AMD RDNA 4m、Mesaドライバにマージ。ソフトウェア全層を貫通
AMDの未発表APU向けiGPU「RDNA 4m」が、Linuxの描画ドライバにまで到達した。現行iGPUではFSR 4.1の対応が不透明な中、FP8命令をネイティブで扱えるRDNA 4mへの期待が高まっている。
AMDの未発表APU向けiGPU「RDNA 4m」が、Linuxの描画ドライバにまで到達した。現行iGPUではFSR 4.1の対応が不透明な中、FP8命令をネイティブで扱えるRDNA 4mへの期待が高まっている。
Mesaにチップ識別子が入った意味
AMDのRDNA 4mファミリーに属するGPUターゲットGFX1171が、オープンソースのグラフィックスドライバMesa 26.3にマージされた。対象はVulkanドライバのRADVと、OpenGLドライバのRadeonSI。
変更の内容は、チップ識別子の追加だけだ。GFX1171のドライバコードはGFX1170と共通で、そのGFX1170もRDNA 3.5の統合グラフィックス(GFX115x)をそのまま踏襲している。新しいシェーダコンパイラも、ディスプレイブロックの刷新もない。
コンパイラからドライバまで
LinuxでGPUを動かすには、ソフトウェアを3つの層に通す必要がある。プログラムをGPU向けに変換するコンパイラ(LLVM)、OSの中核であるカーネルドライバ(AMDGPU)、そして実際の描画を担うユーザースペースドライバ(Mesa)。3つが揃って初めて、GPUとして機能する。
RDNA 4mの最初のターゲットGFX1170は、2月にLLVMへ登録され、続いてカーネルドライバに追加された。Mesaへの対応は4月。GFX1171はそこから約4ヶ月遅れで同じ工程を踏み、今回のマージでMesaまで到達した。3月にLLVM、その後カーネル、そして8月にMesaという順序だ。
3つ目のGFX1172は、LLVMとカーネルには入っているが、Mesaにはまだ追加されていない。
この時間差が示唆するのは、3つのターゲットが同時に製品化されるのではなく、GFX1170を先頭に順次投入される可能性だ。AMDが実機の準備を待ってからMesaのコードを入れている、とPhoronixのマイケル・ラーベル(Michael Larabel)は指摘する。Mesa 26.3は第4四半期にリリースされる予定で、2027年初頭の投入が見込まれるMedusa Pointの時点では、主要なLinuxディストリビューションへ対応が行き渡っている計算になる。
FSR 4.1がスキップした場所
RDNA 4mはGFX11系(RDNA 3世代)に属しながら「RDNA 4m」を名乗る中間的な存在だ。FP8やWMMAといったRDNA 4由来の命令セットが選択的に移植されており、最大の狙いはFSR 4のネイティブサポートにあるとみられていた。
あれから半年で、状況は動いた。
5月、AMDはFSR 4.1をRDNA 3(RX 7000シリーズ)に7月から提供すると発表し、実際には6月にドライバが公開された。RDNA 2(RX 6000シリーズ)にも2027年に対応する予定だ。FP8命令がないRDNA 3では、代わりにINT8処理で動作させている。
ところが、そのロードマップからRDNA 3.5の統合グラフィックスが抜け落ちていた。6月、AMDのRyzen担当VP兼GMであるデイヴィッド・マカフィー(David McAfee)氏は、RDNA 3.5搭載のiGPUへのFSR 4.1対応は「当面予定していない」と述べた。Radeon 890MやRadeon 880Mといった、現行のRyzen AI 300/400シリーズに搭載されている統合グラフィックスが対象外になるという内容だった。
この報道に対して、AMDのフランク・アゾール(Frank Azor)氏は「そのような決定は行われていない」と否定。その後6月下旬にはジャック・フィン(Jack Huynh)氏が、RDNA 3 APU向けにも軽量なMLモデルを開発中だと示唆した。最終的な結論は出ていない。
2026年2月 GFX1170がLLVMに登録 RDNA 4mの最初のGPUターゲット 2026年3月 GFX1171/1172がLLVMに追加 LLVMコンパイラに2つ目と3つ目を追加 2026年4月 GFX1170がMesaにマージ ドライバスタックの最終層に到達 2026年5月 FSR 4.1のRDNA 3対応を発表 RDNA 3はINT8処理で対応。RDNA 2は2027年 2026年6月 RDNA 3.5 iGPUのFSR 4.1対応が論争に 幹部間で方針が割れる。軽量ML開発中とも 2026年8月 GFX1171がMesaにマージ ソフトウェアスタック全層を通過 |
だが背景にある技術的制約は消えない。ディスクリートGPUと違い、統合グラフィックスは演算ユニットが少なく電力も限られる。FSR 4.1の処理負荷が、画質向上の恩恵を相殺しかねない。仮に対応されたとしても、FP8をネイティブで扱えるRDNA 4mと、INT8やエミュレーションに頼るRDNA 3.5では、品質と性能の差は避けられない。
RDNA 4mの存在意義は、この差の中にある。
「RDNA 4m」が担う3年
AMDはRDNA 3.5のiGPUを2029年まで使い続ける方針だとされている。メインストリームAPUのiGPUはしばらく変わらない。その間、Medusa PointのようなプレミアムAPUにだけRDNA 4mが載り、上位のMedusa HaloにはRDNA 5が投入される。
iGPUの世代が2層に分かれる構造だ。RDNA 3.5のiGPUではFSR 4.1の対応がまだ見通せず、RDNA 4mはFP8のネイティブサポートで差別化する。GFX1170、GFX1171、GFX1172という3つのターゲットが意味するのは、この差別化がMedusa Pointだけでなく複数の製品に広がる可能性だろう。
Mesaへのマージは、ソフトウェアスタックの最終層が通過したという事実に過ぎない。だがLinuxのオープンソースドライバは、AMDの製品パイプラインを映す鏡でもある。
GFX1171が3つの層すべてを通り抜けた。残る未知数はシリコンの出来と、FSR 4がAPUの限られたリソースの中でどれだけの画を見せるかだ。
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