メモリ価格は「元に戻らない」。Lenovoが示した現実

メモリ価格は「元に戻らない」。Lenovoが示した現実

DDR5 32GBキットが6万円を超える日本の店頭価格を見て、いつかは下がると思っている人がいるなら、その前提そのものが崩れ始めている。 


2025年初頭の水準には「二度と戻らない」

ドイツ・ハンブルクで6月22日から26日まで開催されたスーパーコンピュータの国際会議ISC High Performance 2026で、Lenovoがメモリ市場の見通しを示すスライドを公開した。DRAMとNANDの価格推移を示したグラフの横には「64GB Memory Crystal Ball」と題された予測が並び、Lenovoの登壇者はこう述べた。2025年初頭の価格水準には「もう戻らない」。

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会場では笑いが起きたという。登壇者自身が冗談めかした口調で語ったからだ。だが続けて示された内容は冗談ではなかった。

2030年以降に価格がある程度落ち着いたとしても、それは2024年から2025年初頭にかけての水準とは別の、もっと高い場所に形成される「新しい通常」だという。メーカー各社が増産に向けた設備投資を進めていることを織り込んだうえでの見通しだった。

増産しても、足りない

Lenovoがこの見通しを語った6月後半、その裏づけとなる数字が相次いで出ている。

SK Hynixのチェ・テウォン(Chey Tae-won)会長は6月10日、龍仁(ヨンイン)クラスターを含む4つの新工場の建設を加速し、2034年までにウエハー生産能力を3倍にすると明らかにした。当初は2045年までかかる想定だった計画を10年以上前倒しする。だがチェ氏自身がこう付け加えている。「これ以上速くする方法はない。それでも足りないと言われている」。

Micronは6月24日に発表した2026年度第3四半期決算で、売上高が前年同期比346%増の414億6,000万ドルに達したことを報告した。粗利益率は過去最高の84.9%。この決算の中で最も注目すべき開示があった。16件のSCA(Strategic Customer Agreement)、つまり大口顧客との長期供給契約の締結だ。契約期間は2026年から2030年まで。顧客は契約数量を必ず引き取る義務を負い、価格には下限が設定されている。これらの契約が保証する収益は約1,000億ドル。Micronはメモリの供給不足が2027年も続くと見込んでおり、2028年に新工場の生産が本格化しても需給の逆転は見通せないとしている。

TrendForceの集計では、2026年第1四半期のDRAM契約価格は前四半期比93〜98%上昇した。買い手は3か月前の2倍近い価格で契約を結んだことになる。この一四半期だけでメモリ業界全体の売上は前四半期比81%増の970億ドルに膨張した。第2四半期はDRAMが58〜63%、NANDが70〜75%の上昇が見込まれている。上昇率はやや鈍化したが、NANDがDRAMを上回るペースで値上がりしているのは今回のサイクルで初めてだ。

サーバーが食い、消費者が飢える

なぜこうなったのか。構造は単純で、配分の問題だ。

Samsung、SK Hynix、Micronの3社がDRAM市場の9割以上を占めている。3社とも利益率の高いHBMとサーバー向けDRAM、エンタープライズSSDに生産能力を集中させている。HBMは同じ記憶容量のDDR5と比べて約3倍のウエハー面積を消費する。AIサーバーの需要が膨らむほど、PC・スマートフォン・ゲーム機に回るメモリの取り分は減る。

北米の大手クラウド事業者はAI推論インフラの構築を加速させており、高容量RDIMMの確保に走っている。供給の優先権を得るために複数年の長期契約に応じ、高い価格も受け入れている。Micronが締結した16件のSCAはその象徴だ。メモリが事実上の先物商品になりつつある。

Lenovoはプレゼンの中で「The 5 Step RAMageddon Survival Guide」と題したスライドを示した。

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サーバー購入者に向けた半ば真剣な提言だ。メモリが高い以上、搭載量を最適化するか、GPUアクセラレーションに切り替えてCPU側のメモリ依存を減らすか。NVIDIAのGB200 NVL4構成ではGPU4基にHBM3eを合計744GB搭載する一方、2基のCPUが使うLPDDR5Xは推定240GB。プロセッサあたり120GBは、従来のサーバー構成では考えられない少なさだ。

消費者にとって何が変わるのか

メモリとSSDの価格が「元に戻らない」とは、PC・スマートフォン・ゲーム機を含む、メモリを搭載するあらゆる製品の価格構造が変わるということだ。

日本の店頭では、DDR5-4800 16GB×2枚のキットが5万円台半ばから6万円台で推移している。1年前には1万円前後で手に入った構成だ。DDR4も、DDR5への生産移行に伴い供給が細り、8GB×2枚の16GBキットは1万6,000円から2万円前後が売れ筋帯で、1年前の3〜4倍になった。4月に在庫処分で一時的に下がった価格は、5月後半には反発に転じた。卸の契約価格が第2四半期で30%以上の値上げに入っているため、夏以降に再上昇する可能性がある。

Appleのティム・クック(Tim Cook)CEOもウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューでメモリの状況を「持続不可能」と表現し、価格転嫁の必要性を認めている。

新しい工場が稼働して供給が意味のある規模で増えるのは、早くても2027年末から2028年。SK Hynixの大規模拡張が完了するのは2034年。その間、AIインフラへの投資が減速しなければ、増えた供給をAI需要が吸収し続ける。Lenovoの登壇者が半ば笑いながら語った「二度と戻らない」は、時間軸を限定すれば冗談ではなく、向こう数年間の現実に近い。

メモリ危機の時間軸
2025年後半
メモリ価格が急騰開始
DRAM・NANDの契約価格が四半期で倍増
2026年Q1
DRAM契約価格が前四半期比93〜98%上昇
業界売上は970億ドルに到達
2026年6月
Lenovo「二度と戻らない」と発言
Micronが16件の長期供給契約を開示
2027年
SK Hynix龍仁第1期が稼働予定
Micronは供給不足が継続する見通しを示す
2028年
Micron新工場が本格稼働の見込み
それでも需給の逆転は見通せないとする
2034年
SK Hynix、生産能力3倍化の完了目標
当初2045年の計画を10年以上前倒し
※ 各時点はLenovo ISC 2026発表、Micron FY2026 Q3決算、SK Hynix会長発言に基づく

メモリが安かった時代に組んだ予算、立てた計画、持っていた常識。それを更新する時期が来ている。

参照元:Lenovo über DRAM-Preise: „Es wird nie mehr wie letztes Jahr"

他参照:Micron Technology, Inc. Fiscal Q3 2026 Earnings Call Prepared Remarks

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