Windows 11は直るのか、2か月の進捗を公開

Microsoftが3月に掲げた「Windows 11を直す」公約から2か月、進捗報告が公開された。月1回の再起動化、Copilot削減、ウィジェット静音化など、ユーザー軽視と批判されてきた領域に手が入っている。

Windows 11は直るのか、2か月の進捗を公開

Microsoftが3月に掲げた「Windows 11を直す」公約から2か月、進捗報告が公開された。月1回の再起動化、Copilot削減、ウィジェット静音化など、ユーザー軽視と批判されてきた領域に手が入っている。


「直す」と言ってから60日、Microsoftが進捗を公開した

Microsoftが3月に発表した「Windows 11の品質改善コミットメント」は、長年積み上がったユーザーの不満に対する応答だった。ただ、約束は約束で、実装されなければ意味がない。

そして本日、Windows Insider Programのリードを兼任することになったマーカス・アッシュ(Marcus Ash)が、3月以降の2か月間で何が動いたかをまとめた進捗報告を公開した。Microsoft公式ブログでの発信で、内容は驚くほど具体的だ。強制機能の押し付けから、ユーザーが本来求めていた「静かさ」「制御」「速さ」へ。少なくとも方向性は、これまでの数年間とは明らかに違う。

ただ、ここで一つ立ち止まりたい。Microsoftが約束を「守ろうとしている」ことと、Windows 11が「本当に直る」ことは、必ずしもイコールではない。今回ロールアウトされた変更の大半は、Insiderプログラム内のExperimentalチャネル限定であり、一般ユーザーが恩恵を受けるのはこれから先になる。

私たちは出荷を通じて改善を見せたい。次の数か月、私たちはひたすらシッピングに集中する。

進捗報告でアッシュはそう書いている。これまで「方針」「ビジョン」を語ってきたMicrosoftが、「シッピング」という極めて具体的な動詞を選んだことに、姿勢の変化が現れている。

それでも、進捗の内容を一つずつ見ていくと、Microsoftが何を「悪かった」と認識しているかが浮かび上がってくる。


アップデートの暴走を止める、月1回の再起動という到達点

進捗の中で、もっとも多くのユーザーが歓迎しそうなのがWindowsアップデートの再設計だ。

Microsoft自身が認めている通り、これまでのWindowsは月3回の更新と再起動が当たり前で、作業中に「再起動が必要です」と告げられる体験は日常化していた。アッシュの報告によれば、新しい仕組みではOS、.NET、ドライバーの更新を統合し、月1回の再起動に集約する。電源メニューには「アップデートを保留したまま再起動/シャットダウンする」選択肢が常時表示され、「とにかく今は更新したくない」という意志が尊重される。

アップデートのタイミングはあなたが決める。逆ではない。

Microsoft公式ブログのこの一文は、ここ数年のWindowsを使ってきた人ほど重く響くはずだ。これまで散々、逆だったからだ。

さらに、アップデートは最大35日間の一時停止が可能で、35日経過後に再度停止することもできる。実質的な「無期限停止」が認められた格好で、Windows 10時代以来の柔軟性が戻ってきたことになる。OOBE(初回セットアップ)でアップデートをスキップしてデスクトップに直行できる選択肢も加わった。

これらは現時点でExperimentalチャネルでのみ利用可能だが、Microsoftは段階的な一般展開を予告している。


Copilotは「全方位押し付け」から「選別配置」へ

3月の品質コミットメントでもっとも象徴的だったのは、CopilotをWindows全体から削減するという宣言だった。アッシュの報告によれば、この方針はすでに実行段階に入っている。

具体的には、フォトアプリとSnipping Toolから「Copilotに質問」ボタンが完全削除された。メモ帳(Notepad)では、汎用的なCopilotロゴが「Writing Tools(ライティングツール)」というわかりやすいラベルに置き換わった。後者は実質的にはリブランディングに近いが、Copilotという言葉そのものに拒否反応を示すユーザーが増えていた現実への対応として、それなりに合理的だ。

Copilotがどこに表示されるかについて、私たちは引き続き慎重に判断していく。より厳選された体験を、より少ない場所に。

公式ブログでアッシュはそう書いている。気になるのは、この方針転換が「AI戦略の縮小」ではなく「AI配置の最適化」として位置づけられている点だ。Copilotを消すのではなく、価値を生む場所に絞る。Microsoftにとって生成AIはまだ最重要投資領域であり、ユーザーの離反を食い止めつつ、本当に使われる場所を探す段階に入ったということだろう。


エクスプローラーは「直す」と「直っている」のあいだにいる

Windows 11リリース以来、もっとも一貫して批判されてきた要素の一つがファイルエクスプローラーだ。Windows 10より遅く、ダークモードを入れたら白い点滅が出るようになり、スクロールはガクつく。Microsoft製OSの中核アプリが、サードパーティ製のFile Pilotより遅い、という事実は、PCに詳しいユーザーほど深い不満を抱える原因になってきた。

今回の進捗で、Microsoftは「基盤的なアーキテクチャ改善」を段階的にロールアウトしていると明言した。ダークモード切替時の白い点滅はInsider向けに修正済みで、5月のパッチチューズデーで全ユーザーに展開される予定だ。起動とナビゲーションも滑らかになり、サムネイルがシャープになった。

ただし、ここには注意が必要だ。エクスプローラーをFile Pilot並みに高速化するには、最終的にWinUI 3への完全な書き換えが必要になる。今回の改善は、その方向への一歩ではあるが、ゴールではない。Microsoft自身も、エクスプローラー内で滑らかな場所と滑らかでない場所が混在する現状を認識しており、地道な改修を続ける姿勢を示している。

直そうとしているのは間違いない。直ったと言えるのは、まだ少し先の話だ。


ウィジェットの静音化、収益とユーザー体験のトレードオフ

進捗報告でひっそりと、しかし重要な変更が含まれていたのがウィジェットだ。

タスクバー左端のウィジェットアイコンにマウスを乗せると自動展開していたMSNフィードが、初期設定で無効化される。赤いバッジ通知も、ロック画面の大量のウィジェット(クイズなど)も、デフォルトでは表示されなくなる。ロック画面に残るのは天気だけだ。

これは表面的には「静かになって嬉しい」変更だが、内部的にはMicrosoftにとって大きな決断だ。MSNフィードは広告収益に直結するチャネルであり、それを初期設定でオフにすることは、収益機会を自ら手放すことを意味する。3月の公約「Windowsを静かなOSにする」を本気で実行に移すなら、避けて通れない判断だった。

10億人のユーザー向けに体験を設計するとき、何が正しい初期値か。簡単で、シンプルで、邪魔にならない設定とは何か。

アッシュの問いかけは、Microsoftが過去数年で見失っていた視点そのものだ。MSNフィードの収益が短期的に減少することは確実だが、ユーザーがWindows 11を「自分のOS」と感じられない状態が続けば、長期的にはもっと大きなものを失う。今回の判断は、そのトレードオフをMicrosoftが正面から認めたサインとして読める。


メモリ効率化と応答性の改善

ハードウェア要件の高さと裏腹に、Windows 11が「重い」と感じられてきた問題にも手が入った。

ウィジェット周辺では、初期メモリ使用量の削減と、未使用時のメモリ解放速度の改善が入った。低メモリ端末では、ウィジェットのバックグラウンド先読み動作にも制限がかかる。スタートメニューや検索、通知センターといったシェル要素についても、3月中旬から段階的にチューニングが進められている。

技術的に興味深いのは、MicrosoftがWindowsスケジューラを更新してCPUの電源状態(C-states)の管理を改善したことだ。CPUが省電力状態から復帰する際の挙動を最適化することで、ユーザーが体感する「サクサク感」が向上する。これはInsiderだけでなく、すでに一般小売顧客にも展開され始めている。

RAM価格が高止まりする中、Microsoftが先日「Windows 11ゲーミングは32GBが安心ライン」と発言したことを思い出すと、メモリ効率化の方向性そのものは正しい。ただし、OSがメモリを食う前提で「もっと積めば解決する」と顧客に促してきた歴史がある以上、効率化の成果がベンチマーク上だけでなく、実際の体感として表れるかは見守る必要がある。


Insiderプログラム自体の刷新

ユーザーへの直接的な影響は少ないが、開発の入り口にあたるWindows Insider Programも整理された。

これまでCanary、Dev、Beta、Release Previewの4チャネルに分散していたものが、ExperimentalとBetaの2チャネルに集約された。Beta側では「Controlled Feature Rollouts(CFR)」が廃止され、アナウンスされた機能を更新で取得すれば確実に使えるようになる。Experimental側ではFeature Flagsが導入され、試したい機能を個別に選べる。

チャネル間の移動やInsiderからの離脱もクリーンインストール不要になった。Feedback Hubのウィンドウ動作も改善されている。これらは地味だが、開発と利用者のフィードバックループを健全化するための土台整備として意味がある。


約束を守ろうとしているのは確かだ。問題はその先にある

タスクバーのカスタマイズも「近日公開」と明言された。スタートメニューと検索の改善も、今月中にさらなる発表がある予定だ。Microsoft Buildが翌月に控えていることを考えると、開発者向けの大きな発表がそこに重ねられる可能性は高い。

率直に言って、3月から2か月間でこれだけの変更が動き出した事実は、評価していい。アップデートの月1回再起動化、CopilotのUI削減、ウィジェットの静音化、エクスプローラーの基盤改善。どれも、長年ユーザーが要求し続けて、Microsoftが応えてこなかった領域だ。

ただし、いくつか留保が必要だ。一つは、これらの変更の多くがまだExperimentalチャネル限定であり、一般展開のスケジュールは確定していないこと。もう一つは、過去にもMicrosoftが「ユーザーの声を聞く」と宣言した後、数年で再び別の機能を押し付け始めた前例があること。

そしてもう一つ、根本的な疑問がある。今回直そうとしているものの大半は、Microsoft自身が過去数年で「壊した」ものだ。直してくれるのはありがたいが、なぜ最初からこうしなかったのかという問いは残る。

それでも、方向は確実に変わっている。次の半年で、これがどこまで一般ユーザーに届くか。そこを見届けたい。


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