サムスン、UFS 5.0ストレージを開発。スマホAIの速度が変わる
スマートフォンで動くAIの応答速度を決めているのは、プロセッサだけではない。端末のストレージがどれだけ速いか、それがAIの体感速度を左右する。その「見えないボトルネック」を取り除く新世代の記憶媒体を、サムスン電子が開発した。
読み書き速度が2倍になる
サムスン電子は6月23日、次世代モバイルストレージ規格UFS 5.0に準拠した製品の開発を完了したと発表した。2026年第4四半期に最大1TBの容量で量産を開始する。
性能の跳ね方が大きい。シーケンシャルリードで最大10.8GB/s、ライトで最大9.5GB/s。現行のUFS 4.1と比べ、読み書きともに2倍以上だ。メモリ製品企画担当のチェ・ジャンソク(Jangseok Choi)氏は「オンデバイスAI時代において、ストレージはAI体験を左右するドライバーへと進化している」としている。
数字だけ見ると、PCのNVMe SSDに迫る領域だ。UFS 5.0のインターフェース帯域はレーンあたり46.6Gbps。2レーン構成で約10.8GB/sの実効速度を実現する。この速度を支えるのは、業界標準化団体JEDECが2026年2月に正式発行したUFS 5.0規格(JESD220H)と、物理層にあたるMIPI M-PHY v6.0のHS-G6モードだ。
なぜストレージの速度がAIに効くのか
スマートフォンでローカルAIを動かした経験があれば、その遅さに気づいたことがあるだろう。大規模言語モデルをオンデバイスで走らせるとき、モデルの重みデータをストレージからメモリに読み込む工程がある。プロセッサがいくら速くても、データの供給が追いつかなければ処理は詰まる。
生成AIがクラウドからデバイスへ急速に移ってきている。その流れの中で、ストレージの役割が「データを保管する場所」から「AI処理を支えるインフラ」に変わりつつある。10.8GB/sのリード速度なら、数GBのLLMの読み込み時間は従来の半分で済む。アプリの起動やAI機能の応答が体感で速くなる、そういう話だ。
電力効率40%改善と小型化
速くなっただけではない。UFS 4.1と比べて電力効率が40%以上改善した。クロックゲーティングやマルチ電圧技術の導入で、同じ量のデータを転送するのに必要な電力を大幅に削っている。速度が上がったのにバッテリー消費は下がる。スマートフォンにとって、これは速度以上に意味が大きい。
パッケージサイズも縮小した。7.5mm × 13mm × 0.9mmで、前世代から16.7%の小型化を達成している。端末内部のスペースに余裕が生まれれば、バッテリー容量を増やせるし、他の部品の配置にも融通が利く。スマートフォンだけでなく、ウェアラブルやXRデバイスへの搭載も視野に入れた寸法だ。
業界の動きと、最初に載るスマートフォン
サムスンだけが動いているわけではない。キオクシアは2026年2月、UFS 5.0の評価サンプル出荷を開始している。第8世代BiCS FLASH 3Dフラッシュメモリと自社開発コントローラを組み合わせた512GBと1TBのサンプルを、チップセットベンダー向けに提供中だ。SK hynixもロードマップにUFS 5.0を明記しており、2026〜2028年の製品計画に含めている。
いま市場に出ているスマートフォンで、UFS 5.0を搭載した機種はまだない。今年3月発売のGalaxy S26シリーズもUFS 4.0にとどまった。サムスンが今回の量産を予定通り2026年第4四半期に開始すれば、Galaxy S27シリーズ(2027年初頭と予想されている)のPro・Ultraモデルが最初の搭載候補になる。ただし、メモリ価格の高騰が続いているため、全モデルへの展開は不透明で、上位機種限定になる可能性が高いとされている。
次世代SoC側の対応も進んでいる。Snapdragon 8 Elite Gen 6がUFS 5.0をサポートするとの情報があり、ハードウェアの受け入れ態勢は整いつつある。ストレージ、プロセッサ、端末メーカーの三者が噛み合ったとき、スマートフォンのAI体験は目に見えて変わる。
参照元:Samsung Newsroom
他参照:JEDEC UFS 5.0発表、KIOXIA UFS 5.0サンプル出荷