DRAM上昇率、63%から18%へ急減速。買い手が限界に達した

DRAM上昇率、63%から18%へ急減速。買い手が限界に達した

2026年第2四半期、DRAMの契約価格は前四半期比で最大63%跳ね上がった。NANDフラッシュに至っては55〜60%。四半期ごとに5割以上の値上がりを繰り返す異常な状態が続いてきた。第3四半期、その勢いが初めて目に見える形で鈍る。


上昇は続くが、速度が落ちた

台湾の調査会社トレンドフォース(TrendForce)が7月3日に公開した最新の価格調査によると、2026年第3四半期の汎用DRAM契約価格は前四半期比13〜18%の上昇が見込まれる。NANDフラッシュは同10〜15%。いずれも上昇ではあるが、第2四半期のDRAM58〜63%増、NANDフラッシュ55〜60%増から大幅に減速する見通しだ。

HBMの混合平均価格も8〜13%増にとどまり、第2四半期の53〜58%増から鈍化する。

DRAM・NANDフラッシュ契約価格の上昇率予測(前四半期比)

この鈍化をもたらしたのは、供給の改善ではない。PCやスマートフォンなど消費者向け市場の顧客が、過去最高水準に達した契約価格をこれ以上受け入れられなくなったためだ。価格許容の限界が、上昇率の圧縮として表れている。

AIサーバーが吸い、消費者向けが細る

メモリ市場の需給構造は変わっていない。AI推論とデータセンター向けの需要が依然として旺盛で、メモリメーカー各社は生産能力をサーバー向け製品に優先的に振り向けている。

x86 CPUとRDIMM構成の汎用サーバーは、エージェンティックAIワークロードの主要なプラットフォームとして需要が拡大している。CPUの供給改善に伴い、サーバー出荷は2027年まで堅調に推移するとトレンドフォースは見ている。

サーバー向けDRAMは第3四半期も供給不足が続く見込みだが、長期供給契約で確保された分が一定の割合を占めるため、価格上昇幅は抑えられる。

消費者向けの状況はサーバーとは対照的になっている。

PC向けDRAMでは、OEMメーカーが在庫補充を継続しているものの、高騰した部品コストがノートPCの小売価格に転嫁され始めており、年間出荷台数を圧迫するとみられている。メモリメーカーはPC向けOEMとの契約数量を履行するが、サーバー向けへの生産能力シフトが進んでおり、PC用DRAMに回る供給量は減っている。

スマートフォンも同じ圧力の下にある。LPDDR(低消費電力DRAM)のコスト高騰を受け、端末メーカーは第3四半期に小売価格の引き上げを予定している。

値上げは販売台数を抑制し、需要の弱まりを察知した端末メーカーは生産計画を保守的に修正しつつある。LPDDR需要がさらに縮小する可能性がある。

それでも、メモリメーカーの姿勢は変わらない。AI関連製品への生産能力の優先配分は維持されており、LPDDRの供給は逼迫したままだ。

伸び悩むグラフィックスDRAM、縮むストレージ需要

グラフィックスDRAMでは、NVIDIAのプロフェッショナル向けGPU「RTX PRO 6000 Blackwell」が期待されていたGDDR7需要の牽引役になっていない。ノートPCの出荷低迷もGDDR6とGDDR7の需要を押し下げている。

メモリメーカーはグラフィックスDRAMの生産能力を他の製品に柔軟に振り向けており、供給が絞られた結果、GDDR6/7の価格はDRAM全体の上昇基調に連動して上がっている。

テレビやセットトップボックスなど従来型の家電向けDRAMは需要が弱い。一方で、車載、サーバーSSD、ネットワーク機器といったニッチ用途は比較的堅調を維持している。

利益率の低い汎用DRAM市場から大手メーカーが段階的に撤退する流れは止まっていない。残された需要を台湾メーカーのDDR4増産で補おうとしているが、大手の減産を完全に相殺できる状況にはない。

NANDフラッシュも消費者の壁に当たる

NANDフラッシュの領域でも、消費者向けとサーバー向けの温度差が拡大している。

PC用SSD(クライアントSSD)では、OEMメーカーが2026年前半に積極的に在庫を積み増した結果、追加の値上げを受け入れる余力が失われている。出荷量の維持を優先するメーカーは、価格交渉で柔軟な姿勢をとるようになった。

契約交渉の長期化が予想され、価格上昇率は緩やかになる。

エンタープライズSSD(サーバー向けSSD)は事情が異なる。CPUの供給不足がシステム全体の出荷を制約しているため、顧客はメーカーの増産を待ちながら在庫を積み増している。

NAND製造側はNVIDIAの次世代プラットフォーム「Vera Rubin」の段階的な展開と消費者需要の弱体化を受け、エンタープライズSSDへの生産能力配分を増やしている。しかし、内部調達のDRAMが不足しており、小容量・高性能のエンタープライズSSDの供給は制約されたままだ。

スマートフォン向けストレージ(UFS/eMMC)では、新製品の製造と部品調達の大半が2026年前半に完了しており、下半期はフラッグシップモデルのUFS 4.0アップグレードが需要の中心となる。ミドルレンジ以下の調達は低調だ。

以前は逼迫していたeMMCとUFSの供給に余裕が生まれ始め、OEMのコスト吸収力低下と相まって、値上げ幅は縮小している。

USBフラッシュドライブやメモリカードといったリテール向けストレージの需要も低迷が続く。上流コストの高騰を末端価格に転嫁しきれず、モジュールメーカーの購買も低水準にある。

メモリメーカーは高収益のAI・サーバー向けにウェハー供給を集中させており、オープン市場に流通するウェハーの量は限られている。ウェハー需要が弱含んでおり、第3四半期のウェハー契約価格の上昇幅は大幅に縮小する見通しだ。

セグメント別 2026年Q3見通し
セグメント需要動向Q3価格見通し
DRAM
サーバー供給不足が継続上昇(契約で抑制)
PC向け在庫補充は継続上昇(供給減)
LPDDR端末値上げで縮小上昇(逼迫継続)
グラフィックスGDDR7伸び悩み上昇(供給絞込)
家電向け需要弱い上昇(大手撤退)
NANDフラッシュ
クライアントSSDOEM在庫過多緩やかな上昇
企業向けSSD在庫積み増し中上昇基調維持
スマホストレージミドル以下低調値上げ幅縮小
ウェハー需要弱含み大幅に鈍化

1年前の「いつかは下がる」が遠くなった

レノボはISC 2026で、メモリの高価格は2030年以降も続く「新常態」だと述べた。SKハイニックスやサムスン電子、マイクロンの3社は増産を急いでいるが、AIインフラがDRAMとNANDの供給を構造的に吸収し続ける限り、消費者向けの価格が2025年初頭の水準に戻る見込みは立っていない。

第3四半期の上昇率鈍化は、メモリが安くなる兆しではない。PC・スマートフォンメーカーが「これ以上は受け入れられない」と交渉の席で押し返した結果であり、供給が潤沢になったわけではない。

契約価格の上昇速度が落ちたことで、自作PCやノートPCの店頭価格がさらに跳ね上がるペースは鈍る可能性がある。すでに高騰した水準からの追加上昇であることに変わりはない。

メモリの買い時を待っている人にとって、今回の予測が示しているのは「値上がり幅が小さくなった」という事実だけだ。

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