PS4/PS5に30日DRM疑惑、デジタル所有権が揺らぐ

PS4/PS5でデジタル購入したゲームに、30日ごとのオンライン認証を要求する仕様が出現している。ソニーは沈黙を続けており、バグなのか意図的なDRMなのかの判別がつかない。

PS4/PS5に30日DRM疑惑、デジタル所有権が揺らぐ
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PS4/PS5でデジタル購入したゲームに、30日ごとのオンライン認証を要求する仕様が出現している。ソニーは沈黙を続けており、バグなのか意図的なDRMなのかの判別がつかない。


デジタル購入ゲームに「有効期限」が表示される異常事態

「自分が買ったはずのゲームが、ある日突然動かなくなる」。そんな悪夢のような状況が、いまPS4/PS5ユーザーの間で現実味を帯びはじめている。直接の被害はまだ確認されていないが、その可能性を示すカウントダウンが、いま画面上に確かに表示されている。

ことの発端は4月25日、モッダーでYouTuberのランス・マクドナルド(Lance McDonald、@manfightdragon)の投稿だった。彼が共有したのは別のYouTuber「Modded Hardware」が公開した動画のスクリーンショットで、PS4の「Don't Starve Together: Console Edition」の情報画面に見慣れない項目が並んでいた。「Valid Period (Start)」、「Valid Period (End)」、そして「Remaining Time: 20 Days」。デジタル購入したはずのゲームに、明確な有効期限が刻まれていたのだ。

ひどいDRMがPS4/PS5の全デジタルゲームに導入された。購入したデジタルゲームは、30日ごとにオンラインで認証する必要がある。30日間ネットに繋がなければ、ライセンスが失われる。

マクドナルドの主張に対し、より具体的な実機検証を行ったのが別のYouTuber「Spawn Wave」だ。彼は4月27日に公開した動画で、PS5 Proを使い4本のゲーム(今日購入したばかりのSaint SlayerとVampire Crawlers、約1か月前に購入済みのCrimson Desert、ディスク版のPragmata)でテストを実施した。

検証は単純明快だった。コンソールから内部時計を司るCMOS電池を取り外し、30日経過した状態を疑似的に作り出す。すると、新しく購入した2本のデジタルゲームは起動を拒否し「Can't use this content. Can't connect to the server to verify your license.」(このコンテンツは使用できません。ライセンスを認証できません)というエラーが表示された。一方、購入済みのCrimson Desert(鍵マーク付きで起動)とディスク版Pragmataは問題なく起動した。マクドナルド自身も「コンソールを"いつも使うPS4"(Primary)に設定しても、この30日制限は回避できない」と投稿で警告している。

ソニーは沈黙、しかしサポートチャットは「仕様」と回答

問題をさらに複雑にしているのが、ソニー本体からの公式声明が一切出ていない点だ。

4月28日、Xユーザーの@HazzadorGaminがPlayStation Online Assistantに問い合わせた結果が話題になっている。チャットボットの回答は明確で、「2026年3月のシステムアップデート以降に購入したデジタルコンテンツが対象」「30日間ネット接続がないとライセンスが失効し、ゲームが起動しなくなる可能性がある」「コンソールを"Primary"に設定してもこの30日要件は回避されない」と、マクドナルドの主張をほぼそのまま追認する内容だった。

30日間オンラインに繋がらなかった場合、ライセンスは失効し、接続が回復するまでゲームが起動しないことがある。

ただしAIチャットボットの回答を「公式声明」とみなすべきかは別問題だ。過去にAIアシスタントが誤情報を返した事例は他社含め枚挙にいとまがない。実際、Xユーザーが受け取ったサポート回答は矛盾しており、NikTekには「30日ごとにオンライン接続が必要」と肯定する一方、別のユーザーGhoulWorldOrderには「30日ごとの再認証は不要」と正反対の回答が返された。私は、AIが記事化された情報を学習して場当たり的に返している可能性も否定できないと考えている。ソニー本体の公式コメントは依然として出ていない。


「故意のDRM」か「修正ミスのバグ」か

混迷を深めているのが、ゲーム保存活動を行うアカウント「Does it play?」(@DoesItPlay1)が4月25日に投稿した内部情報だ。

匿名のインサイダーから連絡があった。今回のソニーのDRM問題は意図的なものではない。エクスプロイト(脆弱性)の修正中に、何かを偶然壊してしまったようだ。混乱を招くUIの存在は以前から認識していたが、緊急性が低いと判断していたらしい。

この主張を裏付けるような検証も上がってきている。海外フォーラムReseteraでは、4月初旬に購入したゲームで26日間の制限ライセンスが発行されたものの、30分後に再確認すると永続オフラインライセンスに自動で書き換わっていたとの報告があった。さらにPlayStationストアの製品ページには、いまも「PS4の主要機では一度ライセンス料を支払えばオフラインでプレイできる」という従来通りの記載が残っている。

過去の前例も見過ごせない。複数の海外メディアが整理しているところによれば、2022年にも類似のライセンス発行不具合が一時的に発生し、ソニーが静かに修正した事例があるという。今回の症状は、その2022年のインシデントと酷似している。

XboxOneの悪夢、ソニーは自ら踏襲するのか

仮にこれがバグだとしても、ユーザーの怒りが燃え上がっているのには理由がある。

2013年のXbox One発表時、Microsoftは24時間ごとのオンライン認証を必須とする仕様を発表し、業界全体から猛批判を浴びた。当時のソニーは、PS4のディスクを友人に手渡すだけの動画を公開してこの仕様を皮肉り、消費者寄りの姿勢を強烈に印象付けた。13年後、その同じソニーが30日DRMで似た構造を作り出している――故意か偶然かを問わず、この皮肉は痛烈だ。

Sony既存の方針には100%変更がない。PSストアの全ページにいまも「主要機ではPSNサインイン不要」と明記されている。

Reseteraユーザーが指摘するこの矛盾は重要だ。約款を更新せず、声明も出さず、ストア記載とは異なる挙動が静かにロールアウトされる――この透明性の欠如こそが、ユーザーの不信を最も強く煽っている。


影響を受けるのは誰か

冷静に整理すると、この問題が直撃するのは限定的な層だ。3月のファームウェア更新以降に購入したデジタルゲームのみが対象で、それ以前に購入したタイトルは影響を受けない。30日に1度ネットに繋ぎさえすれば、何の問題も発生しない。

しかし、「30日に1度ネットに繋げば済む」という前提が成り立たない人々が確実に存在する。長期出張や入院で家を空ける人、回線が不安定な地域に住むユーザー、軍関係者で長期任務に出る人、そして将来PSNサーバーが停止したときの全ユーザーだ。30日カウントダウンは、デジタル所有の脆さを可視化する装置として機能してしまった――問題の本質はそこにある。

ストップ・キリング・ゲームズ(Stop Killing Games)運動が欧州で勢いを増している中、このタイミングで起きた事案であることも見逃せない。バグであれ仕様であれ、ソニーは「自社のサーバーを切れば、ユーザーの購入物を無効化できる仕組みを技術的に保有している」ことを図らずも証明してしまった。

ソニーに求められるのは「沈黙の解除」だけだ

最も奇妙なのは、ソニーがいまだに何の声明も出していない点だ。バグなら「バグです、修正します」と言えばユーザーの不安は鎮まる。仕様変更なら、それはそれで批判されるが少なくとも透明性は担保される。沈黙を続けることだけが、両方の悪い結果――不信感の蓄積と、いつか訪れるかもしれない実害――を同時に育てる選択肢になっている。

ゲーム業界紙Push Squareは「現時点でライセンスが取り消された証拠はなく、影響は新規購入のみ」と慎重な見方を示しつつも、ソニーへの問い合わせを継続していると報じている。私もこの慎重論には同意する。30日経過で実際にゲームが起動できなくなった事例は限定的で、自動修正された報告も存在する。ヒステリーに走る材料は、まだ揃っていない。

ただし、ソニーの沈黙がこのまま続けば話は別だ。バグなら認め、仕様なら説明する。それだけのことができない理由が、いったいどこにあるのか。

ユーザーが本当に怖いのは、30日のカウントダウンそのものではない。そのカウントダウンを押し付けてくる企業が、自分たちに何の説明もしないという事実なのだ。


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