Ubuntu 26.04 LTS公開、Linux 7.0搭載
CanonicalがUbuntu 26.04 LTS「Resolute Raccoon」を公開した。Linux 7.0カーネルとGNOME 50、Waylandへの完全移行、Rustベース中核ユーティリティ採用など、次の2年を規定する要素が揃っている。
CanonicalがUbuntu 26.04 LTS「Resolute Raccoon」を公開した。Linux 7.0カーネルとGNOME 50、Waylandへの完全移行、Rustベース中核ユーティリティ採用など、次の2年を規定する要素が揃っている。
公開、2031年4月まで5年の標準サポート
Ubuntu 26.04 LTSのISOは4月23日、公式サイトおよび各フレーバーで配布が始まっている。標準サポートは2031年4月まで5年間、Ubuntu Proを併用すれば最長10年のESM(Extended Security Maintenance)まで延伸される。
LTSは2年に一度の節目だ。24.04 LTS(Noble Numbat)から直接移行するユーザーにとって、今回は「飛び石を踏まずに2世代分の変化をまとめて受け取る」タイミングになる。後述するが、その2年間に起きた変化は見た目より大きい。
Canonicalは同社ブログで、シリコン・カーネル・クラウド向けの最適化を束ねる旗艦リリースとして位置づけている。マーケティングの定型句ではあるが、実際のパッケージの中身を眺めると、「最新に追従する」という以上の意味が込められていることがわかる。
Linux 7.0、名前のインパクトと実体
最も目を引くのはLinux 7.0カーネルの採用だ。バージョン番号は派手だが、これは設計の全面刷新を意味しない。2026年2月にLinux 6.19がリリースされた後、リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)が「マイナー番号の桁が増えて数えるのが面倒」という自身の慣習に従って、次のカーネルを7.0と名付けた経緯がある。2.6→3.0、3.19→4.0、4.22→5.0、5.19→6.0で繰り返されてきた儀式的な番号変更だ。
Linux 7.0は「メジャーアップデート」ではなく「番号の繰り上げ」だ。数字の大きさと技術的飛躍のギャップを、使い手が自分で埋める必要がある。
とはいえ中身は軽くない。Intel Nova LakeやAMD Zen 6プロセッサの初期サポート、Intel Diamond Rapidsの対応、F2FS・exFAT・EXT4ファイルシステムの改良、そしてデスクトップ体感に直結する「Time Slice Extension」スケジューラ拡張などが入っている。ユーザ空間のプロセスがクリティカルセクション中に「今は中断しないでほしい」とカーネルに要求できる仕組みで、サーバ用途での効果は限定的だが、レスポンシブな操作感が求められる場面には響く。
Ubuntu 24.04 LTSのカーネル6.8と比べると、ハードウェアサポートの幅は体感できるほど広がっている。
GNOME 50、Waylandオンリーへの踏み切り
デスクトップ側の最大の転換点はGNOME 50への更新と、それに伴うX11セッションの廃止だ。GDMからGNOMEのX11セッションは取り除かれ、GNOMEデスクトップはWayland専用となる。
ただし誤解してはいけない。これはGNOMEセッションだけの話で、KDE Plasma・Xfce・MATEなど他のデスクトップ環境では引き続きX11セッションが選べる。既存のX11アプリケーションもXwayland互換レイヤーを介して動作する。つまり「GNOMEを使う限りはWayland」という条件付きの完全移行だ。
GNOME 50では、これまで実験的と見なされていた機能が「既定」に昇格している。可変リフレッシュレート(VRR)、分数スケーリング、リモートデスクトップのハードウェアアクセラレーション(VulkanとVAAPI)、アクセシビリティスクリーンリーダーOrcaの再設計など、高解像度ディスプレイや高リフレッシュレートモニタを使う層には明確な恩恵がある改善が並ぶ。
既定アプリケーションの入れ替えも目立つ:PDFビューアのEvinceはPapersに、画像ビューアEye of GNOMEはLoupeに、GNOME TerminalはPtyxisに、System MonitorとPower Statisticsは一本化されてResourcesに、動画プレイヤーはShowtimeが既定となった。
Rustで書き直された中核ユーティリティ
セキュリティ文脈で最も重い変更は、UNIXの聖域とも言える基本コマンド群がRustベースの実装に置き換わったことだ。sudoはsudo-rsが、GNU Coreutilsの一部はuutilsが、それぞれ既定となっている。
メモリ安全性を保証する言語で書き直すことで、バッファオーバーフローや解放済みメモリ参照といった脆弱性のクラスそのものを消しにいく、という発想だ。挙動の互換性は保たれているが、長年のCベース実装に慣れたシステム管理者にとっては心理的な境目になる。
Rustベース化は「C言語で書かれた特権プログラムが、特権プログラムであり続けてよいのか」という問いを、ディストリビューションから突きつけた形だ。答えは「段階的にノー」だった。
暗号面ではOpenSSHとOpenSSLが既定で耐量子(PQC)アルゴリズムを使うように設定され、TPMベースのフルディスク暗号化も実験的扱いから安定扱いに昇格した。インストーラの時点で、手動介入なしに「TPMで守られた暗号化インストール」が選べる。
RISC-V・ROCm・CUDA、ハードウェア地図の更新
アーキテクチャ面では、RVA23がRISC-Vの公式ベースラインとして位置づけられた。Ubuntu 25.10でRVA23を最小要件に切り替えた流れを、LTSでそのまま固定化した形だ。RVA23はARMv9やx86-64v4と機能的に並ぶプロファイルで、今年中に市場投入されるRVA23対応ハードウェアに、長期サポート付きの公式プラットフォームが揃うことになる。
GPU計算スタックでは、AMD ROCmがUbuntu公式アーカイブに取り込まれた。従来はAMDの外部リポジトリを追加し、依存関係を手動で管理する必要があった。Canonicalが専任チームを設置してパッケージ化を引き受ける形で、aptコマンド1つでインストール可能になる。NVIDIA CUDAも公式リポジトリから導入できる構成になっており、AI/ML開発者の初期セットアップがLinuxディストリビューション側で標準化された意味は大きい。
ただしapt install rocmのメタパッケージはまだアーカイブに揃っておらず、既存パッケージも一部はROCm 7.1系に留まる。完成予想図に対して、リリース時点の実装はまだ途中段階にある。
「Resolute」の由来
コードネーム「Resolute Raccoon」を選んだのは、2025年元旦に45歳で世を去ったDebian・Ubuntu元リリースマネージャのスティーブ・ランガセック(Steve Langasek)氏だった。長年病と向き合いながら、リリース工程の裏側でコミュニティを支え続けた人物だ。
「Resolute」は断固とした・揺るがない、という意味の語だ。数百万台のシステムが5年から10年にわたって依存するLTSの性格に、彼が選んだ言葉が重ねられている。
技術リリースは、しばしば技術だけの話にはならない。名前ひとつに、誰がそれを選んだのか、なぜその語だったのかという記憶が刻まれる。
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サーバサイドと動作要件
サーバ版にはOpenSSH 10.2、PostgreSQL 18、MySQL 8.4、Docker 29、QEMU 10.2.1、Valkey 9.0、HAProxy 3.2、OpenStack 2026.1、PHP 8.5.2などが揃う。AMD SEV-SNPとIntel TDXのホスト対応が入り、リアルタイムカーネルもUbuntu Proの囲いを出て通常アーカイブで提供される。Arm64サーバにもLivepatchによる無停止カーネルパッチが初めて拡張された。
デスクトップの推奨メモリは24.04 LTSの4GBから6GBに引き上げられた。最低要件ではなく「快適に使うための推奨値」だが、GNOME 50とWayland、スナップ統合の重量化を考えれば妥当な線だ。4GB機でも動作はするが、それが本命の想定環境ではなくなった、という表明でもある。
まとめ──節目の重さ
Linux 7.0という数字、GNOME 50のWayland完全移行、Rustによる中核コマンドの置き換え、ROCmとCUDAの公式パッケージ化。一つ一つは別々の流れだが、2026年のLTSでまとめて着地したことで、「次の2年のLinuxデスクトップ/サーバの輪郭」が今日固まった。
24.04 LTSを使っているユーザーにとって、移行の検討は「いつ動くか」から「何を失い何を得るか」の段階に入る。X11依存のワークフローが残っているなら、GNOMEではなくKDEやXfceを選ぶ判断もあり得る。ROCmやCUDAを使うAI/ML用途なら、追加リポジトリに頼らない構成の軽さは実務で体感できる。
派手な数字と静かな追悼、その両方を持った節目のリリースだ。
参照元
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