Windows Update刷新、月1再起動とスキップ機能

長年積み上がってきたWindows Updateへの不満に、Microsoftがようやく具体的に応えはじめている。OOBEでのスキップ、無制限の一時停止延長、月1回への再起動統合。地味だが体感に響く変更が一斉に動き出した。

Windows Update刷新、月1再起動とスキップ機能
Microsoft

長年積み上がってきたWindows Updateへの不満に、Microsoftがようやく具体的に応えはじめている。OOBEでのスキップ、無制限の一時停止延長、月1回への再起動統合。地味だが体感に響く変更が一斉に動き出した。


ようやく動いた、長年の不満への回答

Microsoftが4月24日に公開したブログで、Windows Updateの体験を大きく見直したことが明らかになっている。

記事を執筆したアリア・ハンソン(Aria Hanson)が記事内で語ったところによれば、過去数か月で寄せられた 7,621件 を超えるフィードバックを直接読み込んだうえで、ユーザーの声から共通する2つの不満を抽出したという。「都合の悪いタイミングで割り込むアップデート」と「アップデートのタイミングを自分で決められないこと」だ。

この2つは少なくとも10年以上、Windowsを使う人なら誰でも一度はぼやいた覚えのある話だ。仕事中に強制再起動の警告が出る、シャットダウンしたいだけなのに「更新してシャットダウン」しか選べない、新品のPCを開封したのに最初の1時間がアップデート待ち。今回の改善は、そうした摩擦を1つずつ潰しにかかる内容になっている。

4つの「制御」、本命はOOBEと一時停止

Microsoftが今回打ち出したのは、ユーザーの制御を強化する4つの改善だ。

OOBE(初回セットアップ)中にアップデートを即時スキップ一時停止の延長を無制限に更新せずにシャットダウン・再起動できる選択肢を常時表示利用可能なアップデートの内訳をより詳しく表示

地味なリストに見えるが、実際の体験への影響は段違いだ。

OOBEで「あとで更新」が選べる

新品のPCの箱を開けて電源を入れた瞬間、画面に現れるのがOOBE(Out of Box Experience、初期セットアップ画面)だ。これまでは、ここでアップデート確認に入ると、長いときは1時間近く待たされることもあった。

「Update later(あとで更新)」ボタンは今年早い時期にすでに導入されており、今回はその位置付けが正式なロードマップの一部として整理された格好だ。スキップを選べばデスクトップに先に到達でき、アップデートはあとから自分のタイミングで適用できる。

ただし注意もある。スキップを選んだ場合、最新の機能とセキュリティ更新は適用されないままデスクトップに着地する。初期状態は若干不利になるため、Microsoft自身も「リリースから時間を置かずに適用してほしい」と添えている。なお、企業向けのOOBEを管理されている端末や、起動に更新が必須な一部端末ではこの選択肢は出ない。

一時停止の「延長無制限」が地味に大きい

これまでWindows Updateは、最大35日まで一時停止できたが、その期限が切れたらいったん更新を当てない限り再延長できなかった。ここが今回、解禁されている。

新しい一時停止画面ではカレンダー表示が導入され、特定の日付まで停止することもできるようになった。さらに、35日では足りないと感じたら再停止を何度でも繰り返せる。出張、試験、繁忙期、長期休暇。ユーザー自身が「いまは触らせたくない期間」と決めた区間を、ほぼ無期限に守れることになる。

この変更を、セキュリティ専門家の立場からは諸手を挙げて歓迎しにくいかもしれない。脆弱性を抱えたまま使い続けられる窓口が広がるからだ。一方でユーザーの目線では、強制が緩んだぶん「自分で判断する責任」を引き受ける構造になった、と読める。どちらの立場にも理がある。

「シャットダウン」が本当にシャットダウンになる

電源メニューも整理された。「シャットダウン」「再起動」と「更新してシャットダウン」「更新して再起動」が常に4つ並ぶ形になり、急いで電源を切りたいときに更新を巻き込まれる事故が起きにくくなる。

電源を切るつもりで押したのに、数十分のアップデートに巻き込まれてその場を離れられなかった。そんな経験は、おそらく多くの人にとって鮮明な記憶として残っている。電源メニューが「予測どおりに動く」だけで、PCに対するストレスはかなり軽くなる。

再起動後にはアプリを高速で復元する処理も追加された。作業中の画面に戻る時間が短くなる、地味だが体感に効く変更だ。

ドライバ更新の正体が分かるように

4つ目は表示の改善。これまで似た名前で並んでいたドライバ更新に、デバイスクラス(ディスプレイ、オーディオ、バッテリー、HDC、その他)が表示されるようになった。

何が更新されようとしているのかが事前に見える。「とりあえず全部当てる」以外の選択肢を、ユーザーが取りやすくなる小さな進化だ。


「月1再起動」への統合、これが本丸かもしれない

制御の改善と並んで、もう1つの大きな変更がある。月1回のWindows品質更新にあわせて、ドライバ、.NET、ファームウェアの更新を束ねる方針だ。

これまでは、Windows本体、ドライバ、.NET、ファームウェアがそれぞれ別タイミングで降ってくることが珍しくなかった。月に何度も再起動を要求される端末もあったはずで、これが一括化される。

月のうち再起動するのは原則1回。そう聞くと、PCの方がスマートフォンに近づいてきた印象を受ける。

設定画面のWindows Updateを開くと、これまでバラバラに並んでいた更新が「Available updates(利用可能な更新)」という単一セクションにまとまって表示されるようになる。バックグラウンドでダウンロードだけ進み、月次の品質更新のタイミングでまとめて適用される、という流れだ。

ただし、すべてのユーザーが月1回というわけではない。Insider向けのExperimentalチャネル、Betaチャネルでは週次更新、Persistent Seekers(早期受信を選んだリテール端末)では隔週、それ以外のリテール一般ユーザーが月1回となる。今回、Insiderプログラム自体もExperimentalとBetaの2チャネル制に再編されており、開発体制の整理と更新リズムの整理が同時に進んでいる。

なぜ今、Microsoftはこの方向に舵を切ったのか

ここまで並べてみると、今回の改善はどれも「ユーザーが10年以上前から要望していた」内容ばかりであることに気づく。

裏を返せば、これだけ長く放置されていたとも言える。なぜ今なのか。背景には、PCの位置づけの変化がありそうだ。

スマートフォンと比較されるたびに、PCの「最初の1時間」は印象を悪くしてきた。新品を開封してすぐ遊べないハンドヘルドPC、業務開始時に再起動を要求されるノートPC。こうした摩擦は、ほかのプラットフォームに対する乗り換え動機を与えかねない。ApplemacOSで似た強制更新を控えめに扱っていることや、GoogleChromeOSバックグラウンド更新を徹底していることを考えれば、Windowsだけが旧来の流儀を続けるのは合理的でなくなっていた、と見るのが自然だろう。

強制から選択へ。MicrosoftがWindowsに対して持っていた「セキュリティを優先するための権限」を、少しユーザーの裁量に戻した、と読むこともできる。

もう1つの背景として、フィードバックを実際に読み込んでいるという開示の仕方も興味深い。担当者が「7,621件の生の声を自分で読んだ」と書く形式は、Microsoftのこれまでの広報スタイルと少し違う印象を残す。組織として、ユーザーとの距離を縮めたいという意思は伝わってくる。

一般ユーザーに届くのは、もう少し先

今回の機能群は、本日(4月24日)からExperimentalチャネルとDevチャネルに展開が始まっている。リテールの一般ユーザーに届くのはもう少し先で、年内の段階的ロールアウトになる見込みだ。

実際の挙動が宣伝どおりかは、配信後に検証する必要がある。Microsoftの過去の改修には「アナウンスより実装が遅い」「条件付きで一部の人にしか適用されない」例も多く、すべてのWindows 11ユーザーがすぐ恩恵を受けられるわけではない。

それでも、方向性そのものは長年待たれていたものだ。電源ボタンが本当に電源ボタンになる日が、ようやく見えてきた。


参照元

関連記事

Read more

中国製コアを積んだロシア製CPU「イルティシュ」でウィッチャー3が動いた

中国製コアを積んだロシア製CPU「イルティシュ」でウィッチャー3が動いた

中国製コアを搭載しながら「ロシア産」を名乗るサーバー向けCPU「イルティシュ(Irtysh)」が、ゲーミングPCに搭載されてウィッチャー3を30FPS前後で動かすという映像が公開され、国際的な注目を集めている。制裁下のロシアにとって数少ない選択肢のひとつだが、その正体をよく見ると、実情はやや複雑だ。