Microsoftのデータセンター、住民が騒音で集団訴訟。「眠れない」

Microsoftのデータセンター、住民が騒音で集団訴訟。「眠れない」

4月に発覚した低周波音の問題をMicrosoftは「解決済み」としていた。住民はそう思っていない。


稼働開始から1週間で提訴

ウィスコンシン州マウントプレザントに完成したMicrosoftのデータセンター「フェアウォーター」が稼働を開始したのは6月下旬のことだった。それから1週間後の7月2日、近隣の住民3人がMicrosoftを相手取り、連邦地裁に集団訴訟を起こした。

Microsoft

原告は3人。ガレット・オスターガード(Garret Ostergaard)氏と、デイヴィッド・ウェイド(David Wade)氏、ジョイ・ウェイド(Joy Wade)氏の夫妻で、いずれも隣接するスタートバント(Sturtevant)の住民だ。全員がデータセンターから約2.4km以内に住んでいる。訴状は、ディーゼル発電機と空調設備(チラー、冷却塔、空調機、コンデンサーファン)が発する騒音を「過度で持続的」と主張し、私的ニューサンス(生活妨害)と過失を訴因として挙げた。

オスターガード氏は、騒音による不眠で勤務シフトを夜勤から日勤に変更せざるをえなくなった。ウェイド夫妻は、自宅の庭やデッキで過ごす時間を奪われたと訴えている。

原告側は、半径約2.4km以内にある約1000世帯を代表するクラスアクション(集団訴訟)としての認定を求めている。代理人を務めるのはデトロイトのLiddle Sheets, P.C.とミルウォーキーのHansen Reynolds LLCで、Liddle Sheetsは他のデータセンター施設に対しても同様の騒音・臭気・水質汚染の調査を進めている。

「解決した」はずの騒音

フェアウォーターの騒音問題が表面化したのは今年4月だ。マウントプレザントの北側に住む住民が、施設から聞こえる低音の唸りに苦情を申し立てた。

Microsoftは公式ブログで経緯を時系列で公開している。4月10日に問題を認知し、4月15日に原因を冷却ファンの高速回転と特定、ファンの回転速度を手動で調整した。

6月18日の更新では、エンジニアリングチームが現地で騒音緩和措置を実施し、複数の近隣住民も問題の解消を確認したと報告した。数か月かけて追加の防音部品を設置する予定だとも記している。

フェアウォーター騒音問題の経緯
4月10日
Microsoft、騒音問題を認知
住民が施設の低音の唸りを報告
4月15日
原因を冷却ファンと特定
高速回転が原因。回転速度を手動で調整
6月18日
「問題は解決」と発表
緩和措置を実施、住民も解消を確認と報告
6月下旬
フェアウォーター稼働開始
337.6MW消費。15棟の追加建設を計画
7月2日
住民3人が集団訴訟を提起
約1000世帯を代表。低周波音はdBA測定に反映されないと指摘
※日付はMicrosoft公式ブログおよび訴状の記載に基づく。2026年

訴状はこの見解に正面から反論している。騒音の一部は通常のデシベル測定では捉えられない低周波の音であり、dBAの数値だけでは実態を反映しないと指摘した。地元条例の基準値を満たしているとするMicrosoft側の説明に対し、原告は「合法」と「住める」は違うという立場を取っている。

マウントプレザントの広報担当ショーン・ライアン(Sean Ryan)氏は、4月中旬の調整以降、施設に関する正式な苦情は受けていないと述べた。

騒音だけではない

データセンター周辺の住民が抱える不満は、建物から漏れる低音だけにとどまらない。

データセンター敷地の向かいに40年近く住むラリー・ニューミラー(Larry Neumiller)氏は、ダンプカーの騒音と工事現場から舞い上がる粉塵に苦しんでいる。

「スタートバントから帰ってくるとき、道路を粉塵が横切っていて自分の家が見えないことがある」(ニューミラー氏のWPRへの証言

光害も深刻だ。フェアウォーターの向かいに住むロジャー・ヨハンセン(Roger Johansen)氏は、かつてすべての星が見えた夜空が失われたと語った。建設作業は午前6時から午後10時まで認められており、夜間の照明はブラインドを閉めても室内に入り込むという。

数年前に郊外の環境を求めて引っ越してきたブライアン・シュー(Brian Schue)氏は、再び転居を考えている。シュー氏は一帯を「ダストボウル(砂塵地帯)だ」と表現した。

Microsoftはプロジェクトのウェブサイトで、粉塵対策として清掃車が1日約10時間稼働し、出入口にはタイヤ洗浄装置を設置していると説明している。

マウントプレザントが再び背負うもの

フェアウォーターは約11万平方メートルの施設で構成され、337.6メガワットの電力を消費する。将来的に900メガワットへの拡大が想定されており、Microsoftはキャンパス内に15棟の追加建設を計画している。

建設時のピークには約1万人の作業員が関わった。現在は約550人の常勤スタッフが稼働中の最初の施設を支えている。

マウントプレザントは2017年にも大規模開発に揺れた。フォックスコンが100億ドル規模のLCD工場を建設し、1万3000人を雇用すると約束した。トランプ前大統領は「世界第八の奇跡」と呼んだ。

実際に残ったのは約1200人の雇用と数億ドル規模の投資だった。住民は土地を「荒廃地」と認定され、エミネントドメイン(強制収用)で立ち退きを迫られた。マウントプレザントが数億ドルの債務を背負って整備したインフラは、フォックスコンの縮小後、Microsoftのデータセンター用地として転用された。

マウントプレザントのデイヴィッド・デグルート(David DeGroot)村長はデータセンターの開所を「歴史的な節目」と評価した。

同じ町で、眠れない住民が連邦裁判所に訴状を提出している。

各地で繰り返される同じ訴え

データセンターの騒音をめぐる集団訴訟は、マウントプレザントに限った話ではない。

6月にはイーロン・マスク氏のxAIが、ミシシッピ州サウスヘイブンのデータセンター向け発電施設から発生する騒音と振動をめぐり、住民から集団訴訟を起こされた。ガスタービンの数が1年足らずで3基から57基に膨れ上がり、住民はその音を「ジェットエンジンのようだ」と表現した。

バージニア州ラウドン郡では、199か所のデータセンターが集中するなかで空調騒音への苦情が続いている。テネシー州やニューヨーク州では建設モラトリアム(一時停止)が議論され、各地で住民と企業の衝突が激化している。

AIの計算需要が増すたびに、データセンターは巨大化し、住宅地との距離は縮まる。騒音、粉塵、光害、電力消費への不満は、もはや特定の企業や地域に限定された問題ではない。

Microsoftはファンの回転速度を調整し、防音部品の追加設置を進めている。マウントプレザントは「正式な苦情は寄せられていない」と説明した。原告3人は連邦裁判所に訴状を提出した。

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