PS5でLinuxが正式に動く時代が来た

PS5にLinuxをインストールする方法が、開発者によって公式に公開された。ゲーム機としての機能を維持しながらUbuntu 26.04を起動できるこのハックは、PlayStation史上もっとも大きな「扉」の一つを開けたかもしれない。

PS5でLinuxが正式に動く時代が来た
ps5-linux

PS5Linuxをインストールする方法が、開発者によって公式に公開された。ゲーム機としての機能を維持しながらUbuntu 26.04を起動できるこのハックは、PlayStation史上もっとも大きな「扉」の一つを開けたかもしれない。


ハイパーバイザーの穴から生まれたLinux

ps5-linuxプロジェクトを主導したのは、PlayStationハッキングシーンの第一人者として知られるセキュリティエンジニアのアンディ・グエン(Andy Nguyen、ハンドルネーム theflow0)だ。複数の協力開発者と共に進めてきたこのプロジェクトが、本日4月29日にGitHubでツール一式を正式公開した。PS5の内部で動作するハイパーバイザー(仮想マシンを管理するソフトウェア基盤)の脆弱性を突くことで成立している。

起動するのは Ubuntu 26.04 Resolute RaccoonLinuxカーネル7を搭載したフルインストール版だ。ファンコントロール、カスタムVRAM割り当て、ブーストモードの切り替えといった機能まで端末から操作できるのは、単なるデモではなくデスクトップOSとして実用に近い水準を目指している証拠だと思う。

PS5のSoCはAMD製で、CPUは8コア(16スレッド)で最大3.5GHz、GPUは最大2.23GHz。Linuxのデスクトップ用途やSteamゲーム・各種エミュレーターを動かすのに十分なスペックを持っている。

対応ファームウェアと必要なもの

このハックには条件がある。対応しているのはPS5 Phat(初代の大型モデル)のみで、スリムモデルは現時点で対象外だ。さらにファームウェアのバージョンが3.xx〜4.51である必要がある。現行の5.xx以降では、LinuxはPS5のGameOS仮想マシン内で動作する形になり、機能制限が生じる見込みとされている。6.xx以降への対応は明確に「なし」と宣言されている。

自動アップデートを無効にしていない限り、すでに最新ファームウェアに更新済みの本体がほとんどのはずで、この条件は事実上「古いファームウェアを保持していたユーザー専用」を意味する。

必要なハードウェアは最低64GBのUSBドライブと、有線またはUSBドングル経由のイーサネット接続。PS5本体の内蔵SSDは一切変更されないため、ゲーム機としての使用には影響しない点は重要だ。

ソフトMODとしての限界

ハードウェアを物理的に改造しない「ソフトMOD」である点が、このプロジェクトをユニークにしている。PS5を再起動すれば通常のPlayStation OSに戻り、Linuxの痕跡は消える。つまり毎回起動のたびにエクスプロイトを実行し直す必要がある。

デュアルブート(LinuxとPS5 OSの共存起動)は現時点で非対応。スタンバイモードへの移行もサポートされておらず、開発はまだ継続中だ。

ゲームパッドのDualSenseは現在、内蔵Bluetoothでは動作しないため外付けBluetoothドングルが必要になる。無線LANも内蔵モジュールは非対応で、USBドングルでの接続が前提だ。解像度は現状1080p・1440p・2160pの60Hz止まりで、120Hzや30Hzは将来的に追加される可能性があるとされている。

Sonyが仕掛けたDRMの直後に

このリリースのタイミングは興味深い。直前にはSonyのゲームディスク向けDRMが大きなコミュニティの反発を招いており、その直後にPS5のオープンな活用を可能にするツールが公開された形になっている。偶然の一致かどうかはわからないが、ユーザーの「自分のハードウェアを自分でコントロールしたい」という感情が、こうした開発プロジェクトの推進力になっていることは確かだ。

ps5-linuxプロジェクトのコードは GPL-3.0 ライセンスで公開されており、誰でも閲覧・改変・貢献できる。

開発チームはLinuxカーネルへのアップストリームパッチ(本家カーネルへの取り込み提案)もすでに進めており、drm/amd サブシステムと amd/addrlib へのパッチが送られている。ゲーム機をLinux PCとして使う試みが、Linux本体の品質改善にも貢献し始めているという事実は、オープンソースの生態系として面白い循環だと感じる。

要するに:PS5のハイパーバイザー脆弱性を利用したLinuxブートローダーが公開され、フルデスクトップ環境として動作する。ただし対応は旧ファームウェア機限定、起動のたびにエクスプロイトが必要、無線系は外付けドングル必須という現状だ。

Sonyはどう動くか

Sonyがこの脆弱性に対してパッチを当てるのは時間の問題だろう。すでにファームウェア5.xx以降では挙動が変わっており、Sonyがこの動きを認識していないとは考えにくい。

ただし今回の公開は、単にPS5でLinuxが動いたという話にとどまらない。PS5のSoCであるAMD製チップに関する詳細な知見がオープンに積み上げられ、そのパッチが本家Linuxカーネルに取り込まれていく。封じられても、技術的な知識は残り続ける。

Sonyが次のファームウェアで扉を閉めたとき、それが終わりなのか、次の挑戦の始まりなのかは、もう少し先にならないとわからない。


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