Steam Machineの「60fps」が消えた

Steam Machineの「60fps」が消えた

Valveが18万9,980円のゲーミングPCを出荷する4日前に、製品ページからひとつの数字を消した。


消えた「60 FPS」、現れた「FSR 4.1」

Steam MachineのハードウェアページにあるCPU & GPUの項目が、現地時間6月25日に書き換えられた。

変更前は「4K gaming at 60 FPS with FSR」。変更後は「Up to 4k gaming with FSR 4.1」。

「60 FPS」という具体的なフレームレート目標が消え、代わりに「Up to」という上限表現と「FSR 4.1」のバージョン番号が加わった。

変更を指摘したのは@HardwareSteamで、変更前と変更後のスクリーンショットを比較して投稿した。Valve自身はこの変更について何も説明していない。

6月25日がどういう日かは、予約に参加した人ならわかる。Steam Machine予約抽選の締切日だ。その日に製品ページの文言が変わった。

レビューが証明した「60fpsではない」現実

レビュー解禁は6月22日だった。

GPU性能はRadeon RX 7600MやRX 6600相当で、デスクトップのRX 7600を下回る。Cyberpunk 2077を4Kで60fpsに近づけるには設定をMediumまで落とし、FSRをPerformanceモードにしたうえでフレーム生成を併用する必要がある。それでも平均58〜61fps。レイトレーシングは切っての数字だ。

CPU性能はRyzen 5 3600世代と同程度。TDPが30Wに絞られているため、4.8GHzのブースト周波数を長時間維持できない。消費電力はゲーム中170〜180W台で、電源とサーマルの制約がCPU・GPU双方の性能を抑えている。

昨年11月の発表時、Valveは内部テストでSteamタイトルの大半が4K 60fpsでFSR動作したと説明し、一部のゲームではより強いアップスケーリングやVRRが必要だと補足していた。「大半」と「一部」をどこで分けていたかは明かされなかったが、レビュー結果を見れば、AAAタイトルで4K 60fpsが標準的な体験ではないことは明らかだった。

FSR 4.1の対応状況

FSR 4.1がSteam Machineのページに正式に記載されたのは、この変更が初めてだ。

FSR 4.1はAMDの機械学習ベースのアップスケーリング技術で、当初はRDNA 4世代のRX 9000シリーズ専用だった。RDNA 3のデスクトップGPU(RX 7000シリーズ)向けには6月22日にAdrenalinドライバー26.6.2で正式対応が始まり、300以上のゲームで利用可能になっている。

Steam Machineが搭載するのはRDNA 3ベースのカスタムAPUで、デスクトップ向けの単体GPUとは実装が異なる。AMDはAPU向けの「軽量機械学習モデル」を準備中と発表しており、デスクトップGPU版のFSR 4.1がそのまま適用できるわけではない。出荷時点でFSR 4.1が使えるかどうか、Valveは明言していない。

RDNA 3版FSR 4.1はINT8データ型で動作する。公式版リリース前のコミュニティテストでは、FSR 3.1と比較して9〜13%のフレームレート低下が確認されていた。AMDは公式実装で最適化を施したとしているが、RDNA 4のFP8ネイティブ実装より演算コストが高いことに変わりはない。

画質はRDNA 4版と同等とAMDは説明している。ただ性能への影響を考えれば、FSR 4.1の追記が「4K 60fps」を支える根拠になるかは疑わしい。画質が上がる代わりにフレームレートは下がりうる。

19万円の選択

Steam Machineの日本価格は512GBモデルが18万9,980円(税込)、2TBモデルが24万9,980円。KOMODOが正規ディストリビューターとして6月23日から販売を開始し、初回在庫はすでに完売している。海外では$1,049から。

Valveは価格について、メモリとストレージの世界的な高騰で当初想定していた価格が維持できなくなったと説明している。もともと$750前後が想定されていたとする報道もある。

PS5は2026年4月に4度目の値上げが実施され、通常版が9万7,980円、PS5 Proが13万7,980円。日本語専用デジタルエディションは5万5,000円で据え置かれている。Steam Machineの512GBモデルは、PS5通常版のほぼ2倍になる。

値段の高さそのものが問題なのではない。メモリ危機という外部要因は事実だし、Valveはハードウェアを赤字で売るコンソールモデルを採用しないと明言している。

「4K 60fps」を掲げて売り始め、レビューで否定され、予約抽選の締め切り当日に書き換えた。この順番が引っかかる。

Valveがこの数字を修正したこと自体は正しい判断だ。問題は、7か月以上にわたってその数字を掲げ続け、19万円を払う決断をした購入者にとっての判断材料にしていたことにある。レビュー解禁から3日待って変更するのなら、レビュー前にできたはずだ。

PS5の「8K」表記のように、スペックシートに書かれた理論値が実体験と乖離する例はゲーム業界では珍しくない。だがSteam Machineの場合、Valveは「PCとしての誠実さ」をブランドの核に据えている。SteamOSのオープン性、修理可能なハードウェア設計、ユーザーコミュニティとの距離の近さ。その信頼で19万円を払った人がいるからこそ、60fpsの撤回は、他社の同種のマーケティングより重い。

参照元:Steam Machine ハードウェアページ

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