光ファイバーが足りない、AIデータセンターが供給を飲み込む

光ファイバーが足りない、AIデータセンターが供給を飲み込む

AIデータセンターは標準的なサーバーの36倍もの光ファイバーを使う。供給が追いつかず、納期は最長1年に延びている。なぜ光が足りなくなったのか。


光が足りない、というニュースが届いた

データセンターをつなぐ光ファイバーが、いま世界規模で不足している。中国の大手メーカーは受注を2027年初頭まで積み上げ、生産ラインは24時間フル稼働でも追いつかない。一部の製品は、注文から納品までの期間が数週間から数か月に延びた。

不足しているのは「ガラス繊維」だ。電気を流す銅線とは違い、光ファイバーは髪の毛ほどの細さのガラスの中を光のパルスが進む。半導体不足やメモリ不足はここ数年で何度も聞いた話だが、光ファイバーまで足りなくなるとは、少し前なら想像しにくかった。

きっかけは単純で、AIだ。生成AIの学習と推論を担うデータセンターが、業界の誰も計画できなかった規模で光ファイバーを飲み込んでいる。需要を生んだのはAIだが、その需要に応える供給は、性質上どうしても遅れて動く。この時間差が不足の正体だと、私は見ている。

なぜAIデータセンターは36倍も使うのか

光通信メーカーSTLの光ネットワーク事業を率いるラフル・プリ(Rahul Puri)が、業界向けの取材で具体的な数字を挙げている。AIに特化したデータセンターは、従来のCPUサーバーラックと比べて約36倍の光ファイバーを必要とする、というものだ。

AIに特化したデータセンターは、GPUクラスタが求める膨大なデータ量と高速接続をさばくため、従来のCPUベースのラックの約36倍の光ファイバーを必要とする。

理由はGPUのつなぎ方にある。AIの学習では、数千から数十万のGPUが一斉に協調して動く。GPU同士が絶え間なくデータをやり取りするため、ラックの内側にも、ラック同士の間にも、従来とは桁違いに密な配線が要る。GPUが多いほど配線は加速度的に増える

数字にすると規模感が見えてくる。AIデータセンター向けの光ファイバー需要は、2025年に前年比でおよそ76%伸びた。2024年には全世界の光ファイバー需要の5%未満だったこの分野が、2027年には全体の30%を占めると予測されている。3年で6倍以上だ。

光ファイバー需要に占めるAIデータセンターの割合
2024年に全体の5%未満だった分野が、2027年には30%を占める見込み
※ CRU調査による。2024年・2027年は世界全体の光ファイバー需要に占める割合、データセンター向け需要は2025年に前年比約76%増。2026年は確定値ではないため非表示

ひとつ補足しておきたい。36倍という数字はメーカー幹部の発言であり、ラックの構成次第で幅は出る。別のメーカーは「72GPUノードで16倍」とも述べている。それでも、AIラックが従来のサーバーラックと比べものにならない量のファイバーを食う、という方向は一致している。

供給はなぜすぐに増やせないのか

需要がこれだけ伸びるなら、メーカーが工場を増やせばいい。そう考えたくなるが、ここに光ファイバー特有の壁がある。

光ファイバーは「プリフォーム」と呼ばれるガラスの母材から引き伸ばして作られる。このプリフォームの製造は技術的な難度が高く、新規参入の障壁も高い。問題は時間で、新しいプリフォームの生産設備を立ち上げるには、業界筋によれば18〜24か月かかる。

プリフォームは光ファイバーの出発点となるガラスの棒で、これを高温で熱しながら細く引き伸ばして繊維にする。製造には高度な技術が要り、設備を新設しても量産までに長い時間がかかる。

つまり、いまから増産を決めても、実際に光ファイバーが市場に出てくるのは1年半から2年後になる。ケーブルへの加工工程をどれだけ速めても、上流のガラスが間に合わなければ意味がない。AIの需要が「来月もっと欲しい」と言っても、ガラスは2年前の判断でしか増えない。

不足を深めている要因がもうひとつある。メーカーが、通信網向けの標準的なファイバーから、利益率の高いAIデータセンター向けやドローン向けのファイバーへと生産を振り向け始めたことだ。その結果、従来の通信用ファイバーにも二次的な品薄が広がり、価格の上昇に拍車をかけている。

世界の光ファイバー価格は、2021年につけた底値の1ファイバーキロメートルあたり3.70ドルから、現在は約6.30ドルへと、およそ70%上昇している。

価格が2倍近くまで動いたことで、各国が掲げる通信インフラの整備目標を予定どおり達成できるのか、という懸念も出てきた。AIのために積み上がった需要が、AIとは無関係な家庭や地方の通信網にまでしわ寄せを及ぼし始めている。

巨大企業は「数年分の契約」で守りに入る

供給が遅れて動くと分かっているなら、買い手にできることはひとつしかない。早く、長く、押さえることだ。

メタ(Meta)は2026年1月、メーカーのコーニング(Corning)と最大60億ドル規模の供給契約を結んだ。コーニングはこの取引について、四半期決算で同規模の契約をほかにも2件、社名非公表のハイパースケーラーと結んだことを明らかにしている。誰が、どれだけ確保したのかは見えないが、巨大企業が数年分の光ファイバーを先に囲い込み始めた動きは見える。

今月に入り、NVIDIAも動いた。コーニングに当初3億ドルを投じ、最終的には最大32億ドル規模になりうる長期提携を結んだ。ノースカロライナ州とテキサス州に3つの新工場を建て、コーニングの米国内の光ファイバー生産能力を50%以上引き上げる計画だ。雇用は3000人規模になるという。

ただし、ここでも時間の壁は消えない。これらの新工場から実際に新しい生産能力が立ち上がるのは2027年以降の見込みだ。契約を結んだ瞬間にガラスが増えるわけではない。

気になるのは、NVIDIAとコーニングの提携が「NVIDIAのAIハードウェアを使うデータセンター向け」と明記されている点だ。業界全体の不足を和らげるためではなく、自社の製品を中心に回るデータセンターへ優先的に供給する設計になっている。確保できる企業と、後回しになる企業。不足が長引くほど、この線引きが意味を持ってくる。

コーニングとの光ファイバー供給契約
メタ NVIDIA
契約規模 最大60億ドル 最大32億ドル
当初3億ドル
契約の形 供給契約 出資をともなう
長期提携
発表時期 2026年1月 2026年5月
新工場 既存工場の
増強
3工場を新設
建設地 ノースカロライナ ノースカロライナ
テキサス
※ メタはコーニング四半期決算で同規模の契約を他に2件開示(相手企業は非公表)。NVIDIAの新工場による生産能力立ち上げは2027年以降の見込み

後回しにされるのは誰か

北米では今年、光ファイバーの需要が22〜25%伸びると予測されている。一方で供給の拡大は12〜19%にとどまる見通しだ。需要と供給の差は、そのまま納期の長さに姿を変える。

大量に発注する大口の買い手で、納期は20週間ほど。規模の小さい買い手では、最長で1年に達する。同じ製品を買うのに、買い手の大きさで待つ時間が変わる。メタやNVIDIAのように数年分を先に押さえられる企業と、その都度スポットで買う中小の事業者とでは、立っている場所がもう同じではない。

光ファイバーは、半導体ほど世間の注目を集めてこなかった部品だ。それでも、AIデータセンターという巨大な計算機を成り立たせているのは、最後はこの細いガラスの線である。光が足りなければ、GPUをいくら積んでも、その性能はつながらない。

需要は2年前の設備投資でしか満たせず、AIの伸びは月単位で更新されていく。この時間差が縮むのは、早くても2027年だ。それまでは、誰が光を確保できたかが、AIインフラの地図を描き替えていく。


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