Windows 11に上げたら970 Evoが速度4分の1に
Windows 10から11へ上書きアップグレード後、Samsung 970 EvoのReadが896 MB/sまで落ちる事例が報告された。公称値の約4分の1だ。犯人はOS側ではなく、アップグレードが壊したドライバーの当たり方だった。
Windows 10から11へ上書きアップグレード後、Samsung 970 EvoのReadが896 MB/sまで落ちる事例が報告された。公称値の約4分の1だ。犯人はOS側ではなく、アップグレードが壊したドライバーの当たり方だった。
ベンチマークが叩き出した「おかしい」数字
Facebookのある自作PCグループに、あるユーザーが投稿した2枚のCrystalDiskMarkスクリーンショットから、この話は始まる。
1枚目は、SEQ1M Q8T1がRead 896.67 MB/s、Write 858.70 MB/s。
2枚目は、Read 3548.81 MB/s、Write 2467.23 MB/s。
同じSSD、同じテスト条件、同じマシンだ。

測定対象はSamsung 970 Evo、NVMe Gen3世代の主力SSDで、公称値はRead 3,500 MB/s、Write 2,500 MB/s(500GB以上のモデル、画像のC:容量465GiBから同クラスと判断)。2枚目のスコアはほぼ公称通りだが、1枚目は 公称の4分の1 にしか届いていない。投稿者のDabeedski Da Rozaski氏はシンプルな一文で状況を説明した。Windows 10から11にアップグレードしたら、こうなった。以前のWindows 10では必要なかったドライバーを入れ直したら、本来の速度に戻った。
数値を見て「誤差」だの「バックグラウンド処理」だのと言い訳する余地はない。4倍近い差は、ドライバー層で何かが壊れているとしか解釈できない。
「アップグレード」というOS挙動の地雷
ここで焦点になっているのは、Windows 11そのものの性能ではなく、上書きアップグレードというインストール方式の副作用だ。Windows 10から11への上書きは、既存のドライバースタック、レジストリのバインディング、サービスの登録状態をそのまま引き継ぐ仕組みで、新旧OSのカーネル差分とぶつかったときに、ドライバーが 載っているのに効いていない という状態を生む。
Samsungは970 Evoシリーズ向けに独自のNVMeドライバーを公式配布している。対象は970 PRO、970 EVO、970 EVO Plus、960 PRO、960 EVO、950 PRO。ただし公式の動作対象OSは表記上Windows 10までで、Windows 11は含まれていない。それでも現実にはWindows 11環境でインストールして動く、というのが各種フォーラムでの共通認識だ。
Windows 10で最大速度を出していたドライブが、OSアップグレード後に速度を失う。これはOS側の仕様変更ではなく、引き継ぎの壊れ方の問題だ。
投稿者も追記で、クリーンインストール後のWindows 11挙動は別途確認するつもりだと書いている。つまり、Windows 11そのものが970 Evoを遅くするわけではない。壊れているのはアップグレード経路だ。
似た報告はコメント欄に並ぶ
スレッドに付いたコメントは、この1件が単発の不運ではないことを示している。Crucial T700ユーザーは、ドライブ容量の20%を空けるパーティションを切っておかないと、埋め尽くしたあとに激しくスロットリングが起きると書き込んだ。別のユーザーはSamsung Magicianを入れれば何があっても大丈夫だと言い、また別のユーザーはSamsungドライバーを入れたことは一度もなく、970でもMSドライバーで4K Readが出ていると反論する。Samsung純正ドライバー信奉派と、Microsoft標準ドライバー信奉派の小競り合いは、ここ数年ずっと続いている。
面白いのは、970 Evoを「安物で、Adobeとウイルススキャンが同時に走っただけで膝を突く」と酷評するコメントもある一方で、別のユーザーは自分のCrystalDiskMark結果として Read 14030.81 MB/s という物理的にあり得ない数字のスクリーンショットを投稿している。Gen3世代のSSDでこの数値が出ることは原理的にない。計測の作法が浸透していないコミュニティの空気感までついでに可視化されている。
なぜ「ドライバー再適用」で直るのか
アップグレード直後の970 Evoが遅かった原因として、Windows側のStorNVMeとSamsung純正ドライバーのどちらが当たっているかを見るのが筋だ。Windows 11には標準のStorNVMeドライバーが入っており、これだけでも970 Evoは本来の速度を出すはずの設計になっている。それが今回出ていないということは、上書きアップグレードが ドライバーの当たり方 を壊したと考えるのが自然だ。
興味深い傍証がある。Microsoftは2025年末にWindows Server 2025向けに「Native NVMe」という新しいドライバーパス(nvmedisk.sys)を正式に投入し、レジストリ変更でWindows 11 25H2でも一時的に有効化できる状態にあった。2026年3月にMicrosoftはそのレジストリハックをブロックしたが、ViveTool経由や新しいレジストリIDでまだ回避が可能で、25H2/26H2サイクルでの公式ロールアウトも予告されている。MicrosoftはDiskSpd.exeの4Kランダム読み込みで最大 80%のIOPS向上 と45%少ないCPUサイクルという数字を公表している。つまりNVMe周りは今まさにOS側で大きく設計が動いている領域で、上書きアップグレードが絡むと挙動が安定しない時期でもある。
今のWindows 11は、NVMeドライバーのパスを複数持ち、設定次第でどれが効くかが変わる。上書きアップグレードはそこを素通りして古い設定を引きずる。
ランダムアクセスの数字(RND4K Q32T1の432.41→444.46、RND4K Q1T1の40.80→41.69)が1枚目と2枚目でほぼ動いていない点も示唆的だ。シーケンシャルだけが壊れていた。これは個人的な推測だが、SLCキャッシュを含むシーケンシャル経路の最適化レイヤーが、ドライバーバインディングの壊れで無効化されていた、と見るとつじつまが合う。
現実的な選択肢
では、同じ穴にはまりたくない者は何をすべきか。一つ目、Windows 11に上げるならクリーンインストール。時間はかかるが、ドライバースタックが素直な状態から始まるので、OSアップグレード起因の性能劣化は起きにくい。二つ目、上書きアップグレードを選んだら、直後にベンチマークを走らせる。遅くなっていたらベンダー純正のNVMeドライバーを入れる。970シリーズならSamsung公式。三つ目、SSDメーカーのユーティリティ(Samsung Magicianなど)でファームウェア更新状況を確認する。
アップグレードを完了した瞬間と、本来の性能が出ている瞬間は、違う時刻にある。ベンチマーク1回の手間を惜しむと、気づかないまま半分以下の速度で走るマシンを使い続けることになる。
アップグレードは押したその瞬間で終わりではない。動いているように見える状態と本来の速度のあいだには、ベンチマーク1回分の距離がある。
参照元
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