトップが「やめられない」と告白したこと自体が、シリコンバレー全体で進むAIコスト見直しを象徴している。 「たくさん使ってる。中毒だ」 2026年6月、ニューヨーク・タイムズのポッドキャスト「Hard Fork」の公開収録に登壇したナデラ氏は、社内でどれほどトークンマキシングが起きているかを問われ、質問が終わる前に答えた。 「たくさん。自分もトークンマキサーだ、中毒になる。でも新鮮さが薄れたら一歩引いて、自分は何を作ろうとしているのかと考えないといけない」 トークンマキシング(tokenmaxxing)。AIのトークン消費量を際限なく最大化する行為を指すネットスラングで、2026年春ごろからシリコンバレーで急速に広まった。社内リーダーボードでトークン消費量を競い合う文化が、複数のテック大手で確認されている。 ナデラ氏はさらに踏み込ん

テック大手がバチカンでAIを売り込む

AI

テック大手がバチカンでAIを売り込む

Meta、Google、Amazonの幹部が4月末にバチカンで教皇レオ14世と面会していた。初の回勅がAIの倫理を問うまさにその日、裏ではシリコンバレーが「道徳の門」を叩いていた。 教皇の回勅とシリコンバレーの接近 教皇レオ14世が本日5月25日に発表する初の回勅「Magnifica Humanitas」(マニフィカ・フマニタス、「壮大なる人間性」)は、AI時代の人間の尊厳をテーマに据えている。レオ14世が署名日に選んだのは5月15日。1891年の同日にレオ13世が産業革命期の労働問題を扱った回勅「レールム・ノヴァールム」に署名しており、ちょうど135年後にあたる。AIを「もう一つの産業革命」と位置づけるレオ14世の姿勢が、日付の選択に表れている。 だが回勅の準備が進む裏で、テクノロジー企業は静かにバチカンの門を叩いていた。4月29日、Meta、Google、Amazonの幹部が少人数のグループでローマに集まり、教皇と短時間の面会を果たした後、在バチカン・フランス大使館で数時間にわたる議論を行った。 テーマは当初「AI時代の児童保護」だったが、議論はすぐに「AIが人間の社会性

AI企業が宗教指導者に倫理を求め始めた

AI

AI企業が宗教指導者に倫理を求め始めた

シリコンバレーが長年距離を置いてきた組織宗教に、AnthropicやOpenAIが倫理の答えを探しに行っている。「Faith-AI Covenant」という名のラウンドテーブルがその転換点になりつつある。 ニューヨークで開かれた「Faith-AI Covenant」 ヒンドゥー教、シーク教、ギリシャ正教、バハーイー教、そして末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会)の代表が、AnthropicとOpenAIの担当者と同じテーブルについた。先週ニューヨークで開かれた、この種の会合としては初となる「Faith-AI Covenant」ラウンドテーブルだ。AP通信のクリスタ・ファウリア(Krysta Fauria)記者が5月8日に伝えた。 主催したのはジュネーブを拠点とするInterfaith Alliance for Safer Communities(安全なコミュニティのための宗教間同盟)で、過激主義・急進化・人身売買などに取り組んできた団体だ。今回が世界シリーズの第1回で、続く会合は北京、ナイロビ、アブダビが予定されている。 技術企業が信仰の指導者にAIの倫理を相談する。一

マスク氏のOpenAI訴訟、過去のX投稿と法廷証言の整合性が争点に

AI

マスク氏のOpenAI訴訟、過去のX投稿と法廷証言の整合性が争点に

法廷に立ったイーロン・マスクは「OpenAIは慈善を盗んだ」と訴えるはずだった。しかし反対尋問で自分が過去にXへ書いたテスラとAGIの宣言が突きつけられ、看板の主張が宙に浮く展開になった。 「テスラはAGIを追っていない」と証言した直後に カリフォルニア州オークランドの連邦地裁で4月29日、イーロン・マスク(Elon Musk)はOpenAIとサム・アルトマン(Sam Altman)を相手取った訴訟の証言台に立った。マスクの主張は単純で、アルトマンとグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)にだまされて非営利団体を支援したのに、その器を使って営利会社が組み上げられ、慈善が「盗まれた」というものだ。 ところが反対尋問の流れは、マスク本人の言葉で揺さぶられていった。 OpenAIの代理人であるウィリアム・サビット(William Savitt)は、マスクが午前中の証言で「テスラはAGI(汎用人工知能、人間と同等の知的タスクをこなせるAI)を追求していない」と述べたことに対し、わずか数週間前にマスク自身がXへ投稿した文章を法廷のスクリーンに映し出した。そこには「テスラはA