マイクロソフト、AIトークンに部門予算を導入。「使いすぎるな」と全社に通達

AIを全社に広めたかった会社が、使いすぎにブレーキを踏み始めた。GitHub CopilotとAzure AI Foundryを統括する責任者が全社員に送ったメールの中身。

マイクロソフト、AIトークンに部門予算を導入。「使いすぎるな」と全社に通達
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AIを全社に広めたかった会社が、使いすぎにブレーキを踏み始めた。GitHub CopilotとAzure AI Foundryを統括する責任者が全社員に送ったメールの中身。


AIプラットフォームを束ねる本人が

マイクロソフトのジェイ・パリク(Jay Parikh)上級副社長が、全社員に向けた社内メールで「トークンマキシングは我々が最適化しようとしているものではない」と述べたという。

パリク氏はCoreAI – Platform and Toolsを率いている。GitHub Copilot、Azure AI Foundry、VS Codeの統合AI機能など、マイクロソフトのAI開発基盤をまとめて管轄する部門だ。社外にAIツールを売り、社内のエンジニアにもAIを使わせる仕組みの両方を担っている。

そのパリク氏が、トークン消費を成果の指標にするなと明言した。

メールによれば、2026年7月から各部門に「AIトークン予算目標」が設定された。エンジニアは個人のAI支出を社内ダッシュボードで追跡できるようになっている。具体的な目標額は開示されていないが、社内ガイドラインには「多くのエンジニアが月に数百ドルから数千ドルのトークンを消費している」と記されているという。

5月のClaude Code解約に続く動き

マイクロソフトがAI消費の締め付けに動いたのは今回が初めてではない。

2025年12月、同社はExperiences + Devices部門(Windows、Microsoft 365、Outlook、Teams、Surfaceを担当)のエンジニア数千人にAnthropicのClaude Codeを開放した。ところがClaude Codeは社内で急速に浸透し、GitHub Copilot CLIよりも支持を集めたとされる。エンジニアが選んだのは自社製品ではなかった。

結果、2026年5月にマイクロソフトは同部門のClaude Codeライセンスの大半を解約し、6月末までにGitHub Copilot CLIへの移行を指示した。公式の理由は「ツールの統合」だったが、会計年度末と重なる時期は偶然ではないだろう。

今回のパリク氏のメールは、その延長線上にある。Claude Codeの解約が特定部門の措置だったのに対し、トークン予算は全社に及ぶ

減らすのではなく、1トークンの密度を上げる

パリク氏はメールの中で、マイクロソフトが「AIファースト」企業であり続けることを強調しているという。目指しているのはトークン消費の総量削減ではない。

Tokenmaxxing is not what we are optimizing for. I want all of us focused on maximizing outcomes that move the needle for our customers and our business.

トークンをどれだけ消費したかではなく、顧客とビジネスに実際の変化をもたらす成果を追え、という趣旨だ。

社内の標準モデルも、より安価なOpenAIのGPT-5.6に切り替えられた。GPT-5.6は2026年7月9日に一般公開されたモデルファミリーで、Sol(最上位)、Terra(中位)、Luna(低価格)の3段階がある。社内利用の標準設定がどの段階かは明らかにされていないが、コスト抑制が狙いであれば上位モデルではないだろう。

GitHub Copilotもまた、2026年6月1日から従量制課金に移行している。従来の定額制(プレミアムリクエスト単位)を廃止し、トークン消費量に連動する「AI Credits」に置き換えた。1クレジット=0.01ドル。エージェント型ワークフローがトークンを大量に消費する現実に、課金モデルが追いついた形だ。

マイクロソフト社内AI消費管理の経緯
2025年12月
Claude Codeを社内数千人に開放
Experiences + Devices部門のエンジニアが対象
2026年5月
Claude Codeライセンスの大半を解約
6月末までにGitHub Copilot CLIへ移行指示
2026年6月
GitHub Copilotが従量制課金に移行
トークン消費量に連動するAI Creditsに移行
2026年7月
GPT-5.6を社内標準モデルに指定
部門ごとのトークン予算と個人支出の管理画面を導入

パリク氏は「トークンを減らすのではなく、1トークンあたりの成果を増やす」ことが目標だと述べている。

業界が同じ壁に当たっている

この転換は業界全体で起きている。

Uberは2026年4月の時点で年間のAIコーディング予算を使い果たし、エンジニア1人あたり月1500ドルの上限を設けた。同社COOはClaude Codeをどれだけ使っても消費者向け機能の改善に「まだ明確なつながりが見えない」と認めている。

Metaでは社員が「Claudeonomics」と呼ばれる社内リーダーボードで消費量を競い合い、トップユーザーが月に約2800億トークンを使っていた。全社で30日間に約60兆トークン。リーダーボードはデータ流出のリスクを理由に数日で撤去されたが、消費量を競うこと自体が問題だった。

Amazon、AT&T、Adobe、Atlassian、Citiもそれぞれの形でAI利用に上限や制限を設けている。

404 Mediaの取材に応じた匿名のマイクロソフト社員は、こう語っている。

AI基盤を運営する我々自身が自社のAI製品のコストを賄えないなら、我々がそれを売っている企業はどうやって管理できるのか

2022年以降、トークンの単価は約98%下落した。しかしエージェント型ツールは1回の操作で従来の何倍ものトークンを消費する。単価が下がっても請求額は3倍に膨らんだ、というのが各社の実感だ。

AIの価値を測る指標が「どれだけ使ったか」から「何を生み出したか」に変わりつつある。トークンが安くなればなるほど、使い方が問われる。

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