PS4/PS5デジタル版に30日DRM、ソニー釈明も残る影

PS4/PS5デジタル版に30日DRM、ソニー釈明も残る影
Sony

3月のファームウェア更新以降にPSストアで購入したデジタルゲームに、30日のオンライン検証カウントダウンが組み込まれている。ソニーは「初回1度だけの確認」と説明したが、騒動はそれだけでは収まらない。


静かに埋め込まれた30日タイマー

事の発端は4月25日、ゲーム保存活動を行うX上のアカウント「Does it play?」(@DoesItPlay1)の投稿だ。

PlayStation(およびXboxにも、と思われる)が深刻なDRM問題を展開している。PSNでの新規購入タイトルすべてに30日の検証カウントダウンが組み込まれている。詳細を調査中だ。

PS4ユーザーがゲームの情報画面を開くと、これまでなかった「Valid Period (Start)」「Valid Period (End)」「Remaining Time」という項目が並んでいた。タイマーは30日を指していた。

PS4ユーザーがゲームの情報画面を開くと、これまでなかった「Valid Period (Start)」「Valid Period (End)」「Remaining Time」という項目が並んでいた。タイマーは30日を指していた。

つまりこういうことだ。デジタルで購入したゲームは、30日間ネットに繋がない状態が続くとライセンスが期限切れになり、再接続して再認証するまで起動できなくなる。3月のシステム更新以降に購入したタイトルだけが対象で、それ以前に購入済みのタイトルは影響を受けない。

ソニーから公式説明はないまま、騒ぎは数日で世界中に広がった。

30日ライセンス検証タイマーの影響範囲
購入種別 PS4 PS5 タイマー
UI表示
3月更新前に購入
(デジタル)
3月更新後に購入
(デジタル)
PS4のみ
物理ディスク版
● = 30日タイマー対象 / — = 影響なし。タイマー自体はPS5でも内部処理されているが、UIには表示されない。

検証された現実、そしてCMOS問題

最初は「UI上の表示バグかもしれない」という見方もあった。しかし複数の検証者が、これが単なる表示の問題ではないことを示した。

ハードウェアモッダーのランス・マクドナルド(Lance McDonald)は、PS4/PS5の60fpsパッチで知られる人物だ。彼が状況を再現したのに続き、YouTuberのSpawn Waveが4月27日に公開した検証動画が決定打となった。

Spawn Waveは4種類のタイトルをテストした。4月27日に新規購入したデジタル版2本、1か月前に購入したデジタル版『紅の砂漠(Crimson Desert)』、そしてフィジカル版『PRAGMATA』。すべて通常通り起動した。問題は、PS5 ProからCMOSバッテリーを抜いた直後に起きた。

CMOSバッテリーは本体の内部時計を維持する電池だ。これを取り外すと、コンソールから見て30日タイマーが満了したのと同じ状態になる。Spawn Waveの検証では、購入済みの『紅の砂漠』と物理ディスクのゲームは正常に動作し続けた一方、新規購入のデジタルゲームには「このコンテンツを使用できません。サーバーに接続してライセンスを確認できません」というエラーメッセージが出た。

UI表示だけの問題なら、こうはならない。仕組みは確かに動いている。

PS DRM騒動の時系列
2026年
3月
PS4/PS5ファームウェア更新
告知なしで30日のライセンス検証タイマーを実装。ユーザーは変更に気づかず。
4月25日
「Does it play?」がXで告発
ゲーム保存活動アカウントが新規購入タイトルの30日カウントダウンを発見し投稿。話題が拡散。
4月25日
ランス・マクドナルドが追随
PS4/PS5の60fpsパッチで知られるモッダーが状況を再現し、批判の流れを加速させる。
4月27日
Spawn Waveが検証動画公開
CMOSバッテリーを抜く実機検証で、物理版と購入済みタイトルは無事、3月以降のデジタル新規購入のみ起動不能になることを実証。
4月28日
GameStopが物理版を訴求
「Play really has no limits at GameStop」とX投稿。物理ディスクのほうが制限が少ないことを強調。
4月29日
SIE広報が初めて釈明
GameSpotに対し「初回1度の確認後は追加の検証は不要」と説明。返金詐欺対策が目的と示唆。

ソニーの説明、その狙い

騒動が拡大した4月29日、ソニー側からようやく釈明が出る。SIEの広報担当者がGameSpotに対し、「プレイヤーはこれまで通り購入したゲームにアクセスし、プレイできる。一度のオンライン確認でライセンスを認証すれば、それ以降は追加の確認は不要」と述べた。

ここで初めて、なぜこの仕組みが導入されたのかが明らかになる。前述のDoes it play?が報道メディアKotakuに語った推測がほぼ的中していた。返金詐欺対策である。

具体的にはこういう手口が存在した。攻撃者はPSストア(ウェブ)でゲームを購入し、ライセンスファイルを抽出する。その後、購入から14日以内であれば返金を申請する。本来ライセンスは無効化されるはずだが、抽出済みのファイルをジェイルブレイクしたコンソールに移植すれば、ゲームは引き続き動作する——という抜け道だ。

ソニーは3月のファームウェア更新で、新規購入時にまず14〜30日間有効の一時ライセンスを発行し、初回のオンライン確認でそれを永続ライセンスに切り替える方式に変更した。詐欺師がライセンスを抽出しても、認証前に返金されればその一時ライセンスは無効になる。技術的には筋が通った設計だ。

それでも消えない不信

公式説明で一件落着、とはならなかった理由が二つある。

第一に、コミュニケーションの完全な不在だ。3月のファームウェア更新時に、ソニーはこの変更について一切告知しなかった。ユーザーが偶然UI上の「Valid Period」表示を見つけ、Xで広まり、メディアが追い、ようやく公式説明が出るまでにほぼ1週間かかった。本来なら水面下で完結するはずの裏側の仕組みが、UIの表示漏れによって露呈し、対応が後手に回った形だ。

第二に、長期的な所有権の問題は何も解決していない。

CMOSバッテリーが切れた瞬間、永続ライセンスを持っているはずのデジタルゲームがまた認証を要求する。ある検証者は、コンソールをプライマリ機に設定していてもCMOSバッテリーが切れれば、タイマー付きのデジタルゲームは再びプレイ不能になることを確認したと報告した。今は問題ない。だがPSNサーバーが将来停止したら? そのとき手元のCMOSが切れたら?

「永続ライセンス」の永続性は、結局ソニーのサーバーが生きていることに依存している。そして据置機の歴史において、ストアのサーバーは永遠ではない。任天堂のWii、Wii U、3DSのeShopは順次閉鎖されてきた。

2013年の自分への、皮肉な仕打ち

この騒動を語るうえで避けて通れないのが、2013年のソニー自身の姿だ。

E3 2013、PlayStation 4の発表会で、当時SIEの幹部だったジム・ライアン(Jim Ryan)とアダム・ボイス(Adam Boyes)が壇上に上がり、無言で1本のディスクを手渡し合うだけの動画を見せた。タイトルは「How to share games on PS4」。

背景には、Microsoft Xbox Oneが当初発表していた24時間ごとのオンライン認証と中古ゲーム制限があった。ソニーはそこを徹底的に突き、「PS4はオンライン確認を必要としない」と高らかに宣言した。この競争圧力によってMicrosoftは発売前にDRMポリシーの全面撤回に追い込まれた。あの瞬間、ソニーは消費者寄りの選択肢として勝利を掴んだ。

そして13年後の今、ソニー自身が30日のオンライン認証をデジタル版に課している。期間こそ伸びたが、構造は驚くほど似ている。Redditやコメント欄では「Xbox OneのDRMを揶揄しておきながら、結局同じ道を歩むのか」という声で埋まった。

2013年Xbox One DRMと2026年PS DRMの構造比較
項目 Xbox One
(2013年当初案)
PS4/PS5
(2026年3月以降)
対象 物理+デジタル
全タイトル
3月以降購入の
デジタル新規のみ
検証間隔 24時間ごと 初回1度のみ
(公式説明)
中古販売
制限
ライセンス料
必要
該当せず
(物理版は対象外)
事前告知 発表会で
公表
告知なし
(UIで露呈)
最終的な
対応
発売前に
全面撤回
釈明のみ
(撤回はなし)
2013年6月のXbox One初期DRMポリシーは発表後の批判を受け、Microsoftが発売前に全面撤回した。Sonyは当時E3 2013で「PS4はオンライン確認を必要としない」とアピール。

実害は確かに小さい。ネットに月1度繋ぐ程度の負担だ。だが2013年のソニーが放った言葉は、ハードウェアではなく消費者への約束だった。その約束を裏側で静かに修正し、UI表示の漏れで露呈するまで黙っていた——この経緯が、技術的な合理性を超えて感情的な反発を呼んだのだろう。

物理パッケージという、忘れられかけた選択肢

ゲーム小売大手GameStopは4月28日、Xに「Play really has no limits at GameStop」(GameStopなら、プレイは本当に制限なし)と投稿した。物理パッケージを買えば、こうした問題は起きない、というメッセージだ。

タイミングは絶妙だった。物理メディアを売る企業が、デジタル化の進む業界で生き残る理由を、ソニー自身が証明する形になった。

ただし物理パッケージにも限界はある。発売日パッチが必須の作品は依然多く、サーバーが停止すれば物理ディスクでもオンライン要素は失われる。ディスクが万能ではないが、少なくとも30日タイマーから自由だ。それだけのことが、いま改めて価値を持ってしまう時代になった。

ライセンスとは何か、誰がそれを決めるのか

今回の件は、デジタルゲームが「購入」ではなく「ライセンス供与」であるという契約の本質を可視化した出来事だった。ソニーの利用規約には元々その旨が明記されている。物理ディスクを所有するのと、デジタル版のライセンスを取得するのとは、法的にも実態としても違う。それを多くのプレイヤーは漠然と知っていたが、CMOSバッテリーが切れた瞬間にゲームが起動しなくなるという現象は、その違いを生々しく突きつけた。

ソニーの説明は技術的には正しい。返金詐欺は実在する問題で、対策は必要だ。一時ライセンスから永続ライセンスへの切り替えという設計も、悪意のあるユーザーだけを狙い撃つ合理的な方式だろう。

ただ、合理性と納得感は別物だ。ユーザーに何も告げず、UIにだけタイマーが残り、サポートチャットの応答が二転三転する——この一連の流れで、ソニーがプレイヤーに残したのは「自分のライブラリは、いつ仕様変更されるかわからない」という感覚だ。

13年前、ソニーが勝ち取ったのはハードのスペックではなく、消費者からの信頼だった。その信頼の貯金が、いま少しずつ目減りしている。次の据置機が登場するころ、その残高はどれくらい残っているだろうか。


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