Google利用規約が7月に改定。読むべき箇所はどこか
Googleの利用規約が2024年5月以来、約2年ぶりに改定される。発効は2026年7月30日。
同じ7月には、Google広告の利用規約(Advertising Program Terms)も改定される。7月1日発効で、こちらは2018年4月以来、8年ぶりだ。対象が異なる。利用規約の改定はGoogleアカウントを持つ全ユーザーに、広告規約の改定はGoogle広告の出稿者に適用される。
Googleは全ユーザー向け規約について公式の差分比較ページを公開している。両方の変更点を、実際に影響がある部分に絞って整理した。
全ユーザー向けの変更(7月30日発効)
追加・変更は5点。大半はEU法への適合や法務整理だが、日常的な利用に関わる変更も含まれている。
知っておくべき変更は3つある。
1つ目は、バックグラウンド通信の費用負担に関する新セクションが加わった。Googleのサービスは、アプリを操作していない時もソフトウェア更新やセキュリティ対策、広告配信などの目的でインターネット通信を行っている。バックグラウンド通信はモバイルデータやWi-Fiの通信量に含まれるが、Googleはその費用を負担しない。モバイル回線やインターネットサービスのプラン内容、端末やネットワークの設定を確認してほしいという内容だ。
これまで暗黙の前提だったことを条文にしたもので、実態に変化はない。ただ、月間データ容量に上限がある格安プランを使っている場合は意識しておいた方がいい。
2つ目は、医療・法律・金融の免責条項の拡張だ。現行規約では「サービスの内容を専門家の助言として扱わないでください」という一文だったが、改定後は2点が変わる。「サービス固有の追加規約で明示的に許可されていない限り」という例外条件の追加と、「医療上の診断や治療には該当しない」という文言の挿入だ。
Geminiが健康相談に応じたり、AI Overviewが医療情報を返したりする場面が増えたことへの対応とみられる。個別のサービス規約で許可すれば例外にできる仕組みは、Googleが将来、医療分野のAIサービスを提供する際の法的な備えとも読める。
3つ目は、AI生成コンテンツに関する注記の追加だ。「すべての人に適さないコンテンツもある」という一文がAI生成コンテンツのセクションに加わった。GeminiなどのAIサービスが出力する内容には不快なものが含まれる可能性があり、それをGoogleが規約上あらかじめ告知した形になる。AIの出力に対して苦情や対応を求める際のハードルが上がりうる変更だ。
残り2つは法務的な調整だ。法人向けの責任制限が全ユーザー向け保護と矛盾しない旨の明確化と、紛争解決条項でカリフォルニア州法の適用範囲を規約自体の解釈にも拡張する微修正。いずれもGoogleとの紛争が生じた場合に関わる条項で、日常的な利用には影響しない。
EU圏向けにはさらに追加の変更がある。EUの「グリーン移行指令」への適合、EUオンライン紛争解決プラットフォーム廃止に伴うリンク削除、EU金融サービス指令に基づく撤回手続きの更新などだが、日本のユーザーには直接関係しない。
広告出稿者向けの変更(7月1日発効)
Google広告の利用規約は性質が異なる。こちらは広告出稿者の実務に直結する変更が並ぶ。
この改定の背景には、広告主側の動きがある。2026年4〜5月にかけて、米法律事務所ケラー・ポストマン(Keller Postman)がGoogleの独占禁止法違反を根拠に数千社規模の集団仲裁を開始した。2つの連邦裁判所がGoogleの独占的行為を認定した判決が根拠だ。過去10年間の米国広告支出約7280億ドルに対する過大請求の回収を求めている。Google広告の仲裁条項が全面的に書き換えられたのは、こうした動きと無関係ではない。
2018年4月 Google Ads利用規約を改定 次の改定まで8年間据え置かれる 2024年5月 Google利用規約を改定 現行版はこの時点のもの 2026年4月 広告主の集団仲裁が表面化 独占禁止法違反を根拠に数千社規模 2026年5月 ケラー・ポストマン、仲裁を正式発表 約7280億ドル規模の過大請求回収を主張 2026年6月 Google、Ads規約改定を広告主に通知 2026年7月 Google Ads利用規約 改定発効(7/1) 仲裁条項全面刷新・AI生成物の責任移転 2026年7月 Google利用規約 改定発効(7/30) 通信費自己負担・医療免責の拡張など |
変更点は大きく5つある。
AIへの入力データの利用範囲が明文化された。キャンペーン設定時にGeminiやAsk Advisorに入力した情報、Googleにクロールを許可したURL上のコンテンツは、そのキャンペーンだけでなくGoogle広告の各種機能全体で利用される。独自の広告コピーやブランドボイスを持つ企業は、AI機能への入力内容に注意が必要だ。
AI生成物の責任が広告主に移った。従来の規約では自動化機能の一部を「任意」と表現する文言があったが、改定後はこの文言が削除された。Performance Maxの出力、自動生成アセット、会話型キャンペーン設定の結果を含め、Googleの自動化機能が生成・変更した広告はすべて広告主の責任になる。
仲裁条項が全面的に書き換えられた。アメリカ仲裁協会(AAA)の規則に基づく仲裁、発効後30日以内の仲裁オプトアウト、25件以上の類似申し立てをまとめて処理するバッチ仲裁手続きなどが盛り込まれている。前述のケラー・ポストマンによる集団仲裁との関連が指摘されている。
地域別手数料の徴収に法的根拠が整備された。各国のデジタル広告規制に伴う運営費用を広告主に転嫁できる条項が新設されている。具体的な手数料はまだ発表されていないが、EUのデジタルサービス法やデジタル市場法など、プラットフォーム規制が強化される中、今後の請求書に新たな費目が追加される可能性がある。
責任上限の計算方法が変わった。従来はGoogle広告主の全アカウント合計支出額が基準だったが、改定後は個別アカウント単位になる。複数アカウントを運用する企業にとっては、1つのアカウントで発生した問題に対するGoogleの賠償上限が下がることを意味する。
参照元:Google利用規約 新旧差分比較
他参照:ケラー・ポストマン 集団仲裁発表