Micronが2030年まで高値を固定する契約。メモリは安くならない

Micronが2030年まで高値を固定する契約。メモリは安くならない

Micronの2026年度第3四半期決算で、メモリ価格の行方が決まった。16件の長期契約が保証するのは、過去最高を超える利益率だ。


1000億ドルの「下限」

3月の前回決算で、Micronは初めてSCA(Strategic Customer Agreement、戦略的顧客契約)の存在を明かした。あのときは1件だった。

現地時間6月24日の第3四半期決算で、サンジェイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)CEOが発表した数は16件。大口4社、中堅3社を含むデータセンター、コンシューマー、自動車の各分野にまたがる。契約期間は2026年から2030年末までの5年間(自動車は3年間)。

中身はこうだ。顧客は一定量の購入を約束し、Micron側は一定量の供給を約束する。価格には下限と上限がある。下限は、Micronのグロスマージンが「過去のどの四半期ピークをも大幅に上回る」水準に設定されている。上限は、今後メモリ価格がさらに上昇しても顧客が守られるよう設計されている。

この16件の最低保証売上は約1000億ドル。対象となるボリュームはDRAMの20%、NANDの3分の1に相当する。さらに顧客から220億ドルの前払い金と関連コミットメントを受け取る。契約はtake-or-pay(引き取り義務付き)で、キャンセルできない。

メロートラCEOによれば、全計画が完了すれば会社全体の売上の半分以上がSCAの対象になる見通しだという。

売上は4倍、利益率は85%

決算の数字自体が異常だった。売上高は415億ドル。前年同期の93億ドルから346%増、アナリスト予想の358億ドルを56億ドル上回った。グロスマージンは84.9%。前四半期の74.9%から10ポイント跳ね上がり、1年前の39%とは比較にならない。純利益は282億ドル、1株当たり利益は25.11ドルで、コンセンサス予想を24%上回った。

データセンター事業の売上は250億ドルを超え、年率換算で1000億ドルペースに達している。データセンターSSDだけで50億ドルを超え、前四半期の2倍以上になった。

第4四半期のガイダンスも強い。売上高500億ドル(前年同期113億ドル)、グロスマージンは約86%。株価は時間外取引で15%上昇し、時価総額は約1兆ドルに迫っている。

Micron 四半期決算推移
Q4 FY2026はガイダンス(中央値)。グロスマージンはnon-GAAP

安くなる見通しは、ない

SCAs自体は企業間の供給契約だ。PC用のDDR5やSSDの店頭価格が直接決まるわけではない。

だが構造をたどれば、答えは明らかだ。Samsung、SK hynix、Micronの3社で世界のDRAM生産の約90%を占める。3社ともAI向けHBM(High Bandwidth Memory)に生産能力を優先的に振り向けている。HBMは1ギガバイトあたりDDR5の約3倍のウエハー面積を使う。HBMを増やせば、DDR5に回るウエハーが減る。

この状態で、コンシューマー向けDDR5の供給が改善する理由がない。2025年半ばに80ドル前後だった32GBのDDR5-6000キットは、2026年初頭に400ドルを超えた。300%から400%の値上がりだ。Frameworkは今年に入って複数回、メモリの価格改定を繰り返している。

メロートラCEOは決算で「供給が需要に追いつく見通しが立っていない」と述べ、2028年に工場の本格稼働が始まっても「産業全体の需要に応えるには十分ではない」と認めた。需給の逼迫は2027年以降も続くとの見方だ。

SCAsが固定するのはMicronの利益率であり、消費者の負担額ではない。だが85%のグロスマージンを保証された企業に、安いメモリを作る動機はない。

「メモリ不況」は終わるのか

DRAMには30年来のパターンがあった。好況期に設備投資を増やし、供給が需要を追い越すと価格が暴落し、赤字の数年間を耐え、需要が回復するのを待つ。MicronはSCAsによって、このサイクルを構造的に無効化しようとしている。

不況が来ても下限価格で買い取ってもらえるなら、暴落を恐れずに投資を続けられる。実際、2026年度のCapEx(設備投資)は約270億ドル、2027年度はさらに積み増す方針だ。アイダホのID1ファブは2027年半ばに最初のウエハーを生産し、ID2は2028年後半の予定。ニューヨーク州クレイの新工場は2026年1月に着工した。

だが逆の読み方もできる。Micronが下限価格を急いで固定した理由は、いずれ価格が下がると見ているからではないか。下落が見えない企業は、わざわざ下限価格を設定しない。SCAsの顧客のうち、AI企業がどれだけ5年後に存続しているかも定かではない。AI投資が減速すれば、契約は履行されても新規需要は消える。

この懸念に対し、スミット・サダナ(Sumit Sadana)チーフビジネスオフィサーはSCAsがキャンセル不可のtake-or-payであると述べている。顧客がメモリを使わなくても、代金は発生する。

問い直すべき歴史

DRAM業界にはもう一つの歴史がある。2002年、米司法省はSamsung、Hynix、Infineon、Micronを含む5社が1998年から2002年にかけて価格カルテルを形成していたとして摘発した。Samsungは3億ドル、Hynixは1億8500万ドルの罰金を支払い、担当者は収監された。Micronは内部告発者として免責を受けた。

2018年には再び集団訴訟が起こされた。Samsung、SK hynix、Micronが2016年から2017年にかけて供給を意図的に絞り、DRAM価格を47%引き上げたという主張だった。裁判所はこれを「合法的な市場行動で説明がつく」として棄却している。

SCAsは法的にはカルテルではない。個別の顧客との二者間契約であり、競合他社との協調行為ではない。だが3社で市場の90%を握り、3社とも同じ方向にコンシューマー向け供給を絞り、3社とも歴史的高値を享受している状態で、消費者から見た結果は同じだ。競争が機能しているなら、85%のグロスマージンは長続きしない。長続きしているなら、何かが機能していない。


参照元:Micron 2026年度第3四半期決算 準備書面

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