岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
EUがAWSとAzureをDMAゲートキーパーに指定へ

クラウド

EUがAWSとAzureをDMAゲートキーパーに指定へ

欧州委員会は2026年6月25日、アマゾンのAmazon Web Services(AWS)とマイクロソフトのAzureをデジタル市場法(DMA)の「ゲートキーパー」に指定する方向の予備的見解をそれぞれに通知した。両社はこれに対して回答する機会があるが、最終指定が確定すれば6か月以内にDMAの義務を遵守しなければならない。 数値基準の外側から踏み込んだ DMAでは、EUでの月間ユーザー数4,500万人以上、年間売上高75億ユーロ超などの数値基準を満たした企業を「ゲートキーパー」として指定し、競争上の義務を課す仕組みになっている。 ところが欧州委員会は今回の予備的見解の中で、両社がその数値基準を満たしていないことを自ら認定している。DMAには、数値基準に届かなくても市場への影響が大きければ指定できる「市場調査」という条項が別途設けられており、委員会はその条項を適用した。 2025年11月の正式調査開始から7か月。委員会は、AWSとAzureがEUのクラウド市場で最大手と2番手の位置を占め、企業とその顧客の間の重要な入口として機能していると認定した。両社は大きなユーザーベースを持

Windows 10延長サポート、1年追加で2027年10月まで

Windows

Windows 10延長サポート、1年追加で2027年10月まで

Microsoftが個人向けWindows 10拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)の提供期間を、当初の2026年10月13日から2027年10月12日へ1年延長した。正式な発表はなく、公式ドキュメントの書き換えで判明した。 公式ページの書き換えで発覚 Microsoftは現地時間6月25日、Windows 10のESUに関する公式サポートページと、Windows Experience Blogの過去記事を更新した。個人向けESUの終了日が「2026年10月13日」から「2027年10月12日」に書き換わっている。 プレスリリースもブログ記事の新規投稿もない。Windows Experience Blogに追記されたのは「Editor's note」だけだ。そこには「個人向けデバイスのESUプログラムを1年追加で提供する。顧客がWindows 11 PCへ移行するための時間をさらに確保する」と記されている。ESUの対象は数億台規模のPCだ。それだけの影響がある変更を、ドキュメントの書き換えだけで済ませている。 登録済みユーザーは何もしなくていい すでにESUに登録して

Xbox、全モデル100~150ドルの値上げへ。2TBは販売終了

Xbox

Xbox、全モデル100~150ドルの値上げへ。2TBは販売終了

Microsoftが6月25日(米国時間)、Xbox Series X|Sの全モデルを2026年8月1日から値上げすると発表した。512GBモデルは100ドル、1TBモデルは150ドルの上乗せ。2TBモデルは販売を終了する。米国では2年足らずで3度目の値上げとなり、最も安いSeries Sが発売時のSeries Xと同じ499.99ドルになる。 メモリ価格2.5倍、さらに倍増の予測 Microsoftは値上げの理由を明確に述べている。ストレージとメモリの部品コストが前回の値上げ(2025年10月)から2.5倍以上に跳ね上がり、2027年秋にはさらに倍になる見通しだという。 背景にあるのはAIデータセンターへの需要集中だ。マイクロン(Micron)、SKハイニックス(SK hynix)など大手メモリメーカーは、生産能力の多くをAIインフラ向けのHBM(広帯域メモリ)に振り向けている。スマートフォンやPC、ゲーム機に使われる汎用DRAMやNANDフラッシュの供給が圧迫され、価格が急騰した。同じ6月25日にAppleもMac・iPadの大幅値上げを実施しており、メモリ高騰はゲーム機だ

Apple製品一斉値上げ。日本は円安で二重の負担

Apple

Apple製品一斉値上げ。日本は円安で二重の負担

Appleが6月25日、Mac・iPad・HomePod・Apple TV・Vision Proの販売価格を世界同時に引き上げた。iPhone・Apple Watch・AirPodsは据え置き。日本ではドル建ての製品値上げに加え、円安による為替調整が重なり、米国を上回る値上げ幅になっている。 何がいくら上がったか Macは全ラインナップが対象になった。 MacBook Neoは9万9800円から11万9800円へ2万円の値上げ。今年3月の発売時、10万円を切る最新Macとして注目された製品が、わずか3カ月で2割高くなった。米国での値上げは100ドルだが、日本では円安調整分が上乗せされている。 MacBook Airは18万4800円から22万4800円へ4万円増。MacBook Proは33万9800円からで、約6万円上がった。最大の値上げ幅はMac Studioで、32万8800円から41万9800円へ9万1000円の引き上げになっている。 iMacは19万8800円から24万9800円へ5万1000円増。Mac miniは5月に256GBモデルを廃止して512GBモデル

SteamのAI開示は「緋文字」。Epic CEOの批判とその死角

ゲーム業界

SteamのAI開示は「緋文字」。Epic CEOの批判とその死角

Unreal Fest 2026のインタビューで、ティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏はValveのAI開示制度を正面から攻撃した。開発者を萎縮させる「緋文字」だと。だがEpic自身はUnreal Engine 6にAI機能を深く組み込んでいる。開発者の自由を訴えるCEOの論理と、データが見せる現実。そのずれを追った。 「緋文字」発言の中身 Unreal Fest 2026シカゴでの基調講演を終えたスウィーニー氏は、インタビューでSteamのAI使用開示制度を「無責任」と断じた。ゲームをできるだけ広く知らしめたければSteamに出すしかない、だがSteamに出せば「AIの緋文字」(Scarlet Letter of AI)がつき、「ゲームを潰そうとするヘイターコミュニティ」に晒される。Valveがそれを強制するのは、開発者の成功を著しく困難にする行為だ、と。 発言の背景にはUnreal Engine 6の戦略がある。UE6はClaudeやGeminiとの接続機能を備え、プロンプトからのアセット生成やシーン構築を可能にする。デモでは、テキスト入力で仮想の部屋に家具を配

IBM、0.7nm「ナノスタック」チップを発表。量産は5年後

テクノロジー

IBM、0.7nm「ナノスタック」チップを発表。量産は5年後

2021年に世界初の2nmチップを試作したIBMが、再び「世界初」を出した。0.7nm(7オングストローム)ノードのチップ技術を発表し、爪の大きさのチップに約1000億個のトランジスタを収めた。2nmチップの約500億個からほぼ倍増。性能は2nm比で最大50%向上、あるいは消費電力を70%削減できるとしている。 ナノスタックという3次元設計 今回のチップを支えるのが「ナノスタック」と呼ばれる新しいトランジスタ構造だ。IBMが2017年に開発したナノシートGAAトランジスタは、現在の最先端プロセスの基礎になっている。ナノスタックは、このナノシートをさらに垂直方向に積み重ねる。 従来、n型とp型のトランジスタは横並びで配置されていた。ナノスタックではこの2種類を上下に分離し、交互にずらした配置(スタガード配列)で積む。2枚のウェハーを超薄型の誘電体ボンディング層で接合する構造で、上下の層に異なる材料を使える。n型・p型それぞれの特性を独立に最適化できるうえ、横に並べていた部品を縦に収めるためトランジスタ密度も上がる。 IBMリサーチのディレクターでIBMフェローのジェイ・ガンベッ

400の地方紙がOpenAIとMicrosoftを提訴。記事を無断でAI学習に利用

AI

400の地方紙がOpenAIとMicrosoftを提訴。記事を無断でAI学習に利用

アメリカの地方紙や地域紙を発行する出版社の連合体が、OpenAIとMicrosoftをニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提訴した。原告は400近い新聞を発行する出版社の連合で、地方紙がAI企業を訴えた著作権訴訟としては過去最大の規模になる。 何を訴えているのか 事件番号はRichner Communications, Inc. v. Microsoft Corp.(1:26-cv-05320)、提出日は現地時間2026年6月24日。リッチナー・コミュニケーションズはニューヨーク州ロングアイランドを拠点に、ピューリッツァー賞受賞歴のあるThe Riverdale Pressなど70以上のコミュニティ紙を発行する地域メディア企業だ。筆頭原告としてこの訴訟を率いる。 原告連合にはニューヨーク・アムステルダム・ニュース(ニューヨーク最古のアフリカ系アメリカ人コミュニティ紙)、アーカンソー・デモクラット・ガゼット、ニューメキシコ州のThe Taos Newsなど、数十州にまたがる出版社が参加している。 主張の柱は2つある。1つは著作権法違反。OpenAIが出版社のウェブサイトを組織的

Google利用規約が7月に改定。読むべき箇所はどこか

テクノロジー

Google利用規約が7月に改定。読むべき箇所はどこか

Googleの利用規約が2024年5月以来、約2年ぶりに改定される。発効は2026年7月30日。 同じ7月には、Google広告の利用規約(Advertising Program Terms)も改定される。7月1日発効で、こちらは2018年4月以来、8年ぶりだ。対象が異なる。利用規約の改定はGoogleアカウントを持つ全ユーザーに、広告規約の改定はGoogle広告の出稿者に適用される。 Googleは全ユーザー向け規約について公式の差分比較ページを公開している。両方の変更点を、実際に影響がある部分に絞って整理した。 全ユーザー向けの変更(7月30日発効) 追加・変更は5点。大半はEU法への適合や法務整理だが、日常的な利用に関わる変更も含まれている。 知っておくべき変更は3つある。 1つ目は、バックグラウンド通信の費用負担に関する新セクションが加わった。Googleのサービスは、アプリを操作していない時もソフトウェア更新やセキュリティ対策、広告配信などの目的でインターネット通信を行っている。バックグラウンド通信はモバイルデータやWi-Fiの通信量に含まれるが、Googleは

Google検索の設定が変わる。画像・音声もデフォルトで保存に

プライバシー

Google検索の設定が変わる。画像・音声もデフォルトで保存に

Googleが検索サービスのプライバシー設定を変更している。従来の「ウェブとアプリのアクティビティ」が分割され、「検索サービス履歴」と「パーソナライズされたおすすめ表示」の2つに独立する。設定が細かくなった、という話に見える。だが確認しないと見過ごす変更が一つある。Google レンズで撮影した画像、音声検索の録音、翻訳の発話練習といったメディアデータが、デフォルトで保存対象に加わった。 ウェブとアプリのアクティビティが分割される Googleは「検索サービスの新しいプライバシー設定」という件名のメールをユーザーに送り始めている。日本でも6月上旬から届き始めており、今後数か月かけて全アカウントに段階的に展開される。 変わるのは、検索関連の履歴とパーソナライズの管理構造だ。 これまでは「ウェブとアプリのアクティビティ」という1つの設定で、Google検索・マップ・ショッピング・フライト・ホテル・翻訳・ニュースにまたがる履歴の保存とパーソナライズの両方を管理していた。ここが2つに分かれる。 「検索サービス履歴」は、Googleが検索サービスでの操作をアカウントに履歴として保存す

RDNA 3にFSR 4.1。4K RTが24→ほぼ50fpsに

GPU

RDNA 3にFSR 4.1。4K RTが24→ほぼ50fpsに

FSR 4.1のRDNA 3正式対応から3日。Radeon RX 7900 XTXでCyberpunk 2077のベンチマーク結果が出た。4K、レイトレーシング最高設定。ネイティブでは24fpsしか出ないRX 7900 XTXが、FSR 4.1 Balancedで50fps近くまで伸びている。 予定より1カ月早く届いたドライバ AMDは6月22日、Adrenalin 26.6.2をリリースし、Radeon RX 7000シリーズ全体にFSR 4.1アップスケーリングの正式対応を開始した。当初7月の予定だった。同日にValveのProton ExperimentalからFSR 4.1.1のINT8版DLLが流出しており、前倒しには、この流出が絡んでいるとみられる。 RDNA 4(RX 9000)がFP8命令を使うのに対し、RDNA 3版はINT8命令で動く。AMDはRDNA 3向けにモデルを再設計し、RDNA 4版と同等の画質を達成したとしている。対応ゲームは300本以上。Adrenalinの設定画面から有効化できる。

AlibabaによるClaude蒸留2880万回との分析 IPO前のAI開発を検証

AI

AlibabaによるClaude蒸留2880万回との分析 IPO前のAI開発を検証

2月に中国AI新興3社の蒸留攻撃を告発したAnthropicが、今度は中国テック最大手を名指しした。標的の格が、変わった。 アリババのQwenラボが動いた 6月10日付の書簡が、6月24日に報じられた。宛先は米上院銀行委員会のティム・スコット(Tim Scott)委員長とエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)筆頭理事。Anthropicはこの書簡で、アリババとそのAI研究部門Qwen(通義千問)によるClaudeへの大規模な蒸留攻撃を告発した。 数字だけで異常さが伝わる。2026年4月22日から6月5日までの約6週間で、約2万5000の不正アカウントを通じて2880万回以上のやり取りが発生した。狙われたのはClaudeのソフトウェアエンジニアリングとエージェント推論、つまりMythos Previewの商業的に最も価値のある能力だ。 2月の3社を単独で超えた Anthropicは2月、DeepSeek、MiniMax、Moonshot AIの3社がClaudeに対して産業規模の蒸留攻撃を行っていたと公表した。3社合計で約2万4000アカウント、1600

楽天証券もドコモも「非対応」、世界のパスキーリストの死角

セキュリティ

楽天証券もドコモも「非対応」、世界のパスキーリストの死角

世界で最も使われるサイトのうち、パスキーをまだ用意しないところを名指しする。そんなサイトが公開された。日本のページは厳しい。上位25のうち21が「非対応」と並ぶ。ところが、楽天証券もNTTドコモも、本当はパスキーでログインできる。必須化にまで進んでいる。 パスキー「非対応」の名指し whynopasskeys.comというサイトが公開された。作ったのは、セキュリティ研究者のスコット・ヘルム(Scott Helme)。世界の人気サイトを順に並べ、どこがパスキーに対応し、どこが対応していないかを一覧にする。 前例がある。2017年、ヘルムはトロイ・ハント(Troy Hunt)とともにwhynohttps.comを作った。HTTPSへ切り替えていないサイトを集め、誰の目にも見える形で並べた。狙いは単純だった。ヘルム自身の言葉では「誰もそこに載りたくない。リストは驚くほど人を動かす」。実際、HTTPSは数年で「あれば良い」から「なければ困る」へ変わった。この名指しは、その動きを後押しした。今度はそれをパスキーでやる。ドメインはハントが提供し、その続編ができた。 世界の数字はこうだ。

OpenAIが推論を自前でまかなう日

AI

OpenAIが推論を自前でまかなう日

ChatGPTに問いを投げる。数秒で答えが返る。その一往復のうしろで、OpenAIは四半期に数十億ドル単位の現金を燃やしている。最も重く燃えているのが、答えを生成する処理、つまり推論だ。6月24日、OpenAIはブロードコムと共同開発した初の自社チップ「Jalapeño」を披露した。これは新製品の発表というより、燃費を自分で決めにいく一手だ。 エヌビディアに渡さない一ドル 2025年10月13日、OpenAIとブロードコムは10ギガワット規模のカスタムチップ共同開発を公表した。その設計が、今や実物のチップになった。Jalapeñoは推論に特化したASIC(特定用途向け集積回路)で、学習用ではない。汎用GPUより融通は利かないが、その代わりに安く、特定の処理に絞って効率を突き詰められる。 このチップが守ろうとしているのは、利用者から見えない場所にある勘定だ。学習はAIモデルをゼロから作り上げる工程、推論はその完成したモデルが答えを返す工程だ。利用者が9億人を超え、毎日数億の問い合わせがサーバーに届く規模になると、コストの重心は学習から推論へ移る。一度に巨額がかかる学習と違い、推論

量子の「飛躍」を消したのは、二行のPythonだった

量子コンピューター

量子の「飛躍」を消したのは、二行のPythonだった

20年の歳月と10億ドルを注いだマイクロソフトのトポロジカル量子計画が、コードの検証という最も地味な場所で揺れている。2026年6月24日、セントアンドリュース大学のヘンリー・レッグ(Henry Legg)が、同社の2025年2月の論文を否定する批判をNature誌に発表した。査読を通過した正式な反論であり、マイクロソフトもまた査読付きの反論を同じ号に載せた。Majorana 2チップを発表してから、まだ3週間。今度は製品ではなく、すべての土台となった論文そのものの信頼性が問われている。 争点は、チップではなく「データの読み方」 先にひとつ、混同しやすい点をほどいておく。今回レッグが標的にしたのは、6月初頭に発表されたMajorana 2チップではない。その15か月前、2025年2月に発表された論文(InAs–Alハイブリッドデバイスにおける単発パリティ測定)の方だ。この論文の上に、マイクロソフトのその後の量子戦略すべてが積み上がっている。 論文の主張はこうだった。量子ビットを置くのに適した場所を見つけるため、極めて電気伝導率の高いワイヤーの中にごく小さな「ギャップ」を検出する