Intel、LGA 1700にもう一度。5年目の延命とAMD戦略の本気度

Intelが2021年投入のLGA 1700ソケットに、3度目の延命を仕掛けようとしている。リーカーのJaykihnが報じた「2回目のRaptor Lake Refresh」計画。これは、長年AMDに差をつけられてきたソケット戦略の、ついに本気の方向転換なのだろうか。

Intel、LGA 1700にもう一度。5年目の延命とAMD戦略の本気度
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Intelが2021年投入のLGA 1700ソケットに、3度目の延命を仕掛けようとしている。リーカーのJaykihnが報じた「2回目のRaptor Lake Refresh」計画。これは、長年AMDに差をつけられてきたソケット戦略の、ついに本気の方向転換なのだろうか。


5年目のソケットに、また新しいCPUが載る

Intelが次に出すのはNova LakeでもRazor Lakeでもなく、もう一度Raptor Lakeの派生だ。少なくともリーカーのJaykihn(@jaykihn0)はX上でそう主張している。4月15日に投稿された一連のスレッドで、Jaykihnは既存のLGA 1700プラットフォーム向けにRaptor Lakeベースのもう一つの世代を準備中だと明かした。

LGA 1700は2021年11月のAlder Lake登場と同時にデビューしたソケットだ。Raptor Lake(2022年)、Raptor Lake Refresh(2023年)と3世代を受け入れ、その後Arrow Lakeで後継のLGA 1851に移行した、はずだった。ここで「はずだった」と書かざるを得ないのは、Intelがこの古いソケットをまだ手放す気がないらしいからだ。

Jaykihnの言葉はシンプルだ。

Intelは別のRaptor Lake Refreshを計画している。LGA1700を延長するためだ。このソケットサポートの長寿命化は、AMDがAM4で行ってきた慣行に近い。

AM4に近い」という比較は、Intelにとって重い意味を持つ。AMDは2017年のZen登場から2020年のRyzen 5000シリーズまで、同じAM4ソケットで4世代のアーキテクチャを支え続け、2024年にはさらにRyzen 7 5700X3Dを追加投入している。Intelは同じ期間にLGA 1151、LGA 1200、LGA 1700、LGA 1851と4種類のソケットを投入してきた。ユーザーから見れば、Intelで新CPUに乗り換えることはほぼ常にマザーボードも買い替えることを意味してきた。

DDR4マザーが主役になる皮肉

この動きの背景には、DDR5価格の高騰という直近の市場事情がある。メモリチップ全般の供給不足により、DDR5モジュールの価格は過去1年で約3倍に跳ね上がり、新規にDDR5プラットフォームを組むコストが大幅に上昇した。

LGA 1700対応マザーボードの多くはDDR4DDR5の両方をサポートする(モデルによってどちらかに限定される)。在庫が安く、DDR4メモリも既に所有しているユーザーにとって、新品のDDR5環境に移行する金銭的な理由は薄い。Intelもこれを見ているのだろう。同社は既にRaptor Lake系CPUの生産継続を3月に表明しており、DDR4サポートを延命する姿勢を明確にしていた。

既存ユーザーに降ってくる選択肢

Jaykihnの情報によれば、新しい世代もアーキテクチャはRaptor Cove(P-Core)とGracemont(E-Core)のままで、製造プロセスもIntel 7を継続する見込みだという。高性能のCore i9相当は含まれないとも伝えられており、要はミドル~ローエンド向けの値頃感重視の世代になる可能性が高い。

これは既存のLGA 1700ユーザーにとって悪くない話だ。2021年や2022年に組んだマザーボードが、2027年頃にもう一度新品CPUの載せ替え対象になる。マザボもCPUも値段を抑えた構成で、ゲーム用やオフィス用の手堅いPCを作れる選択肢が残る。

一方でエンスー層にとってはあまり意味がない。性能のブレークスルーは期待できないし、プラットフォームとしての寿命はどう見ても残り僅かだからだ。これは救済措置であって、提案ではない。


LGA 1851はなぜ「広がらなかった」のか

ここで注目すべきは、この延命策が「LGA 1851の失敗の埋め合わせ」という側面を持つことだ。

Jaykihnによれば、LGA 1851は元々4つのアーキテクチャ(Meteor Lake-S、Arrow Lake-S、Beast Lake-S、Panther Lake-S)をサポートする設計だった。これは記憶しておくべき事実だ。Intelは当初からLGA 1851でマルチ世代サポートを志向していた。ところが、実際に発売されたのはArrow Lake(Core Ultra 200シリーズ)とその2026年のRefresh(Core Ultra 200 Plus)の2世代のみで終わる見込みとなっている。

「execution fell flat(実行が失敗した)」とJaykihnは書いている。設計段階の意図と、出荷された現実との間に大きな溝があったわけだ。Meteor Lake-Sのエンジニアリングサンプルまで存在していたという情報は、この計画が単なる構想ではなく、具体的なシリコン開発段階まで進んでいたことを示唆する。

「意図」と「結果」のあいだ

この歴史を踏まえると、Intelの次のソケットLGA 1954への期待値の設定が難しくなる。LGA 1954は2026年後半のNova Lake-S(Core Ultra 400シリーズ)で登場予定で、Nova LakeとRazor Lakeの2世代、場合によっては2030年頃までのTitan LakeやHammer Lakeも含む最大4世代をサポートするという噂が流れている。

しかしLGA 1851の前例を思えば、4世代というのはあくまで意図に過ぎないJaykihnも「LGA 1954ソケット長寿命は誰にも分からない」「ただ全体としてIntelAMDのソケット長寿命に対抗したがっている」と慎重な書き方をしている。

Hallock発言からJaykihnリークへの一貫した流れ

3月に話題になったのが、IntelエンスージアストチャンネルのVP兼GMであるRobert Hallockが、Club386のインタビューで述べた発言だった。「将来のIntelソケットはより多くのCPU世代をサポートするか?」という質問に、Hallockは短く「I do. That's it - I do」(そう思う。それだけだ、そう思う)と答えた。

この発言は具体的なソケット名も世代数も明言していないが、LGA 1954への期待を煽る効果は十分だった。そして今回Jaykihnからの情報が続く。流れは一貫している。Intelは「ソケットの長寿命化」を、少なくともメッセージングの次元では確実に進めている。

私のチームは、何よりもまずPC自作派でありエンスージアストだ。全員が自分のPCを組み、そのPCでゲームをしている。かつてのIntelは、必ずしもそうではなかった。

Hallockの言葉は印象的だが、同時にその裏返しでもある。つまり「かつてのIntelは自作派の気持ちを分かっていなかった」と彼自身が認めている。AMDから12年間の勤務を経て2023年にIntelに移ったHallockにとって、この発言は個人的にも意味があるのだろう。

ただし、口約束の歴史は長い

問題は、Intelがこれまでにも似たような約束をしてきた、ということだ。LGA 1151はKaby Lakeで突然互換性を打ち切られ、LGA 1200は2世代で終わり、LGA 1851は当初の4世代計画が2世代に縮んだ。ユーザーがIntelの「意図」に全幅の信頼を寄せるのは、少し早いかもしれない。

今回のRaptor Lake Refresh第2弾が本当に出るなら、それは「過去のソケットを延命する」という意味で、AMDAM4延命戦略に近い。AMDは2020年登場のRyzen 5000シリーズに対し、2024年にもRyzen 7 5700X3Dを追加投入してAM4の寿命を引き伸ばした。Intelが同じことを本気でやるなら、それは確かにユーザーにとって朗報だ。

ただし「AMDに追いつく」と「AMDを超える」は別の話だ。AMDは既にAM5で4世代以上のサポートをほぼ約束しており、AM6への移行は2030年前後と見られている。Intelが本当にこの競争で勝つには、LGA 1954で計画通り4世代を回し切る実績が要る。それができるかどうかは、これからの数年で判明するだろう。


企業の方針転換は、実績で証明される

Intelはここ数年、自作市場との関係を立て直そうとしている。Core Ultra 200 Plus(Arrow Lake Refresh)の投入、DDR4サポートの継続、Raptor Lakeの供給継続宣言、そして今回のRaptor Lake Refresh第2弾の示唆。個別に見ればどれも小さな動きだが、合わせて見ると方針転換と呼んでも差し支えない。

問題は、方針転換が成果になるまでには時間がかかる、ということだ。LGA 1954で本当に4世代を回せるかは、早くても2028年頃の次々世代CPUが登場してから判定される。それまでの間、Intelは「意図」と「実行」のギャップを埋める実績を一つずつ積み重ねる必要がある。

今回の追加Raptor Lake Refresh計画は、その実績の最初の一歩になり得る。古いソケットを延命すること自体は技術的には難しくない。しかし、それを実際にやるかどうかは、企業としての覚悟の問題だ。5年前のソケットにまだ新品CPUを出すという決断は、これまでのIntelなら絶対にしなかった判断だろう。

変化は、本当に始まっているのかもしれない。


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