GNOME 51ベータ公開。ファイルマネージャに「新規ドキュメント」が復活

ウィンドウの背景ぼかし、指紋管理UI、視覚効果の軽減設定。細かい改善が47モジュールに散らばる中、長年消えていた右クリックメニューが戻ってきた。

GNOME 51ベータ公開。ファイルマネージャに「新規ドキュメント」が復活

ウィンドウの背景ぼかし、指紋管理UI、視覚効果の軽減設定。細かい改善が47モジュールに散らばる中、長年消えていた右クリックメニューが戻ってきた。


10年越しの右クリック

GNOME 51ベータが現地時間8月15日に公開された。UI・機能・APIの凍結(The Freeze)は8月1日に始まっており、現地時間9月16日の正式リリースに向けて安定化の段階に入っている。

変更は47以上のモジュールに及ぶが、日常的にGNOMEを使っている人が最も反応するのは、おそらくNautilus(ファイル)の変更だろう。

ファイルマネージャの何もない場所を右クリックしたとき、「新規ドキュメント」が出る。テンプレートフォルダが空でも、空のドキュメントを1つ作れる。テンプレートフォルダにファイルを置けば、docxやPythonスクリプトなど任意の形式も選べるようになる。

これはGNOMEユーザーが何年も前から求めていた機能だ。WindowsやKDE Plasmaでは当たり前に存在する操作が、GNOMEでは「テンプレートフォルダにファイルを自分で置く」という前提知識がなければ使えなかった。Ubuntu、Fedora、Arch Linuxのフォーラムにはこの不満が繰り返し投稿されている。

GNOME 51ベータで、ようやくその前提知識が不要になった。

ウィンドウの向こうが、にじむ

ウィンドウマネージャのMutterに、Waylandのext-background-effect-v1プロトコルが実装された。アプリがウィンドウの特定領域に背景ぼかしを要求できる標準的な仕組みだ。GTK 4.23.3にも同プロトコルのサポートが入り、アプリ開発者はすぐに利用を始められる。

macOSやWindows、KDE Plasmaでは以前から実現していた「すりガラス」風の表現が、GNOMEでもWayland経由で使えるようになる。ターミナルの半透明背景が実用的になるのは、見た目の好みを超えて作業効率の話でもある。

フレームスケジューリングの改善も入り、フラクショナルスケーリング(125%、150%など)やHDR環境での描画のにじみが修正された。複数モニター環境で画面がぼやける症状に悩んでいたなら、ベータで試す価値がある。

指紋、カーソル、視覚効果の軽減

設定アプリ(GNOME Control Center)のユーザーパネルに、指紋管理UIが新設された。指紋の登録・確認・削除がGUIで完結する。

GNOME Shellにはreduced-motion設定の初期サポートが入った。アニメーションや視覚的な動きを最小限に抑える設定で、前庭障害や視覚過敏を持つユーザーにとって重要な機能だ。

カーソル描画もSVGベースに切り替わった。KDEが先行して採用していた形式と互換性があり、任意のDPIでラスタ画像を用意しなくてもシャープなポインタが得られる。カーソルテーマの制作も容易になる。

GTK 4書き換え、間に合わず

GNOME 51ベータの公式アナウンスは、1つの「不在」にも触れている。

Contrary to some previous indications, the GTK 4 rewrites of GNOME Boxes and GNOME Disks didn't make the cut.

GNOME BoxesとGNOME DisksのGTK 4書き換えが見送りになった。両アプリは古いGTK 3ベースのままで、GTK 4+libadwaita化が進められていたが、凍結に間に合わなかった。

一方で、ファイルプレビューアのSushi(GNOME File Previewer)はGTK 4+libadwaita化が完了している。画像のダブルクリック拡大、HTMLプレビューのコンテキストメニュー、LibreOffice Viewerの対応MIMEタイプ拡充など、実用面も強化された。

スクリーンリーダーのOrcaにはユーザー拡張の仕組みが導入され、音声合成の表現をカスタマイズできるようになった。特定アプリでの自動スリープモードも追加されている。

その他の変更

GNOME初期設定にsystemd-homedアカウントのサポートが入った。GNOME Softwareはアイコン読み込みとPackageKitリポジトリ処理のパフォーマンスが改善された。GNOME電卓は計算履歴をセッション間で保持するようになり、GMPライブラリによる有理数の厳密演算にも対応した。

GNOME 51ベータ 主要変更一覧
対象変更内容
描画・表示
Mutter背景ぼかし対応、フレーム精度改善、
マルチモニター描画修正
GTK背景ぼかし対応(4.23.3)
Shell・設定
GNOME Shell視覚効果軽減、SVGカーソル、ウェブログイン
設定アプリ指紋管理UI新設
アプリ
Nautilus「新規ドキュメント」右クリックメニュー追加
EpiphanyWebRTC再有効化、URLピン留め
電卓計算履歴の保持、厳密演算対応
SushiGTK 4移行完了
GlycinXMP読み取り(GIF/TIFF/WebP)、HDR形式対応
基盤
初期設定systemd-homed対応
Software読み込み性能改善
GVFSアイドル時の自動アンマウント
Orcaユーザー拡張対応、自動スリープ
見送り
Boxes / DisksGTK 4書き換え未完了
※正式版は現地時間9月16日予定。Ubuntu 26.10 / Fedora 45に搭載見込み

GVFSデーモンにはアイドル状態のバックエンドを自動アンマウントする機能が追加された。Epiphany(GNOME Web)ではWebRTCサポートが再有効化され、URLのピン留め機能も加わった。画像ライブラリのGlycinはGIF・TIFF・WebPのXMPメタデータ読み取りとRadiance HDR形式に対応した。

GNOME 51のリリース候補は8月末、正式リリースは9月16日の予定。Ubuntu 26.10とFedora Workstation 45に搭載される見込みだ。

右クリックで新規ドキュメントが作れるかどうか。小さな話に見えるが、そこにデスクトップ環境の思想が出る。

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