Microsoft Store、法人の登録料も無料化

Microsoft Store、法人の登録料も無料化
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99ドル(約1万5500円)の壁が消えた。Microsoftは法人向けの開発者アカウント登録料を撤廃し、Apple・Googleとの差別化を一段と鮮明にしている。狙いは月間2億5000万ユーザーへの導線拡大だ。


個人に続いて、法人も「ゼロ」になった

Microsoft Storeに法人としてアプリを公開する際の99ドル(約1万5500円)の登録料が、ついに撤廃された。Microsoft StoreでVice Presidentを務めるGiorgio Sardo氏が現地時間5月7日、Windows Developer Blogで発表したものだ。

これで個人開発者・法人開発者ともに、Microsoft Storeへの登録は完全無料になった。個人開発者の登録料(19ドル)が撤廃されたのは2025年9月のことだから、約8カ月で法人にも同じ恩恵が広がった形だ。

Microsoftは今回、3つの変更をまとめて投入している。99ドルの登録料撤廃、Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory)でのサインアップ対応、そして再設計されたオンボーディングフローの導入だ。これらは別々の改善ではなく、「企業がWindows向けアプリ配信を選ぶ理由」を一つの体験として束ねる動きとして読める。

Apple年99ドルとの差が決定的に

ストア運営者として収益機会を放棄するこの判断は、競合プラットフォームの料金体系を見れば意味が立ち上がってくる。

Apple Developer Program:年額99ドル(約1万5500円) Google Play Console:初回のみ25ドル(約3900円) Microsoft Store:個人・法人ともに無料
主要3ストアの開発者登録料
区分 Apple Google Microsoft
個人開発者 年99ドル 初回25ドル 無料
法人開発者 年99ドル 初回25ドル 無料
課金形態 年額更新 初回のみ 恒久無料
※ Microsoft Storeは2025年9月に個人開発者、2026年5月に法人開発者の登録料を撤廃。Apple Developer Programの法人向け料金は非営利・教育機関等の免除制度あり。

Appleは個人・法人を問わず毎年99ドルを徴収し続けている。Googleは初回の25ドルだけで済むものの、それでもゼロではない。Microsoftだけが「永続的に無料」という選択を取った。これは単なる値下げではなく、Microsoft Storeの位置付けそのものを再定義する動きだ。

ここで気になるのは、なぜMicrosoftだけがこの判断に踏み切れるのかという点だ。Apple・Googleにとって登録料は審査人員の人件費を賄う一面もあり、ゼロにすれば不正アプリの大量流入を招きかねない。MicrosoftはWin32からUWP、PWA、.NET MAUI、Electronまで幅広いアプリ形式を受け入れる「開いたストア」を志向している。料金で開発者を選別するのではなく、後段の検証プロセスで品質を担保する構えと言える。

Microsoft Entra IDでのサインアップが鍵

無料化と並んで実利的な変更が、Microsoft Entra IDによるサインアップ対応だ。

これまで法人がMicrosoft Storeの開発者アカウントを作成する際は、個人のMicrosoftアカウントで登録した上で組織情報を別途登録する必要があった。多くの企業ではEntra ID(旧Azure AD)で従業員のアカウントを一元管理しているにもかかわらず、Microsoft Storeだけが別系統だったわけだ。

Entra IDサインアップは、Microsoft 365を使う企業なら全社員が日常的に使っている認証基盤を、そのまま開発者アカウントの土台として使える仕組みだ。アカウントの入り口で組織との紐付けが自動的に成立する。

これは管理面で地味に効く。退職者のアクセス権剥奪、複数部署にまたがる開発者の権限管理、監査ログの統合といった「企業が当たり前に求める運用」が、最初から整った状態で始められる。個人のMicrosoftアカウントに依存していた頃と比べて、社内承認の手間が大きく減る。

D-U-N-S Numberで自動入力、検証も自動化

オンボーディングの再設計も実用的な改善が並ぶ。Microsoftは法人検証の高速化に向けて、D-U-N-S Number(ダンズナンバー)の活用を強く推奨している。

D-U-N-S Numberは、米Dun & Bradstreet社が発行する9桁の企業識別コードだ。日本では東京商工リサーチが窓口になっており、自社番号の照会は30営業日納期なら無料、即時納期は1万円となっている(2025年7月の同社サイトリニューアル後の料金体系)。すでにApple Developer Programでも法人登録時の必須要件になっており、海外プラットフォームを使う日本企業には馴染みのある番号だ。

この番号を入力すれば、企業情報の取得と検証が自動で済む。手元にない場合は、登記簿や事業許可証、納税証明書などの書類アップロードでも代替できるが、こちらは手作業の審査が入るぶん時間がかかる。最短ルートは、まず D-U-N-S Numberを取得 しておくことだ。

加えて、契約に使うメールアドレスは法人ドメインを使うようMicrosoftが推奨している。フリーメールや個人ドメインだと追加検証が走り、承認が遅れる仕組みになっている。

「100%レベニュー」という殺し文句

Microsoftが今回の発表で繰り返し強調しているのが、ゲーム以外のアプリで自前の決済システムが使える点だ。

Apple App StoreもGoogle Playも、ストアを経由したアプリ内課金には15〜30%の手数料が課される。これに対してMicrosoftは、非ゲームアプリに限り、開発者が独自の決済システムを組み込んでアプリ収益の100%を保持できる仕組みを維持している。Microsoftの決済を使う場合はゲーム12%・アプリ15%の手数料が発生するが、自前決済への切り替えでこれを回避できる。

アプリ内課金の最大手数料率
Microsoft決済使用時 Apple / Google
※ 各社公式の標準手数料率(小規模開発者向け減免・サブスク2年目以降の優遇等を除く最大値)。Microsoft Storeでは非ゲームアプリに限り、開発者が自前決済を組み込めば手数料0%。
At Brave, our core mission is to put users first.(私たちBraveの中核にあるのは、ユーザーを最優先にすることだ)

Microsoftが今回の発表で名前を出したのが、プライバシー重視ブラウザのBraveだ。BraveはMicrosoft Storeを通じた配信を「ユーザーの選択肢を広げる手段」と評価しており、登録料無料化と100%レベニューが組み合わさったときの訴求力が見えてくる。

Microsoft StoreにはWindows Searchから直接たどり着ける検索導線があり、企業環境ではMicrosoft Intune経由でのIT管理者主導の配布も可能だ。MSIXパッケージングを使えば署名と自動更新がMicrosoft側のインフラで賄われる。これらをすべて無料で利用できるという構造は、独立系開発者にとって「Apple税・Google税からの逃げ場」として強い意味を持つ。


残る課題は「ユーザーが来るか」

ただし、この戦略が成功するかは別の話で、Microsoft Storeの最大の課題は依然としてストア自体の存在感にある。

Windowsユーザーの多くは、アプリをWeb経由で直接ダウンロードする習慣が根付いている。月間2億5000万ユーザーという数字は決して小さくないが、AppleやGoogleのストアと比べると、Windowsエコシステムにおけるストアの位置付けは「アプリ入手の標準ルート」とは言いがたい。

開発者の立場で見れば、登録料の有無は判断材料の一つに過ぎない。最終的に重要なのは「そこにユーザーが来るか」だ。Microsoftが無料化と並行してCopilot+ PCを軸にしたWindowsエコシステム全体の刷新を進めているのは、この課題への答えを用意するためだろう。料金障壁を取り払った先に、本当の競争が待っている。

開発者にとって朗報なのは確かだ。だが本当に問われているのは、Microsoft Storeを「開発者が来たい場所」に変えられるかどうか、その続きの物語だ。


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