Windows 11 24H2/25H2、モダンスタンバイ大幅改良

Modern Standby(モダンスタンバイ)の「眠れない問題」にMicrosoftが静かに手を入れていた。バッテリー消費を検知するとウェイク要因を遮断し、画面オフまでの時間も短縮。気づかれぬまま24H2/25H2の挙動は変わっている。

Windows 11 24H2/25H2、モダンスタンバイ大幅改良

Modern Standby(モダンスタンバイ)の「眠れない問題」にMicrosoftが静かに手を入れていた。バッテリー消費を検知するとウェイク要因を遮断し、画面オフまでの時間も短縮。気づかれぬまま24H2/25H2の挙動は変わっている。


ノートPCが「勝手に起きる」問題、ようやく終止符か

ノートPCを閉じて鞄に入れ、出先で開けたらバッテリーが空。Modern Standby世代のWindows PCを使う人なら、一度は経験したことがあるはずだ。本来は省電力の眠りに入っているはずのデバイスが、何かに揺り起こされて電力を吸い続けていた、という現象である。

この長年の不具合に対して、Microsoftが静かに手を打っていた。Neowinが本日、Microsoftのサポートドキュメントを精査して報じたところによれば、Windows 11 24H2 で導入された省電力強化策が、25H2にも引き継がれている。派手な発表もなく、リリースノートで強調されたわけでもない。だが、挙動は確実に変わっている

画面オフとスリープのデフォルト値が短縮された

最も分かりやすい変更は、画面オフとスリープに入るまでのデフォルト時間の短縮だ。アイドル時の電力消費を抑えることが目的で、Modern Standby対応機とレガシーS3対応機の両方で値が引き下げられている。

Modern Standby対応機の場合、バッテリー駆動時の画面オフは従来の4分から 3分 に、電源接続時は10分から5分に縮められた。デバイスがスリープに入るまでの時間も同様に短縮されている。S3スリープを使う旧世代機ではもう少し緩やかで、バッテリー駆動時のスリープは15分から10分、電源接続時は30分から15分になった。

数字だけ見れば地味な変更だが、これは「使っていない時に何分で眠るか」という、PCの省電力性能を直接左右する設定値だ。世界中のWindows PCのデフォルトが一斉に書き換えられた、と捉えると影響範囲は決して小さくない。

新デフォルト値(Modern Standby機)

バッテリー時の画面オフ:4分 → 3分 電源接続時の画面オフ:10分 → 5分 バッテリー時のスリープ:4分 → 3分 電源接続時のスリープ:10分 → 5分

「過剰なバッテリー消費」を検知すると、ウェイク要因が自動で切られる

設定値の変更以上に踏み込んだのが、Modern Standby中の振る舞いそのものに対する変更だ。Microsoftはハードウェア開発者向けドキュメントで、24H2以降の挙動についてこう記している。

Windows 11 バージョン 24H2 で、予期しないバッテリー消費を防ぐためのモダンスタンバイ向け省電力策が新たに導入された。過剰なバッテリー消費が検知されると、ほとんどのウェイクソースが無効化される。

ウェイクソースとは、スリープ状態のSoC(System on a Chip:CPUなどを統合した中核チップ)を起こすトリガーになる要因のことだ。Wi-Fi通信、BluetoothUSB機器の動作、ネットワーク経由の通知、Windows Updateの巡回など、Modern Standbyでは多数の要因がデバイスを起こせるよう設計されている。常時接続を実現するために必要な仕組みだが、これが暴走するとバッテリーが眠っているはずの間に消えていく、という現象につながっていた。

新しい挙動では、Windowsが「異常な消費」を検知した時点で、ほとんどのウェイクソースが自動で遮断される。この保護モードに入ると、デバイスを起こせるのは電源ボタンの押下と蓋を開ける動作だけになる。バックグラウンドの通知も、スケジュールされた更新も、Modern Standbyを破る権限を失う。

これは設計思想としては大きな転換だ。Modern Standbyの売りだった「常時接続」を、バッテリー保護のために一時的に放棄する選択肢を、OSが自動で取るようになった。

蓋を閉じた状態での電源ボタン挙動も変わった

24H2以降のもう一つの変更が、入力抑制(input suppression)の常時有効化だ。

クラムシェル型のノートPCで、蓋を閉じた状態で電源ボタンを押した時の挙動が変わっている。従来は画面が点くケースもあったが、24H2以降は外部ディスプレイが接続されていない限り、画面はオンにならない。鞄の中で電源ボタンが押された時の意図しない画面点灯と電力消費を、根本から防ぐ仕組みだ。

この入力抑制は、以前はDC電源(バッテリー駆動)時のみ有効だったが、24H2以降はAC電源接続時にも適用されるようになった。Microsoftの言葉を借りれば、抑制が解除されるのは「外部ディスプレイが接続されている時」だけだ。

ドック経由で外部モニターを使う運用には影響しない。一方で、それ以外の場面では蓋を閉じた瞬間にディスプレイ系の挙動が完全に封じられる、と理解しておくのが正確だ。

音声によるウェイクは廃止された

地味だが見逃せないのが、音声入力によるウェイクのサポート終了である。Microsoftは公式ドキュメントで「Windows 11 バージョン 24H2 以降、音声入力でデバイスをスリープから復帰させることは今後サポートしない」と明記している。

ハードウェアキーワードスポッター(特定のキーワードだけを聞き分ける専用回路)を搭載した一部の機種では、声を発するだけでPCを起こすことができた。しかしこの仕組みはバッテリー消費の代償が大きく、結果として廃止された格好だ。Modern Standbyの設計思想だった「スマートフォンのような常時応答」から、Microsoftがじりじりと退いていることがうかがえる。


何が起きていたのか、そして何が変わったのか

これらの変更を一つの線で結ぶと、Microsoftがやろうとしていることが見えてくる。Modern Standbyが本来想定していた「スマホのような体験」は、ノートPCのバッテリーと相性が悪かった。常時接続のために起き続けるSoC、起こされ続けるシステム、消えていくバッテリー。何年もユーザーが訴え続けてきたこの構図に、24H2は「諦めて深く眠る」選択肢を組み込んだ。

過剰消費を検知したら静かに退却する。蓋を閉じたら画面は意地でも点けない。音声で起こす機能は引っ込める。どれも「常時接続」というModern Standbyの理念からすれば後退だが、現実のバッテリー寿命と引き換えに得たものは大きい。

24H2/25H2のModern Standbyは、設計思想としては一歩引いた格好になった。理想を追うより、今そこにあるバッテリーを守ることを優先した、と言い換えてもいい。

Microsoftが今回の変更を派手に発表しなかったのは、おそらく意図的だ。Modern Standbyが何年も期待を裏切り続けてきた経緯を考えれば、「直しました」と大声で言える種類の話ではない。サポートドキュメントの片隅に書かれた一文と、ハードウェア開発者向けの仕様書に残された注記。それが、何年もの不具合報告に対するMicrosoftの回答の形だった。

24H2か25H2を使っているなら、あなたのPCの挙動は、おそらくもう昔のModern Standbyではない。


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