ターナス新CEO就任、Apple10製品の青写真
折りたたみiPhoneを筆頭に、スマートホームから卓上ロボット、ARグラスまで。9月1日就任のジョン・ターナス新CEOが引き継ぐ「10カテゴリー」の中身。
折りたたみiPhoneを筆頭に、スマートホームから卓上ロボット、ARグラスまで。9月1日就任のジョン・ターナス新CEOが引き継ぐ「10カテゴリー」の中身。
ターナス時代は「9月の折りたたみ」から始まる
ジョン・ターナス(John Ternus)がAppleの新CEOとして始動するのは2026年9月1日。Bloombergのマーク・ガーマン(Mark Gurman)が伝えたところでは、その就任から数週間以内に、彼は折りたたみiPhoneの発表ステージに立つ予定だ。
15年近くトップを務めたティム・クック(Tim Cook)から、ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長だったターナスへの交代。Apple日本法人の発表によると、クックは同日付でエグゼクティブ・チェアマン(取締役会長)に就く。
新CEOが最初に世界へ披露するのが折りたたみiPhone──ハードウェア畑を歩んできた彼にこれ以上ふさわしい初仕事はない。ガーマンの見立てではこれは偶然ではなく、Apple側が意図的に組んだ筋書きだという。
なぜ9月1日なのか、就任日の意味
就任日が9月1日に設定された理由は、Appleの年中行事と無関係ではない。
ガーマンによれば、Appleの経営陣はこのタイミングを意図的に選んだ。9月は毎年新型iPhoneを発表するハードウェアイベントの月であり、ターナスをその舞台の主役にすることで、新CEOの顔を世界に売り出す狙いがある。今年のステージには、iPhone 18 Pro、iPhone 18 Pro Maxに加え、Apple初の折りたたみiPhoneが並ぶと見られている。
ターナスは初代iPadの製品設計を率いた人物。折りたたみiPhoneの「iPad的に開く内側ディスプレイ」というコンセプトは、彼のキャリアと深く結びついている。
折りたたみiPhoneについてガーマンが伝える方向性は明快だ。耐久性と性能、目立たないディスプレイの折り目、開いたときの横長の画面――この4点に開発リソースが集中している。後発参入である以上、「待ったかいがあった」と言わせるしかない、という設計思想が見える。
価格は2,000ドル超え、1ドル159円台の現在のレートで換算するとおよそ 32万円 。これまでのiPhoneラインの最高額を更新する見通しだ。Appleファンの財布にとっては優しくないが、平均販売単価を押し上げる効果は大きい。
折りたたみiPhoneの裏に控える「9つの新カテゴリー」
ターナスが引き継ぐのは折りたたみ機だけではない。Gurmanは、Apple社内で動いている9つの新製品カテゴリーの存在を伝えている。ターナス自身が社員向けタウンホールで「キャリアの中で最もエキサイティング」と表現したラインアップだ。
ここからが本題と言っていい。1製品ではなく、製品「カテゴリー」が9つ並ぶ。Apple Watch、AirPods、Vision Proという、クック時代の15年間に立ち上がった新カテゴリーが3つだったことを思えば、その密度の濃さがわかる。
スマートホームと家庭内デバイス群
筆頭は「スマートホームハブ」。画面付きのHomePod──壁掛けにも対応する──のような製品で、新しいOSを搭載してSiriやFaceTimeに対応するという。
そしてもう一つ、すでに複数回ガーマンが報じている「卓上ロボット」がある。9インチのディスプレイをロボットアームに取り付けたデバイスで、テレビ会議中に発話者を追って画面が動く、といった用途が想定されている。FaceTimeのために首を振る相棒、と言えばイメージしやすいか。
卓上ロボットの開発は秘匿性の高いプロジェクトとして進められてきた。ターナスはこの部門を2025年から直轄しており、新CEOが直接関わってきた製品が一気に表に出てくる構図になる。
家庭内ではさらに、RingやGoogle Nestと競合するホームセキュリティシステムも控える。スマートホーム3点セット──ハブ、ロボット、セキュリティ──が同時並行で動いているわけだ。
ウェアラブルとAI連動デバイス
身につける側のラインアップも厚い。
Metaのレイバン製スマートグラスと真っ向から競合する「スマートグラス」、カメラ付きAirPods、そして首からかける、あるいは服に留める「AIペンダント」と呼ばれる小型デバイス。いずれもカメラで周囲を撮影し、その情報をAIに送り込んで活用する設計になっている。
つまりAppleは、視覚情報を常時取り込めるデバイスを「眼」「耳」「胸元」の3点に分散して用意しようとしている。どれが当たるかわからないなら、全部出す。そういう戦略にも見える。
Macとタブレットの新しい姿
タッチスクリーン対応の高価格帯MacBookは2026年末から2027年初頭の登場見込みで、より薄型のOLED搭載機になるという。MacBookでタッチ操作を解禁する判断は、Apple内部で長年議論されてきたが、ようやく現実味を帯びてきた格好だ。
折りたたみiPadは20インチ級の大画面が想定されている一方、ガーマンは「Appleがリリースに踏み切るかは未定で、最終的にお蔵入りもありうる」と書いている。10カテゴリーすべてが市場に出るとは限らない、ということを彼自身が補足している点には注意がいる。
そして、iPhoneの後継となりうるARグラス。実世界に情報を重ねるディスプレイを内蔵した軽量モデルで、長期的にはiPhoneを置き換える可能性のあるデバイスとして位置づけられている。
クック時代との比較で見える「賭けの規模」
クックは2011年にスティーブ・ジョブズから引き継いで以降、15年間で3つの新カテゴリー(Apple Watch、AirPods、Vision Pro)を立ち上げた。慎重で、堅実で、しかし爆発力には欠けるという評価がついて回った。
ターナスが引き継ぐパイプラインは、5年程度で10カテゴリーが視野に入る規模だ。クック期は5年に1カテゴリーのペースだったとすれば、ターナス期は1年に2カテゴリー前後を投入する計算になる。
もちろん、計画されているからといって全部が市場に出るわけではない。折りたたみiPadのようにお蔵入り候補も含まれている。それでも、計画の規模そのものは、Appleが「慎重」一辺倒の姿勢から抜け出そうとしていることを示している。
ハードウェアエンジニアの感覚を持つCEOが、AIハードウェア、スマートホーム、折りたたみといった分野で「待ち」から「攻め」に転じられるか。ここがターナス時代の評価軸になりそうだ。
ユーザーにとっての意味――選択肢か、混乱か
10カテゴリーが本当に出揃ったとき、ユーザーの目線で見ると何が起きるか。
選択肢は確実に増える。ホームハブ、ロボット、AIペンダント、スマートグラス、ARグラス──同じ「AppleのAI体験」を、異なる形のデバイスで受け取れる。だが、これだけ並ぶと「自分はどれを買えばいいのか」がわかりにくくなるリスクもある。
クック期のApple製品ラインは、整理されている、という美点があった。iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、AirPods、Vision Pro。役割分担が明快だった。10カテゴリーが並んだとき、その明快さを維持できるかは、ターナスの腕の見せどころだ。
価格面でも、折りたたみiPhoneが2,000ドル超えという数字は重い。プレミアムラインは富裕層向け、ミドルクラスはiPhone 18 Proで、というように、価格帯ごとの色分けがこれまで以上に必要になる。
「One More Thing」を10回言える時代へ
ジョブズが製品発表会で使った決め台詞「One More Thing」は、Appleにとって新カテゴリー誕生の合図だった。クック期には数年に一度しか聞けなかったその言葉を、ターナス期には何度も繰り返すことになるかもしれない。
ただし、回数が増えるほど一回ごとの重みは試される。10カテゴリーすべてに「One More Thing」と言える熱量を込められるか、その中の何個がVision Proの轍を踏まずに踏みとどまれるか。9月1日、ターナスが舞台に上がった瞬間から、その答え合わせが始まる。
折りたたみiPhoneを開く動作で、Appleの次の時代も同時に開く。少なくともApple側はそう演出するつもりらしい。それが本当に時代の幕開けになるかは、開いた先の中身が決めることだ。
参照元
- Apple Japan - ティム・クック、エグゼクティブ・チェアマンに就任 ジョン・ターナス、CEOに就任
- Bloomberg - New Apple CEO John Ternus' First Major Product Is the Foldable iPhone