台湾、Supermicro台湾オフィスと流通2社を一斉捜索

台湾、Supermicro台湾オフィスと流通2社を一斉捜索
Supermicro

先月拘束された密輸業者3人は、サーバーを中国へ運ぶ実行犯だった。台湾の検察が次に追ったのは、実行犯にサーバーを渡した企業内部の人だ。


捜索対象が「流通」に広がった

基隆地方検察署は6月29日、NVIDIA製AIチップ搭載のSupermicro製サーバーを中国・香港・マカオへ密輸した疑いに絡み、第2波の捜索を実施した。対象はSupermicro台湾オフィス、Supermicroの販売代理店である青雲国際科技(証券コード5386)、データセンター事業者の是方電訊(同6561)の3社と、関係者6人の自宅を含む計12か所。6人は偽造文書と背信の容疑で事情聴取を受けた。

5月20日の第1波捜索は、密輸の実行役とされる3人の業者を対象としたものだった。今回は違う。捜査の矛先がサーバーの売り手と流通経路そのものに向いた。

台湾メディアの報道によれば、第1波で拘束した3人の供述がきっかけだった。検察は、密輸業者が管制品のサーバーを入手できた背景に大手企業の内部関係者の協力があると判断した。Supermicro台湾オフィスからは王姓の管理職と業務担当者の計4人、青雲から幹部1人が連行され、是方の関係者は入院中のため病院で聴取を受けた。検察は30日未明に6人のうち3人について拘留を請求している。

法律がない国で密輸を摘発する矛盾

台湾にはAIチップの対中輸出を犯罪とする法律がない。検察が容疑として適用しているのは偽造文書と背信であり、「密輸」そのものではない。先月の第1波でも、押収されたサーバー約50台(NVIDIA GB300チップ搭載、総額約7億台湾ドル)に対する容疑は出荷書類の虚偽記載だった。

この状態を変える動きはある。台湾は米国との通商協議のなかで、AIチップの対中販売を処罰対象とする新法の導入を検討している。実現すれば、ファーウェイやSMICといった制裁対象企業だけでなく、中国の全顧客への販売を規制でき、検察は初めて「密輸」を輸出犯罪として立件できるようになる。ただし法案は未確定で、成立時期も見えていない。

現時点の台湾では、世界の先端AIチップの大部分を製造しておきながら、それが不正に流出しても直接罰する手段を持たない。米国が輸出管理法で起訴できるのとは対照的だ。

米国での訴追との接点

この事件には米国での訴追が並走している。米司法省は3月、Supermicro共同創業者のリャウ(Yih-Shyan "Wally" Liaw)氏ら3人を約25億ドル相当のサーバー密輸の共謀で起訴した。リャウ氏は無罪を主張して保釈中で、公判は11月2日に予定されている。

台湾の捜査は米国の起訴とは別件だが、根を同じくする。第1波で押収されたサーバーの密輸ルートは台湾から日本を経由して香港へ渡り、最終的に中国本土に送られたとされる。米国で起訴されたスキームでは東南アジアが中継点だった。経路は異なるが、Supermicroのサーバーが台湾を起点に中国へ流れるという構造は共通している。

Supermicro AIサーバー密輸事件の経過
2026年3月
Supermicro共同創業者を起訴
米司法省が約25億ドル相当のサーバー密輸の共謀で起訴
5月
台湾が初の密輸摘発
サーバー約50台を押収、業者3人を拘束
6月24日
フアンCEO「密輸品は行き止まり」
NVIDIA株主総会で不正流通品のサポート拒否を明言
6月29日
台湾第2波:流通企業に拡大
Supermicro台湾+流通2社など12か所を捜索、6人聴取
※日付は現地時間基準。台湾にはAIチップの対中輸出を罰する法律がなく、容疑は偽造文書と背信で立件

NVIDIAフアンCEO「密輸品は行き止まり」

6月24日のNVIDIA年次株主総会で、ジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは密輸品で構築したデータセンターは「行き止まり」だと語った。NVIDIAは不正に流通した製品のサポートも修理も行わない。密輸品で大規模なAI基盤を運用し続けることは困難だ。

NVIDIAの2026会計年度における中国(香港含む)からの売上比率は約9%で、前年度から縮小が続いている。米政府はH200の対中ライセンスを承認したが、NVIDIAはまだそこから売上を計上していない。中国が輸入を許可するかも不明だとフアン氏は述べた。

各社の反応

Supermicroは「台湾当局と緊密に連携している」との声明を出し、自社製品が密輸事件の対象にされ続けていると述べた。Supermicro自体は台湾・米国いずれの捜査でも被告にはなっていない。

青雲国際は証券取引所への開示で捜索を受けた事実を認め、財務・営業への重大な影響はないとした。同社の株価は台北市場で10%下落した。

是方電訊は機房(データセンター)の顧客がAI機器の違法輸出に関与した疑いで当局から協力を求められたと説明し、営業は通常どおりだとした。株価は2%超の下落にとどまった。

Supermicroの米国上場株(SMCI)は8%下落して取引を終えた。

参照元:Taiwan raids Super Micro in widening China chip smuggling probe

関連記事

この記事を共有する