Ryzen 9 9900Xが突然死。基板裏に膨れた「水ぶくれ」
AMDのRyzen CPUが内側から壊れる報告が、また一つ増えた。今度の主役はRyzen 9 9900X。MSI MAG X870E Tomahawk WiFiとの組み合わせで、購入から1年足らずで突然起動しなくなった。
何が起きたか
ある日、PCがPOSTを拒否した。ファンだけが回り、マザーボードのPOSTコードは「00」、CPUデバッグLEDが赤く点灯したまま動かない。CMOSリセットもBIOSフラッシュバックも効果なし。
クーラーを外してCPUを取り出すと、ヒートスプレッダの表面は無傷だった。サーマルペーストの塗り広がりも正常。だが裏面の中央付近に、小さな膨らみがあった。基板の層が内側から剥離し、泡のように盛り上がっている。指でなぞれば凸がわかる。投稿者はこれを「水ぶくれ」と表現した。
My Ryzen 9 9900X just suddenly died (Code 00 / Red CPU LED). Pulled it out and found a physical "bump" / blister on the bottom pads. Anyone seen this before?
by u/TheImmigrantEngineer in MSI_Gaming
ソケットピンは目視では真っ直ぐだが、膨張箇所の真下にあたるソケット部分がわずかに圧迫されたように見えるという。
設定はほぼ定格だった
手動オーバークロックや電圧調整は一切していない。唯一の変更点は、BIOSでPrecision Boost Overdrive(PBO)を有効にしていたことだ。BIOSは2026年初頭のバージョンで、1月下旬から2月上旬にかけてフラッシュしたという。電源はCorsair RM1000X。投稿者は別のシステムに接続して正常動作を確認しており、電源は原因から除外している。
PBOはAMDが公式にサポートするブースト拡張機能だ。ただし、マザーボードメーカーが設定するPBOのパラメータ(EDC、TDCなど)が攻撃的すぎるケースがAM5では繰り返し指摘されてきた。今回のMSIボードでそうした過剰設定があったかどうかは、故障したシステムからは確認できない。
繰り返されるパターン
AM5プラットフォームでのCPU基板膨張は、2023年のRyzen 7000X3D電圧問題にまで遡る。AMDはSoC電圧を1.3Vに制限するAGESAアップデートを配布し、マザーボード各社がBIOSを更新した。この対策で問題は収束したかに見えたが、2025年に入るとRyzen 9000シリーズで再び故障報告が相次いだ。
2025年前半、ASRock製マザーボードでRyzen 7 9800X3DやRyzen 9 9950X3Dが起動不能になる報告が集中した。ASRockは当初メモリ互換性の問題と説明したが、最終的にPBO関連のEDC/TDCが高すぎたことを認め、BIOS更新で対処した。SoC電圧の動的変動がCPUを傷める可能性も指摘されており、ASRock以外のボードでも散発的に故障の報告がある。
直近では、Ryzen 9 7950X3Dの基板膨張でAMDがRMAを写真だけで却下した事例が話題になった。ユーザーの批判を受けてAMDは方針を撤回し、交換に応じている。
注目すべきは、今回の9900XがX3D(3D V-Cache搭載)モデルではない通常のZen 5プロセッサだという点だ。同種の故障がX3D以外にも広がっていることになる。コメント欄には、Ryzen 7000シリーズのSoC電圧問題と同じ箇所が損傷しているとの指摘や、I/Oダイの設計に構造的な弱点があるとの見方も出ている。一方で、AM5全体の販売台数から見れば報告数はごく少数にとどまるという意見もある。
ユーザーにできることは限られている
コメント欄で複数のユーザーが報告しているのは、EXPOを有効にしただけでSoC電圧が1.3V超まで引き上げられていたという事実だ。あるユーザーはEXPO有効化後にSoC電圧が1.30Vに跳ね上がっていたことを確認し、手動で1.20Vに固定したと報告している。別のユーザーは自分のSoC電圧を確認したところ1.32Vだったと書き込み、慌てて設定を見直した。
ここにAM5プラットフォームの根深い問題がある。SoC電圧のAuto設定を信用すべきかどうか、一般のユーザーには判断する手段がない。2023年にAMDが1.3Vのキャップを導入したにもかかわらず、マザーボード側の実装でその上限が守られていないケースが繰り返し報告されている。PBOもEXPOも「有効にするだけ」の機能として提供されているが、実際にマザーボードが適用する電圧パラメータは、ユーザーが手動で検証しない限り見えない。
投稿者はAMDへのRMAを予定している。殻割りはRMAに影響するため見送ったが、却下された場合は内部を確認する意向だ。コメント欄では、内部の有機ラミネート基材が局所的な短絡や過電圧で急激に加熱され、ガス化して基板を押し上げた可能性が指摘されている。
AM5を使っている人が今確認すべきことは一つ。BIOSを最新版に更新し、SoC電圧をHWiNFO等で実測することだ。特にEXPOやPBOを有効にしている場合、Auto設定が安全な値を返しているかどうかは、自分の目で確かめるしかない。
参照元:r/MSI_Gaming: Ryzen 9 9900X substrate failure report
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