Radeon RX 9000にまた値上げの影。7月から10〜15%
ようやく手が届く価格に戻ったと思ったら、次の値上げの足音が聞こえてきた。AMDが2026年第3四半期から10〜15%の追加値上げを計画しているという。半年以上続くDRAM高騰の出口はまだ見えない。
せっかくの値下がりを帳消しにするのか
Radeon RX 9070 XTの日本での実売価格を覚えているだろうか。2025年11月には9万円台前半で買えた。それが2026年1月末、DRAM高騰とNVIDIA製品の品薄が重なってピークの約14万3000円まで跳ね上がった。
その後は「この値段では買わない」という消費者の判断が効いて、価格は一貫して下がり続けた。6月20日時点で最安は約9万2800円、主流モデルは10万円前後。ピークから約35%の下落だ。RX 9060 XT 16GBも最安で約5万8000円まで下がったが、ミドルレンジとしてはまだ高い。
ここに、また値上げが来る。
AMDは2026年下半期にVRAM価格がさらに上がると見ており、GPU価格を10〜15%引き上げる計画があるとされる。効果は早ければ7月にも表れるという。ただし、ソース自身が「確定的ではない」と付記しており、現時点ではリーク段階の話だ。
仮に10〜15%が実施されれば、RX 9070 XTの主流モデル(約10万円)は11万〜11万5000円に、RX 9060 XT 16GB(約5万8000円)は6万4000〜6万7000円に跳ね上がる。
| RX 9070 XT | RX 9060 XT 16GB | |
|---|---|---|
| ピーク(1月) | 約14万3000円 | 約7万8000円 |
| 底値(5月) | 約8万7000円 | 約5万2000円 |
| 現在(6月) | 約9万2800円 | 約5万8000円 |
| 値上げ後試算 | 11〜11.5万円 | 6.4〜6.7万円 |
1月のピーク価格には届かないが、数カ月かけて下がってきた分がかなり巻き戻される。
繰り返される「値上げ→売れ残り→値下げ」の循環
振り返れば、RX 9000シリーズの値上げはこれが初めてではない。
2025年12月、AMDはAIBパートナーに対してVRAM 8GBあたり10ドルの値上げを通知した。16GBモデルなら20ドルの上乗せ。2026年1月には第2弾が実施され、さらに中国のチャネル情報では「第1波」として8GBモデルに20ドル、16GBモデルに40ドルの追加値上げも伝えられた。半年で段階的な値上げが何度も重なった。
しかし、値上げのたびに起きたのは「消費者が買わなくなる」という反応だった。
日本では、14万円台まで高騰したRX 9070 XTを消費者は無視した。小売店は在庫を抱え、損失覚悟で値下げに踏み切った。ドイツでも同じことが起きている。6月に発売されたRX 9070 GREは半月以上経っても主要ショップでほとんど売れていない。MSRP以上の価格帯では、RDNA 4のGPUは棚に並んだまま動かないのだ。
2025年11月 9万円台前半で推移 メモリ高騰前の安定価格帯 2025年12月 第1弾値上げ通知 VRAM 8GBあたり$10の上乗せ 2026年1月 ピーク 約14万3000円 第2弾値上げ+NVIDIA品薄で高騰 2026年2〜5月 買い控えで価格下落 消費者が購入を見送り在庫余剰に 2026年6月 最安 約9万2800円 ピークから約35%下落 2026年Q3 10〜15%追加値上げ計画 VRAM価格上昇を理由に再値上げか |
値上げしても売れなければ値下げに戻る。この循環はすでに複数回繰り返されており、今回も同じ道をたどる可能性は高い。
NVIDIAは「いまは動かない」
注目すべきは、NVIDIAがこのタイミングでは値上げを見送る見通しだということだ。ボードパートナーに対して値上げの通知はなく、当面は現行価格を維持するとされる。
ただ、NVIDIAが余裕を持っているかといえばそうでもない。RTX 5000シリーズもDRAM高騰前と比べて約20%高い水準で推移しているし、7月以降に生産量を20〜30%削減するという噂もある。供給を絞って価格を維持するなら、消費者にとっての結果は値上げと変わらない。
両社ともDRAMとSSDの価格が2026年から2027年にかけて高止まりすると見ている。AI向けデータセンターがDRAMとNANDを優先的に吸い上げ、一般消費者向けには4〜5倍の価格で回ってくる。この構造が変わらない以上、GPUの価格も元には戻らない。
AMD自身が語った「下半期の厳しさ」
5月に発表されたAMDの2026年第1四半期決算は、会社全体としては好調だった。売上高は103億ドルで前年同期比38%増、データセンター部門は58億ドルと同57%増。AIが稼いでいる。
一方で、ゲーミング部門の売上は7億2000万ドル。全体の7%にすぎない。CFOのジーン・フー(Jean Hu)氏は決算説明会で、下半期のゲーミング収益が上半期比で20%以上減少すると明言した。理由は「メモリとコンポーネントのコスト上昇」。リサ・スー(Lisa Su)CEOも「下半期のPC出荷は減少する」と見通しを示している。
103億ドルのうち7億ドル。ゲーマーが「高すぎる」と声を上げても、AMDの経営判断がそこに向くインセンティブは小さい。データセンター向けの売上が伸びるほど、消費者向けGPUの優先度は下がる。値上げで販売数が落ちても、1枚あたりの利益が維持できれば会計上の問題は少ない。
ここに、今回の値上げが「消費者のことを考えていない」のではなく、「考える必要がない」という構造がある。
買う人が考えるべきこと
結論を先取りすれば、今すぐ買う理由がある人にとって「いま」は悪くない。RX 9070 XTの最安は約9万3000円、RX 9060 XT 16GBは約5万8000円。5月に記録した底値(それぞれ約8万7000円、約5万2000円)からはやや戻しているが、ピーク時の14万円台や7万8000円台と比べれば格段に安い。値上げが実施されれば、この価格には当面戻らない可能性がある。
一方、待てるなら待つ理由もある。過去の例が示すとおり、値上げ後に在庫が動かなければ小売は再び値下げする。消費者の「買わない力」が価格を押し下げてきたのは事実で、今回もその力が働く余地はある。
リーク情報によれば、AMDは2027年まで新たなGPU製品を投入しない可能性があり、NVIDIAのRTX 50 SUPERシリーズのリフレッシュも同様に延期が取り沙汰されている。つまり、この世代のGPUと付き合う期間は長くなる。底値に近い水準にある今を逃すリスクと、値上げ後の在庫余りで再び下がる可能性。判断材料はどちらにもある。
DRAMの価格正常化についてAMDは2028年頃と見込んでいる。あと2年、この不安定な値動きは続く。
参照元:Wccftech - AMD Reportedly Plots Another 10-15% RX 9000 Price Hike