ソニー、PlayStation内に広告部門を新設。世界4拠点で求人

ディスク廃止の次は広告。ゲーム開発費の高騰が、プレイヤーではなく広告主に請求書を回す構造を生み出そうとしている。

ソニー、PlayStation内に広告部門を新設。世界4拠点で求人
Sony

ディスク廃止の次は広告。ゲーム開発費の高騰が、プレイヤーではなく広告主に請求書を回す構造を生み出そうとしている。


求人が語る組織図

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、PlayStationの広告事業を担う専門組織の構築を進めている。

Digidayが報じたところによると、SIEのMedia Solutions部門で広告関連の求人が少なくとも4件確認されている。

もっとも目立つのは、2026年7月中旬に掲載されたクライアントパートナーシップのグローバルディレクター職だ。PlayStationの全世界の広告戦略を統括するポジションで、FAST(広告付き無料配信)やCTV(コネクテッドTV)を含む広告商品が守備範囲に入る。

もう1つは、サンマテオ本社に置かれた広告運用・技術担当のディレクター職で、広告配信、ターゲティング、測定、プライバシー対応データの活用を受け持つ。このポジションは米国・英国・日本にまたがるチームを統括するとされており、地域実験の規模ではない。

ロンドンでも広告運用職の求人が出ていた。求人にはPlayStationの「新設された広告組織」と書かれていたが、8月3日までに取り下げられている。

東京でもクライアントパートナー職の求人が7月中旬から下旬にかけて掲載され、現在も掲載中だ。こちらは営業寄りのポジションで、ブランドとPlayStationのユーザーをつなぐ役割を担う。

SIEは取材に応じていない。

ソニーにとって4度目の挑戦

PlayStationに広告を持ち込もうとする試みは、これが初めてではない。

2008年、ソニーはPS3で動的なゲーム内広告を導入した。同じ年にPlayStation Homeを立ち上げ、仮想空間にブランドの出店を受け入れた。

2022年には、ソニーがゲーム内に広告を直接挿入するシステムを18か月かけて開発しているとBloombergが報じた。年内にプライベートマーケットプレイスを立ち上げる計画だったとされるが、実現しなかった。

3度の試みはいずれも、持続的な広告事業には育たなかった。

今回は単発の機能やサービスではない。営業・技術・運用をグローバル規模で備えた組織そのものを作ろうとしている。

ゲーム広告に動く3社

EAは2026年6月、EA Advertisingを発表した。自社のゲームエンジンFrostbiteに広告配信の基盤を組み込み、Madden NFLやEA Sports FCといったスポーツゲームのスタジアムにデジタル看板やスコアボード広告を流す仕組みだ。Visa、Red Bull、Mountain Dewなどが初期の提携企業に名を連ねている。

EAの広告担当副社長アレックス・ダオ(Alex Dao)氏は、従来のやり方がゲームごと・スタジオごとの個別対応で拡張性がなかったと説明している。EA Advertisingはそれを一元化するための基盤だという。

Microsoftも2026年7月23日、広告付きクラウドゲーミングの無料ティアをXbox Insiderプログラムでテスト開始した。ゲーム開始前に約2分の広告を視聴すれば、1時間のセッションで所有タイトルをストリーミングできる。Game Passとは別枠で、定額課金は不要だ。

Xboxはこの広告ティアのテストを2025年10月から社内で進めていた。

3社が広告に向かっている。だがやり方は三者三様だ。EAは自社ゲーム内の広告面を売る。Xboxは広告をゲームへのアクセス料金の代わりにする。

ソニーはまだ具体的な商品を見せていないが、求人の内容から読み取れるのは、EAやXbox以上に広告事業を独立した収益部門として設計しようとしていることだ。

ゲーム開発費が押し上げる構造

なぜ今なのか。

調査会社eMarketerのジェイコブ・ボーン(Jacob Bourne)氏は、ゲームの利用時間と広告費の隔たりを指摘する。

ゲームがSNS動画とほぼ同じ利用時間を占めているにもかかわらず、1分あたりの広告収入はおよそ10分の1にとどまる。2026年の米国デジタル広告支出に占めるゲームの割合はわずか2.4%だ。

ボーン氏はこの数字を「機会」と呼ぶ。

開発コストの高騰は業界全体の問題になっている。

Xboxは7月に3,200人の人員削減を発表し、CEOのアシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏は25年の歴史で最大規模の組織再編だと述べた。EAはゲーム価格の引き上げを見送り続けている。ソニーは7月に2028年1月以降の新作ゲームについてディスク版の生産終了を発表し、デジタル移行を加速させた。

価格を上げるか、コストを下げるか、別の収入源を見つけるか。3つ目に広告がある。

ゲーマーは広告を受け入れるのか

プレイヤーがそれを受け入れるかどうかが残る。

EAは2020年、UFC 4に全画面広告を挿入して激しい反発を受け、広告を撤去した経緯がある。今回のEA Advertisingはスタジアムの看板やスコアボードに限り、現実のスポーツ中継にもある広告枠で体験を壊さないと強調している。

ゲーム広告参入の時系列
2008年
ソニー、PS3でゲーム内広告を開始
動的広告とPlayStation Homeの2施策を同時展開
2020年
EA、UFC 4の全画面広告を撤去
発売後に挿入した広告がプレイヤーの反発を招く
2022年
ソニー、ゲーム内広告システムを開発中と報じられる
18か月の開発。年内の立ち上げ計画は実現せず
2025年10月
Xbox、広告付き無料配信を社内テスト
Game Passとは別枠の広告モデルを検証
2026年6月
EA Advertising発表
スタジアム看板・スコアボード等のゲーム内広告基盤
2026年7月
Xbox、広告付き無料配信を公開テスト
開始前2分の広告視聴で1時間の無料配信
2026年7月
SIE、世界4拠点で広告部門の求人開始
グローバルディレクター、広告運用、営業職を募集
※ソニーの2008年と2022年の試みはいずれも持続せず。今回が4度目の広告事業参入

Xboxの広告ティアは、ゲームプレイ中に広告が割り込むものではない。プレイ開始前の2分間だけだ。既存のGame Pass加入者には一切影響しない。

ゲーム広告3社の比較
EAXboxソニー
広告の仕組み
方式ゲーム内の看板・
スコアボード
開始前に
2分間の広告
非公開
対象タイトルMadden NFL
EA Sports FC等
所有タイトル全般非公開
既存会員への影響なしなし非公開
進捗
発表時期2026年6月2026年7月未発表
現在の状態提供開始済み招待制テスト中求人段階
過去の経緯UFC 4広告で
反発、撤去(2020年)
2025年10月から
社内テスト
PS3広告等
3回の試行
いずれも終了
※ソニーの広告形式・対象タイトルは求人情報からは特定できない

ソニーがどのような形で広告を導入するかは、まだわからない。求人には「統合型の広告商品」を推進するとの記述がある。それがゲーム内の看板なのか、メニュー画面の広告なのか、無料ティアなのかは不明だ。

ディスクを捨て、広告を入れる。ソニーがプレイヤーから何を奪い、何を差し出すのか。その答えはまだ求人票の向こう側にある。

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