Windows Server過剰請求、英国で約4500億円訴訟が前進

競合クラウドでWindows Serverを使うと割高になる。その仕組みは競争を妨げているのか——英国の法廷が出した答えは、「まず裁判で決めよう」だった。

Windows Server過剰請求、英国で約4500億円訴訟が前進

競合クラウドWindows Serverを使うと割高になる。その仕組みは競争を妨げているのか——英国の法廷が出した答えは、「まず裁判で決めよう」だった。


AWSやGoogleで使うと高くなるWindowsの謎

英国の競争審判所(Competition Appeal Tribunal)は2026年4月22日(日本時間)、Microsoftに対する約6万社を原告とする集団訴訟について、正式に裁判へ進めることを認定した。

原告の競争法弁護士マリア・ルイザ・スタジ(Maria Luisa Stasi)博士が約6万社の英国企業を代表して申し立てているこの訴訟の核心は、「価格の二重構造」だ。請求額は最大で21億ポンド(約4500億円)とされる。

MicrosoftはAzure上でWindows Serverを使う場合よりも、AWSGoogle Cloud・Alibaba Cloudといった競合プラットフォームで使う場合に卸売価格を高く設定しているという。その差額はクラウドベンダーを通じてエンドユーザーに転嫁され、実質的にAzure以外の選択肢を割高にしているというのが原告側の主張だ。

Microsoftは何千もの組織の行動に影響を与えた。今回の裁判所の決定は、その組織たちにとって重要な局面だ。(スタジ博士の声明より意訳)

Microsoftは「損害額を算定する合理的な手法が示されていない」として却下を求めたが、競争審判所はこれを退けた。この時点では勝敗の判断は下されておらず、あくまで「裁判に値する」と認定されたに過ぎない。それでも原告にとっては早期の重要な前進だ。


「自社クラウドを優遇している」という構造問題

Microsoftの反論は興味深い。「Windows Serverをライバルにもライセンスする垂直統合モデルは、競争を促進しうる」というものだ。確かに、Microsoftが競合クラウドにWindowsを提供しているのは事実であり、完全に排除しているわけではない。

しかし原告側が問題にしているのは価格設計だ。Azureと他社クラウドで異なるコスト構造を設けることで、ユーザーがAzureに引き寄せられるよう仕向けているという見立てだ。これは利用者の自由な選択を形式的には保ちつつ、実質的には特定のプラットフォームに誘導する手法として、規制当局から繰り返し疑問を呈されてきた。

今回訴訟が前進したことでMicrosoftは控訴する方針を表明した。法廷の戦いはまだ序盤であり、最終的な損害賠償の有無はこれから争われる。


規制当局も動いている、三方向からの包囲

英国・欧州・米国:Microsoftクラウド規制の動向
🇬🇧 英国 🇪🇺 欧州 🇺🇸 米国
規制機関 競争・市場庁(CMA) 欧州委員会(EC) 連邦取引委員会(FTC)
調査種別 集団訴訟+SMS調査 競争法調査 クラウド・AI慣行調査
主な焦点 Windows Serverの
価格二重構造
ソフトウェアライセンス
慣行全般
クラウド・AIにおける
競争制限慣行
現在の状況 裁判認定・進行中 調査継続中 調査強化中
次のステップ CMA SMS調査
2026年5月開始予定
続報待ち 続報待ち
※ 欧州・米国の調査詳細はロイター(2026年4月21日)の記述に基づく。CMA SMS調査はThe Register(2026年3月31日)で確認。

この訴訟は単独の出来事ではない。英国・欧州・米国の規制当局が、それぞれ独自にMicrosoftのクラウド慣行を調査している。圧力は三方向から同時に加わっている。

英国の競争・市場庁(CMA:Competition and Markets Authority)は、2025年7月に「Microsoftのライセンス慣行がAWSとGoogleを実質的に不利な立場に追いやることでクラウド市場の競争を損なっている」との調査結果を公表した。Microsoftは当時、「クラウド市場は今ほど活発で競争的だったことはない」と反論している。

さらにCMAは2026年3月に、MicrosoftのビジネスソフトウェアエコシステムへのSMS(戦略的市場地位)調査を5月に開始すると発表した。

競争・市場庁は今後もMicrosoftの製品やサービスに関連する問題を審査し続ける。(Microsoftのブラッド・スミス社長の声明より意訳)
Microsoftクラウドライセンス問題:規制・訴訟の時系列
2023年
CMA調査開始
🇬🇧 英国 CMA
クラウドサービス市場調査を開始
英競争・市場庁がクラウド市場の競争状況について3年間の調査を開始。MicrosoftとAmazonが主な対象となる。
2025年
7月
🇬🇧 英国 CMA
CMAがMicrosoftのライセンス慣行を「競争阻害」と認定
調査グループがMicrosoftのライセンス慣行はAWSとGoogleを「実質的に不利な立場に置く」と報告書で認定。
2026年
3月31日
🇬🇧 英国 CMA
CMAがMicrosoftのSMS調査を5月に開始すると発表
戦略的市場地位(SMS)の指定調査を正式に予告。指定されれば、CMAはMicrosoftに対して強力な介入権限を持つことになる。
2026年
4月22日
🇬🇧 英国 競争審判所 ★今回
競争審判所が約6万社の集団訴訟を裁判へ進めると認定
Windows Serverの価格二重構造をめぐる約21億ポンド(約4500億円)規模の集団訴訟。競争審判所が「裁判に値する」と裁定。Microsoftは控訴を予告。
2026年
5月(予定)
🇬🇧 英国 CMA
SMS調査を正式開始(予定)
Microsoft 365・Teams・Copilot等を含むビジネスソフトウェアエコシステムを対象に、戦略的市場地位の審査が始まる。
※ 2023年の調査開始時期はロイター(2026年4月21日)の「3年間の調査」記述に基づく。2025年7月・2026年3月の情報はCMAの公式発表をThe Register等が報じた内容。日付はJST換算。将来の予定事項は白抜きの点で示す。

SMSに指定された場合、CMAはMicrosoftの行動を規制する強力な介入権限を持つことになる。訴訟と規制調査が同時進行するという、かつてない圧力がMicrosoftにかかりつつある状況だ。


6万社が問う、「普通の選択」の権利

この訴訟が持つ意味を具体的に考えてみたい。

約6万社とは、中小企業から大企業まで、クラウドを日常的に使っている英国企業の一端だ。その企業たちは、コスト最適化やベンダー分散などの理由でAWSやGoogle Cloudを選んでいる。それ自体は至極合理的な経営判断だ。しかしそこにWindowsの使用が絡んだ瞬間、構造的な割高が生じる——それが事実なら、「Microsoftのエコシステム外に出る自由」にはコストが課されていたことになる。

Microsoftは自社モデルが競争を促進すると主張する。それが本当なら、裁判を通じて証明できるはずだ。裁判所がその舞台を用意した今、双方の主張がどこまで実証できるかが問われる。

約4500億円という金額も、今後の法廷での算定方法次第で大きく変動しうる。今回の認定はあくまで入口であり、本番はここからだ。


参照元

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