ROG Equalizer初の実機レビュー、16pin温度が9℃低下

ASUSがRTX 50シリーズの溶融問題対策として投入したROG Equalizer。その初のユーザー実機テストがChiphellに出ており、16pinコネクタ温度は標準ケーブル比で約9℃下がっている。

ROG Equalizer初の実機レビュー、16pin温度が9℃低下
shansoft

ASUSRTX 50シリーズの溶融問題対策として投入したROG Equalizer。その初のユーザー実機テストがChiphellに出ており、16pinコネクタ温度は標準ケーブル比で約9℃下がっている。


最初のユーザーテストで出た9℃差

ROG Equalizerは2026年4月にASUSが発表した12V-2x6ケーブルで、RTX 5090などで続く16pinコネクタの溶融・過熱問題に対する同社の回答だ。メーカー発表時点では「中央4本の線を切断した極限条件で73.4℃、標準ケーブルでは146℃」という比較データが示されていた。ただこれは意図的に故障を作り出した試験であり、通常利用時の挙動を示すものではない。

初の実機レビューを投稿したのは、中国PCコミュニティChiphellのユーザーshansoftだ。UNIKO's HardwareがXで取り上げたことで英語圏にも拡散した。テスト環境はGIGABYTE GeForce RTX 5090D AORUS Master ICEFurMarkで600W負荷させるというものだ。

投稿者は2種類の電源とケーブルを比較している。従来のROG Thor II 1200W付属の標準ケーブルと、2026年モデルのROG Strix 1200W PlatinumにバンドルされるROG Equalizerだ。結果はGPU側コネクタで59.8℃から50.7℃への低下、差は約9℃となった。16pinの電圧降下も改善しており、公称12Vからの差が0.04V程度縮まったとしている。

ASUS発表値との温度ギャップをどう読むか

ASUS公式の73.4℃ vs 146℃という数字と、実機の59.8℃ vs 50.7℃では桁が違う。ここで戸惑うユーザーも多いはずだが、両者は比較している条件がそもそも違う。

ASUSの公式値は「中央4本の+12V線を物理的に切断し、残りの線に負荷を集中させる」という極限シナリオで取得されたものだ。実使用でコネクタが完全に溶融するようなケースを再現するための試験であり、正常な接続状態の温度を示すものではない。

一方、shansoftのテストは正常接続状態での600W負荷だ。ここでの9℃の差は、ASUSが謳う「電流均等化」が日常利用でも実際に効いていることの傍証になる。RTX 5090クラスのGPUを長時間稼働させるユーザーにとって、10℃近い温度マージンは無視できない数字だ。

ただし留意すべき点もある。投稿者自身が電源を変更しているため、ケーブルだけの効果なのか、電源ユニットが備えるGPU向け電圧安定化機能の差が混ざっているのか、このテスト単独では分離できない。ASUSROG Thor IIIおよびROG Strix Platinumに「GPU-First」と呼ばれる電圧検出・安定化機能を搭載しており、これが電圧降下の改善に寄与している可能性もある。

「電源ごと買い換え」問題と15ドルの別売り価格

もう一つ、今回の投稿で注目されたのは価格情報だ。投稿者はASUSカスタマーサポートに問い合わせ、ROG Equalizerの単体販売は2026年5月ごろ、価格は約100人民元(15ドル前後、約2,200円)で開始される見込みだという回答を得たという。

現時点でROG Equalizerは2026年モデルのROG Thor IIIおよびROG Strix Platinumバンドルされる形でのみ提供されている。既存の同シリーズPSUオーナーには「優遇購入プログラム」が用意されるが、無償交換ではなく割引販売であることをASUSは明確にしている。VideoCardzによればこのプログラムは5月中旬に開始予定だ。

Chiphellのユーザー情報によれば、1200W ROG Strix PSUの標準版が1,599人民元、ROG Equalizerバンドル版が1,899人民元で、差額は300人民元(約41ドル)。単体販売予定の100人民元とは開きがある。

この価格差は、ASUSがコネクタ溶融リスクに真剣に向き合っているかを測る一つの指標になる。NVIDIAが16pinコネクタ仕様を変えないまま世代を重ねる中、対策コストを誰が負担するかという問題が浮上している。ASRockは温度センサー内蔵ケーブルで応えた。MSIはソフトウェア監視で応えた。ASUSは電流均衡化とアンペア容量の増強で応えた。しかしどの解決策も、本来NVIDIAが規格レベルで解決すべき問題の肩代わりだ。

15ドルで解決するなら、それはなぜ標準化できないのか

ROG Equalizerの単体販売価格が本当に15ドル前後で実現するなら、それはそれで疑問も生む。この価格で作れるなら、なぜ12V-2x6の業界標準ケーブル自体がこの水準の電流均衡化を実装していないのか。答えは単純で、現行の12V-2x6規格が9.2A/線を前提に設計されており、17A/線の設計余裕を持たせるのは規格外のオーバースペックだからだ。

つまりROG Equalizerは「規格通りでは不十分だ」という現状認識に基づく製品であり、ASUSNVIDIAの仕様設計に対して暗に異議を唱えているとも読める。ユーザーにとっては数千ドルのGPUを守るための数十ドルの保険だが、業界にとっては規格の限界が露呈した瞬間でもある。

RTX 5090オーナーが実機の9℃低下を確認したのは、メーカー発表の143℃差よりもむしろ説得力を持つ。ラボの極限試験は「壊れないこと」を証明するが、日常の9℃は毎日の温度マージンが広がることを意味する。どちらがユーザーの安心感に直結するかは言うまでもない。

問題は、この保険料を払えるユーザーと払えないユーザーがいるという事実だ。RTX 5090本体にさらに2,000円を積んで対策ケーブルを買えるのは、まだ恵まれている部類だろう。本来なら、この保険はケーブル込みで標準搭載されるべきものではないか。


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