マスクの子の母が法廷で証言、OpenAI裁判で内幕が次々

オークランドの連邦地裁で進むマスク対アルトマンの裁判は、AIの未来ではなく、シリコンバレーの密室を法廷に引きずり出している。マスクの子4人の母であり元OpenAI取締役のシヴォン・ジリスが、5月6日に証人席に立った。

マスクの子の母が法廷で証言、OpenAI裁判で内幕が次々
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オークランドの連邦地裁で進むマスク対アルトマンの裁判は、AIの未来ではなく、シリコンバレーの密室を法廷に引きずり出している。マスクの子4人の母であり元OpenAI取締役のシヴォン・ジリスが、5月6日に証人席に立った。


元取締役が語った「忠誠」と「精子提供」

シヴォン・ジリス(Shivon Zilis)は、イーロン・マスクの子4人の母であり、元OpenAI取締役だ。証言席で、彼女は2017年から2023年までOpenAIの構造をめぐる議論に加わっていたと述べた。マスクが営利AI企業xAIを立ち上げた2023年に取締役を退任した経緯を、彼女は法廷でこう説明した。友人へのテキストメッセージが法廷に提出された。

When the father of your babies starts a competitive effort and starts recruiting from OpenAI there is nothing to be done.(自分の子どもの父親が競合を始めOpenAIから人材を引き抜くなら、もう何もできない)

マスクとの関係は、当初は仕事上の同僚だった。彼女が独身で母になることを決めた際、マスクが精子提供を申し出たという。当時の関係はプラトニックだったが、現在はロマンチックな関係にあると証言した。

ただし、ジリスは「判断には影響しなかった」と強調した。OpenAI側の弁護人サラ・エディから反対尋問を受けると、彼女は「人類のためのAI」という最善の結果に忠誠を誓っていたと語った。

裁判の核心は、この「忠誠」がどこに向けられていたかにある。マスクの弁護人は「マスクに情報を流す役割だったか」と尋ねた。ジリスは「絶対にそんなことはない」と否定したが、ディスカバリー段階で公開された過去のメッセージには、彼女がマスクに「情報を流し続けている」と書いた記録が残っている。

I would have preferred it if I'd written 'trust framework' rather than 'trust game'.(『信頼ゲーム』ではなく『信頼の枠組み』と書くべきだった)

この一文は、ジリスがマスクへ送った「信頼ゲームが厄介になりつつある」という文面の言い直しだ。彼女は同じ事実を別の言葉で表現することで、二重スパイの印象を消そうとした。

「サムは安全性で嘘をついた」、ムラティが踏み込んだ

同じ5月6日、もう一つの動画証言が陪審員に提示された。ミラ・ムラティ(Mira Murati)の録画証言である。彼女は2023年、アルトマンが取締役会から一時的に解任された際に暫定CEOを務めた人物だ。現在は自身のAI企業Thinking Machines Labを率いている。

ムラティは、アルトマンが新しいAIモデル(New Yorker誌が報じたGPT-4 Turboとされる)の安全性審査について嘘をついたと明言した。アルトマンは法務責任者ジェイソン・クォンが「安全性ボードを通す必要はないと判断した」と説明したが、ムラティが直接クォンに確認したところ、両者の発言は食い違っていた。

ムラティはこう続けた。アルトマンは幹部同士を競わせ、CTOとしての彼女の役割を弱体化させていた。それでも彼女は、2023年の解任時にはアルトマンの復帰を支持している。

My concern was about Sam saying one thing to one person and completely the opposite to another person.(サムがある人にこう言い、別の人には正反対のことを言う、それが私の懸念だった)

「OpenAIは崩壊する寸前の危機だった。会社が完全に吹き飛ぶことを恐れていた」と証言した。皮肉なまとめ方をすれば、彼女は信頼していない人物を、組織を守るために留任させたのだ。


ヘレン・トナーが見た「インドでの未告知テスト」

その日の終わり、もう一人の元取締役、ヘレン・トナー(Helen Toner)の動画証言も流された。トナーはアルトマン解任時の取締役会メンバーで、ジョージタウン大学の研究者でもある。

トナーは、アルトマンが取締役会に対してChatGPTの3つのバージョンが安全性ボードで審査・承認されたと説明したと語った。だが資料を確認すると、実際に審査されたのは1つだけだった。さらに、Microsoftによるインドでのテスト版リリースを、アルトマンは取締役会に伝えていなかった。取締役会の知らないところで進んでいたのだ。

これは2024年5月にトナーがポッドキャストで語っていた「アルトマンは取締役会に対して直接嘘をついていた」という主張を、法廷の宣誓下で繰り返したものだ。既知の話が、証人席で証拠の重みをまとった。

1500億ドルの請求と、消えない疑問

マスクの訴訟は2024年に提起され、当初26件あった請求は2件に絞られている。残るのは慈善信託違反と不当利得返還請求で、損害賠償として1500億ドル(約23兆4000億円)を求めている。OpenAIは現在、私募市場で8500億ドル(約13兆2600億円)以上の評価額を持ち、Microsoftの27%の持分は約2000億ドル(約3兆1200億円)と見られる。

陪審員は9人。ただし、判事イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース(オバマ政権任命)は裁判を責任認定フェーズと救済フェーズに分け、陪審の評決は責任認定フェーズのみ、しかも勧告的なものとした。最終判断は判事に委ねられる。責任認定は5月21日に終結予定だ。

マスクは2015年にOpenAIを共同設立し、約3800万ドル(約59億3000万円)を寄付した。その金が現在の8500億ドルの営利企業を生む種になった事実が、争点の一つとなっている。

マスクは火曜日、ジリスの証言の音声生中継を停止するよう求めたが、判事はこれを却下した。判事は「他の証人と区別する十分な根拠が示されていない」と述べ、特別扱いの理由を「説得力に欠ける」と切り捨てた。


法廷が映したのは「人間関係で動く非営利」

3つの証言が並んで見えてくるのは、人類のためのAIを掲げた非営利組織が、いかに個人の信頼関係と内部政治で運営されていたかという現実だ。子どもの父との関係を抱えながら取締役会に座っていたジリス。CEOの嘘に気づきながら復帰を支持したムラティ。安全性審査の偽装を目撃したトナー。

OpenAIは法廷でマスクの主張を「根拠のない、嫉妬による競合潰し」と切り捨ててきた。だが今週の証言は、マスクの主張の真偽とは別の問題を浮かび上がらせている。これほど重要なAI企業のガバナンスが、これほど属人的で良かったのか

陪審の評決は5月21日までに出る見通しだ。それが「マスクの勝訴」になるかは別として、証言録は永遠に残る


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