Meta、8000人解雇の2日前に7000人をAI部門へ再配置
Facebook、Instagram、WhatsAppを抱える巨大企業が、過去最大規模のレイオフを目前に控えた従業員へ伝えたのは、「あなたの仕事が変わる」という通知だった。
Facebook、Instagram、WhatsAppを抱える巨大企業が、過去最大規模のレイオフを目前に控えた従業員へ伝えたのは、「あなたの仕事が変わる」という通知だった。
解雇の2日前に届いた異動通知
Metaが全従業員の約10%にあたる約8000人を解雇する予定日は5月20日(水曜日)。その2日前の月曜日、社内に別の通知が流れた。7000人の従業員をAI関連の新組織4つに再配置する、という内容だ。
最高人事責任者のジャネル・ゲイル(Janelle Gale)氏が社内メモで伝えた。新組織ではAIツールやAIアプリの開発に集中し、従来の部門より管理職の比率を下げたフラットな体制を敷く。水曜日に新しい役職の詳細を通知するという。
ゲイル氏はメモで「この再編によって生産性が向上し、仕事がよりやりがいのあるものになる」と記した。
つまり、ある従業員は水曜日に解雇通知を受け取り、別の従業員は同じ水曜日にAI部門での新しい役職を告げられる。全社員の約10% が去り、別の約10%が異動する。同じ会社の、同じ週の出来事だ。
AI投資の規模と人件費の天秤
Metaが人を切る理由は、業績不振ではない。2026年第1四半期の売上高は 563億ドル で、前年同期比 33% 増。純利益は268億ドルに達している。
カネはある。問題は、もっと巨額のカネの使い道が先に決まっていることだ。
Metaは2026年の設備投資額を 1250億〜1450億ドル(約18兆〜21兆円)と見込んでいる。2025年の722億ドルからほぼ倍増させる計算で、その大部分はAI向けのデータセンター、GPU、独自チップに充てられる。ザッカーバーグ氏は1月の投資家向け説明で、この巨額投資の方針を明言していた。
Bank of Americaの試算では、今回のレイオフで年間70億〜80億ドルの人件費削減が見込まれるという。設備投資の総額と比べればごく一部だが、CFOのスーザン・リ氏が投資家に約束した営業利益率の維持には欠かせない数字だ。
ザッカーバーグ氏自身も4月30日の社内会議で、AI投資がレイオフの一因だと認めている。「以前は50人や100人必要だったチームが今は10人で済むなら、50人や100人を置くことはむしろ逆効果になりうる」と語った。
「4回目」のレイオフ、そして次の波
今回の8000人削減は、2026年だけで4回目のレイオフになる。1月にはReality Labs部門で約1000〜1500人、3月には複数部門で700人が対象となった。さらに6000件の未充足ポストも凍結されている。
2022年からの累計で、Metaが削減した人員は約 2万5000人 に達する。2022年11月の1万1000人はパンデミック期の過剰雇用の是正、2023年の1万人はザッカーバーグ氏が「効率の年」と名づけた再編だった。今回は名目が違う。AI投資に振り向けるための構造転換だ。
しかも、2026年後半にはさらなる削減が計画されているという複数の報道がある。年間で合計1万6000人規模になる可能性も指摘されている。
メタバースへの投資は縮小されつつある。Reality Labsの予算は 30% 削減され、VRゲームスタジオの閉鎖も進んだ。かつてザッカーバーグ氏が社名を変えてまで賭けた分野からの撤退が、静かに進行している。
テック業界全体を覆う同じ波
Metaだけの話ではない。先週、Ciscoが4000人以上の解雇を発表した。四半期売上 158億ドル という過去最高を記録しながら、だ。Microsoftは同社史上初めて希望退職制度を導入し、米国従業員の約 7% が対象になった。Oracleは3月に推定3万人を削減。Coinbaseも従業員の14%にあたる700人をカットしている。
2026年に入ってから、テック業界全体で10万人を超える人員が職を失った。各社とも過去最高の売上や利益を出しながら、同時に人を減らしてAIインフラに投資する。同じパターンが繰り返されている。
売上が伸びている。利益も出ている。それでも人を減らす。「効率化」という言葉が、いつの間にか「AIに投資するためのコスト削減」と同義になった。
残された従業員にとっての意味
解雇される8000人の退職条件は明らかになっている。米国の対象者には16週間分の基本給に加え、勤続1年あたり2週間分の上乗せ。医療保険は最長18か月間カバーされる。解雇通知は水曜日の午前4時(現地時間)にメールで届く。ゲイル氏は当日のリモートワークを指示した。
では、再配置される7000人はどうか。新組織は「AIネイティブな設計構造」を採用し、管理職の数を減らすとされている。フラットな組織というと聞こえはいいが、管理職が減るとは、そのポストに就いていた人の行き先が別にあるということでもある。
Metaは従業員に対し、AIツールの業務利用を進め、人事評価にもAI活用の度合いを反映させ始めた。従業員のキーストロークやマウスの動きをAI訓練データとして収集しているという報道もあり、社内には不安が広がっている。
ある掲示板には、「解雇されなかった人は、自分の墓を掘らされている」という書き込みがあった。再配置された7000人がAIツールを完成させれば、次のレイオフでは彼ら自身の仕事がAIに置き換えられるかもしれない。その皮肉に気づいていない従業員はいないだろう。
ザッカーバーグ氏は「2026年はAIが働き方を劇的に変える年になる」と繰り返している。その言葉の先にあるのが、7万8000人の会社を何人まで縮小できるかという計算であることを、社内メモは隠そうとしていなかった。
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