Intel、270K Plusの定価を299ドルから349ドルへ引き上げ
3月の発売時に「300ドル以下で24コア」と高く評価されたCPUの価格が、メーカー自身の手で書き換えられた。
レビューの前提が消えた
Intelが、Core Ultra 200S Plusシリーズの推奨小売価格(RCP)を公式製品ページ上で引き上げた。各製品の仕様ページに記載されたRCPは、いずれも発売時から改定されている。
270K Plusは289〜299ドルから339〜349ドルへ約17%、250K Plusは189〜199ドルから219〜229ドルへ約16%。いずれも公式の製品仕様ページで確認できる。
3月26日の発売当時、各レビューサイトが「300ドル以下で買える最高のオールラウンドCPU」「200ドル帯で最強」と評価した根拠は、あの価格にあった。270K PlusはCinebenchのマルチスレッドで当時500ドル超だったRyzen 9 9950Xに迫った。ゲーム性能もX3D以外のCPUをほぼすべて上回る。その性能を299ドルで出した点が「コスパの化け物」と称された理由だ。
349ドルになった270K Plusは、同じチップであっても、同じ評価にはならない。
265ドルから349ドルへ(3か月間の値動き)
発売直後から価格は迷走していた。3月末、米国の主要小売店で270K Plusが349〜357ドル、250K Plusが219〜249ドル。いずれもRCPを大きく超えており、当時は小売側の需給調整だと受け止められていた。
5月に入ると状況は逆転し、Amazonで270K Plusが279ドルまで下落。RCP以下で購入できる初めての局面だった。6月下旬には264.99ドルまで落ちている。
そこへ今回のRCP引き上げが入った。実売264ドルだったCPUの「定価」が349ドルになる。Intelは価格表を現実に追いつかせたのではなく、現実が落ち着いた後に価格表を引き上げた。
背景にあるコスト圧力
Intelは3月の時点で、OEM向けCPU価格の10〜15%引き上げをパートナーに通知していた。同社幹部はCRNの取材に対し、AI需要によるリードタイムの長期化と原材料コストの上昇が理由だと認めている。
270K PlusのコンピュートタイルはTSMC N3Bプロセスで製造されている。TSMCは3nmを含む全先端ノードの5〜10%値上げを顧客に通知済みで、CPU向けウェハコストは約7%上昇する見通しだ。ウェハ単価の引き上げが製品原価にそのまま乗る。
下半期にはさらに8〜10%の追加値上げが予測されており、今回のRCP変更はその第一段階に位置づけられる。
Arrow Lake最末期の値付け
Core Ultra 200S Plusシリーズは、LGA1851ソケットの最後のデスクトップCPUだ。次世代のNova Lakeは新ソケットLGA-1954への移行を伴い、年内の発売が見込まれている。いま270K Plusを購入してもアップグレードパスはなく、マザーボードごとの買い替えが前提となる。
プラットフォームが行き止まりでも、CPUが299ドルなら選択肢に入る。349ドルでは計算が変わる。とくにAMDがAM5プラットフォームのサポートを2029年まで延長した現状では、差額50ドルの意味が価格以上に重い。
Intelが299ドルという攻めた価格設定でArrow Lakeの評判を立て直したのは、わずか3か月前のことだ。レビュアーが「299ドルなら間違いなく買い」と結論づけたその299ドルを、Intel自身がなかったことにした。
参照元
- Intel® Core™ Ultra 7 processor 270K Plus — Product Specifications
- Intel® Core™ Ultra 5 processor 250K Plus — Product Specifications
関連記事
- Intel Arrow Lake Refresh、発売2日で希望小売価格を超える値付けが全米で常態化
- Intelが認めたArrow Lakeの失敗と反撃の布石
- AmazonのCPU売上トップ15をAMDが独占。Intelゼロの異常事態
- Intel、ゲーム性能ギャップは「最適化不足」と主張
- Intel、オーバークロックを高価格SKUの特権から外す方針
- 「買ったのは250K、表示は270K」中華で「錯版U」騒動
- Ryzen 7 9800X3D、世界最安は日本という逆転現象
- Intel LGA1954が「2本レバー」に、Nova Lake-S高級板の狙い
- Core Ultra 7 270K Plus即完売、歪んだ国内初値
- Nova Lake、474Wの電力設計がマザーボードに降りてきた