Xbox次世代機、歴代全タイトル対応を構想。パブリッシャーに「参加」を要請
7月22日に始まったPC向け後方互換は、25年分のXboxライブラリーを1つの機器に集約する計画の序章だった。
7月22日に始まったPC向け後方互換は、25年分のXboxライブラリーを1つの機器に集約する計画の序章だった。
4本の旧作が示した方向
7月22日、Microsoftは初代Xboxの4タイトルをWindows PCとROG Xbox Ally向けに配信開始した。『BLiNX: The Time Sweeper』『Conker: Live & Reloaded』『Crimson Skies: High Road to Revenge』『Fuzion Frenzy』。2001年のタイトルが、25年を経てPCで動く。
Microsoftは公式に「過去のXboxタイトルをPCへ展開していく、より大きな取り組みの第一歩」と位置づけた。
その「大きな取り組み」の全容が、2週間後に漏れた。The Vergeが入手したリークメモには、次世代Xbox「Project Helix」で初代Xbox、Xbox 360、Xbox One、Xbox Seriesの全世代にわたる後方互換を実現する計画が記されていた。
パブリッシャーへの営業資料
メモの宛先はパブリッシャーだ。内容は2つのプログラムに分かれる。
Program 01は「Disc-to-Digital」(ディスクのデジタル変換)と呼ばれる仕組みで、Xbox OneやXbox Seriesのディスクを本体に挿入すると、デジタルライセンスがアカウントに紐づく。パブリッシャーの許可は個別には要らない。
7月にベータ版を予定していたが遅延しており、一般提供は8月を目標としていた。
Program 02は初代XboxとXbox 360タイトルの再展開だ。こちらはパブリッシャーごとのオプトイン(参加同意)が必要になる。
Microsoftが技術的な作業の一切を引き受ける。エミュレーター開発、タイトルごとの認証とテスト、ストアへの掲載、プレイヤーサポート。すべてMicrosoft側が担うとメモに記されている。
パブリッシャーが保持するのは権利、価格設定、ブランド管理で、Game Passへの提供判断もパブリッシャーに委ねられる。
メモの訴求はさらに続く。「2006年のゲームではなく2026年のゲームのように振る舞う」「クラウドセーブに対応し、どのデバイスでもプレイを引き継げる」。Microsoftはパブリッシャーに利点を並べて見せている。
エミュレーターは準備できている
技術面で興味深いのは、7月22日に配信された4タイトルの中身だ。
有志の解析者が配信直後にファイル構造を調べた結果、これらの初代XboxタイトルはXbox 360エミュレーターの上で動いていた。
Microsoftの社内エミュレーター「XeO3」(別名Fission)がPC上でXbox 360環境を再現する。その中で、Xbox 360用の初代Xboxエミュレーター「XeFu」が走る。エミュレーターの中にエミュレーターが入っている二重構造だ。
XeO3はXbox OneやXbox Series本体で後方互換を実現してきた実績があり、それがPC向けにネイティブ移植されたことになる。
その後、コミュニティーの開発者がこのエミュレーターを使い、公式未対応のXbox 360タイトルを非公式に起動させてもいる。動作の安定度はタイトルごとに異なるが、Xbox 360のPCエミュレーションは技術的に機能し始めている。
リークメモのロードマップはこの流れと整合する。初代Xboxタイトルのフル展開を2026年10月に予定し、Xbox 360タイトルは2027年から2028年にかけて段階的に追加するとされている。
2026年7月 PC後方互換4タイトルを配信開始 BLiNX、Conker等4本。Game Pass全プランに含まれる 2026年7月 Xbox 360エミュレーターの存在が判明 配信パッケージにXeO3が内蔵されていた 2026年8月 Disc-to-Digital一般提供(目標) Xbox One/Seriesのディスクをデジタルライセンスに変換。 7月のベータは遅延中 2026年10月 初代Xboxタイトルのフル展開 リークメモに記載。パブリッシャーの参加同意が必要 2027-28年 Xbox 360タイトルの段階的追加 リークメモに記載。パブリッシャーの参加同意が必要 |
決めるのはパブリッシャー
ここまで読むと「ついに全世代のXboxゲームが1台で遊べる」と期待したくなる。だが最大の障壁は技術ではない。
前回のXbox 360後方互換プログラムでは、全2155タイトルのうち632本(約29%)しか対応できなかった。ライセンスの壁が大きい。
レースゲームに登場する車種、スポーツゲームの選手名や放映権、音楽の使用権。これらの権利契約は期限つきのものが多く、契約が切れたタイトルは再販売が法的にできない。
Microsoft自身のタイトルですら例外ではない。『Forza』シリーズの過去作は、自動車メーカーとのライセンス契約満了に伴い販売終了している。
Microsoftがエミュレーター開発や認証テストの負担をすべて肩代わりしても、パブリッシャーが首を縦に振らなければゲームは戻ってこない。メモが「営業資料」として書かれている理由がここにある。
ディスクが消える時代に
この動きには、もう一つの文脈がある。
SIEは7月1日、2028年1月以降に発売するPlayStation向け新作ゲームのディスク版生産を終了すると発表した。PS5のダウンロード版販売比率は78%に達しており、数字が物理メディアの退潮を裏づけていた。
一方、Microsoftも次世代機Project Helixにディスクドライブを搭載するかどうかを決めていない。仮にディスクレスで発売されるなら、Disc-to-Digitalプログラムは現行機でディスクを変換しておく最後の機会になる。
ソニーがディスクを先に捨て、Microsoftがディスクの「変換」を試みている。方向は違うが、どちらも物理メディアの終わりを前提にした施策だ。
Xboxの25年分のライブラリーが1台に集まるかどうかは、エミュレーターの出来ではなく、パブリッシャーのビジネス判断にかかっている。技術は準備できた。あとは、過去のゲームにもう一度値段をつける意思が、業界にあるかどうか。