Intel廉価CPU、A19 Proにマルチで勝ちシングルで完敗

Intel廉価CPU、A19 Proにマルチで勝ちシングルで完敗
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Intelの低価格帯CPUWildcat Lake」のCore 5 320が、初めてPassMarkに姿を現した。マルチではAppleの最新A19 Proをわずかに上回ったが、シングルでは22%もの差をつけられて沈んだ。中身を読み解くと、両者の設計思想の差がはっきり見えてくる。


エントリー向けで6コア、Xe3もちゃんと載っている

IntelのCore 5 320は、Core Series 3に属する低価格ノートPC向けCPUだ。Wildcat Lakeという開発コード名で長らく噂されてきたシリーズの中位モデルにあたり、2026年4月16日にIntelが正式発表した6機種ラインナップの一つだ。Core Ultra Series 3Panther Lake)の下位に位置し、Alder Lake-NやTwin Lakeの後継として設計されている。

構成は2基のPコア(Cougar Cove)と4基のLPEコア(Darkmont LP)の合計6コア6スレッド。L3キャッシュは6MB、最大ブーストは4.6GHzで、ベースTDPは15Wだ。

注目すべきは内蔵GPUXe3アーキテクチャを採用している点だ。同じXe3コアを2基だけしか積んでいないにもかかわらず、Lunar Lake(8基のXe2)の半分強に迫る性能を出している。エントリー帯にこの世代のGPUが載るのは想定外の手厚さで、Intelの本気度がうかがえる。

Intel Core 5 320 主要スペック
項目
コードネーム Wildcat Lake
所属シリーズ Core Series 3
コア構成 2P + 4LPE(計6コア6スレッド)
Pコア Cougar Cove
LPEコア Darkmont LP
最大ブースト 4.6 GHz
L3キャッシュ 6 MB
内蔵GPU Xe3 × 2基
ベースTDP 15 W
製造プロセス Intel 18A + TSMC N6
※ 製造プロセスはCompute & GPUタイルがIntel 18A、PCD(I/O)タイルがTSMC N6の2タイル構成。
Wildcat Lakeはダイ構成も興味深い。CPU・GPU・NPUを統合したCompute & GPUタイルがIntel 18Aプロセスで製造され、I/O機能を担うPCDタイルがTSMCのN6プロセスで作られている。Panther Lakeから派生する設計思想だが、Panther Lakeで使われていた高度なパッケージング技術は省かれ、Raptor Lake-Uと同じく単純な2ダイ構成にコストを抑えた。

A19 Proとのスコア比較、その「ねじれ」

PassMarkの結果を見ていく。PassMarkデータベースに登録されたCore 5 320の平均CPU Markは15,222ポイント、A19 Proは14,837ポイント。総合スコアではCore 5 320が約2.6%上回った。

ただし内訳に目を向けると風景が一変する。シングルスレッドでCore 5 320は4,047ポイント、A19 Proは5,177ポイント。A19 Proが約28%速いという結果だ。マルチスレッドでの逆転は、Core 5 320の6コアという物量がA19 Proに勝っている部分があるからにすぎない。

リーカーx86deadandbackは、わずか70mm²の小さなダイにIntel 18A製造ノードとIODチップ(N6プロセス)を組み合わせた非モノリシック設計だと指摘した。MoP(Multi-on-Package)を使わない構成で2P+0E+4LPEのコア配置。「驚異的なパフォーマンスだ」というコメントには、製造プロセスの世代差を考慮した評価が滲む。

PassMark性能比較:Core 5 320 vs Apple Aシリーズ
マルチスレッド (CPU Mark) シングルスレッド
※ PassMark CPU Benchmarks(2026年4月時点の平均値)。Core 5 320のサンプル数は3件で、PassMarkは誤差大と注記している。

A18 Proとの比較で見えてくる本当の立ち位置

ここで一歩引いて整理したい。MacBook Neoに搭載されているのはA18 Proであって、A19 Proではない。今回比較対象となったA19 Proは、iPhone 17 Proに搭載されているチップだ。

A18 ProのPassMarkシングル平均は4,092ポイントで、Core 5 320の4,047ポイントとほぼ同等。つまりIntelのエントリーCPUは、現行MacBook Neoに載っているチップとシングル性能で互角という位置にいる。エントリー向けながら、1年前のフラッグシップスマホ用チップに肩を並べたわけだ。

ただしA19 Proを搭載した次期MacBook Neoの登場が予測されており、この優位は長くは続かない。Tim Culpan氏のリーク情報によれば、来年登場予定の次期MacBook Neoには6コア5GPU構成のA19 Proビニング版が載るとされる。

内蔵GPUは「数は少ないが効率は出ている」

iGPU側の数字も読み取る価値がある。Core 5 320のグラフィックススコアは2,746、対してLunar Lakeの最上位140V(Xe2を8基搭載)は5,133ポイントだ。コア数が4分の1(2 Xe3 vs 8 Xe2)なのに、性能は約53%を維持している。

単純計算ではXe3コア1基あたりの性能はXe2の倍近くまで伸びている計算になる。Xe2を4基搭載した仮想的なGPUがあったとしたら、それと同等になるイメージだ。エントリー向けGPUとしては世代差をしっかり活かした結果と言える。

iGPU性能:コア数1/4でも53%の性能を維持
GPUコア数 PassMark G3D Mark
※ Core 5 320のXe3コアはWildcat Lake世代、Lunar Lake 140VのXe2コアは1世代前。コア数は1/4だが性能は約53%を維持しており、Xe3単体の効率向上が読み取れる。

ただしGPUコア数自体が2基しかない以上、Lunar Lakeのような重量級ゲーミング用途には届かない。Wildcat Lakeはあくまで日常タスクと軽いクリエイティブ作業を想定した立ち位置だ。

サンプル数の少なさという落とし穴

ここで冷静になっておきたい注意点がある。

今回のPassMarkデータはサンプル3件のみで、PassMarkも「誤差が大きい(margin for error: high)」と明記している。Geekbenchに登場した過去のCore 5 320エントリー(シングルコア2,600、マルチコア7,913)と組み合わせれば傾向は読めるが、最終製品の性能を確定するにはまだ早い。

加えて、Core Series 3は4月16日に発表されたばかりで、リファレンスデザインのノートPCが他メディアで撮影されている段階だ。70機種以上の搭載ノートPCがAcer、ASUSDell、HP、LenovoMSISamsungなどから2026年内に投入されるとされており、Core 5 320搭載機を消費者が手にするのはこれからという段階にある。

エントリー帯の競争に新しい風

A18 Proを使った99,800円のMacBook Neoは、廃棄チップを再利用するという独自の戦略でエントリー帯の常識を破壊した。それに対するIntelの答えがWildcat Lakeだ、という構図が今回のベンチマークで初めて具体的な数字とともに示された。

シングルでA19 Proに3割近い差をつけられたという事実は確かに痛い。一方で、PpW(電力あたり性能)と価格を勘案すれば、Core 5 320を載せた400〜500ドル帯のノートPCは、「MacBookは高すぎるが、現行の低価格Windows機は遅すぎる」と感じてきた層に届く可能性がある。

Apple Aシリーズが切り拓いた性能水準を、x86のエントリーCPUが追走しはじめた。この景色こそが2026年の新しさだ。最終的に勝敗を決めるのは設計思想ではなく、ユーザーの財布になる。


参照元

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